日本の新聞社を狙う中国の赤い影…。東京機械株、買い占め騒動「表ざた」に

全国40の新聞社が「懸念」、政府も注視

新聞業界でここ数か月、ひそかに懸念されていた企業買収がついに「表ざた」になった。東証1部の東京機械製作所が10日、ここ最近、同社株が中国・香港系の投資会社アジアインベストメントファンドと親会社のアジア開発キャピタルに合わせて38.64%まで買い占められていることについて、全国40の新聞社から連名で「懸念を抱いております」との書簡を受け取ったことを公表した(参照リンク)。

※画像はイメージです(industryview /iStock)

同社は新聞輪転機のシェア4割を誇るメーカー。連名には読売、朝日、日経から各地の主だった地方紙まで並んでおり、書簡で「新聞各社は軽微な故障等は自社で対応しておりますが、重度の故障や大規模な整備とな ると輪転機メーカーの協力が不可欠です」「貴社の輪転機の開発・製造体制が変えられてしまうなどすれば、新聞各社の印刷・生産体制は致命的な打撃を受けることになりかねません」などと綴っている。3月の時点では、同社の株主構成は国内の金融機関を中心に2〜5%台と突出した存在がいなかったが、夏になり、市場での買い占めが露見した。

しかし、新聞社の経営に大きく関わる事案とあってか、新聞やテレビで大きく取り上げられることはなく、投資家やFACTAなどの非記者クラブメディアの間で「知る人ぞ知る」話題にとどまっていたが、新聞各社が公然と懸念を表明したことで騒ぎが「一般化」。10日夜から関連報道が流れ始めた。波紋を広げたのは、時事通信が政府の動きも報じたことだ。

政府が状況把握に向けて情報収集を始めたことが10日、分かった。経営権を取得した場合の報道への影響などを含め、経済安全保障の観点からも取得状況を注視しているもようだ

この問題をいち早く報じたFACTA(9月号)は、北京大学出身ながら母国を追われ、日本に辿り着いた中国人投資家の暗躍など「中国人ネットワークの上場企業漁り」(同誌)を背景に伝えている。

日本の新聞社は非上場である上、日刊新聞法で定める株式の譲渡制限により、外部が敵対的買収をすることは事実上不可能だとみられてきた。2006年には日経新聞と対立していた作家の高杉良氏が、日経OBから株を譲り受けて「株主」となり、株主総会に出席しようとしたが認められず、高杉氏が株主の地位確認を求める訴訟を起こした末に敗訴している。

今回の買収の真意が、新聞業界だけでなく、政府も懸念するように新聞発行インフラへの影響力を増すことによるものなのか、真相はまだ明らかになっていないが、新聞社の買収防止策の「急所」を突いた格好だ。しかし、新聞業界にとって辛いのは、この問題が報じられてからネット世論は冷ややかな見方も少なくないことだろう。ツイッターでは、

「市場で売っているものを買ってはいけないというルールがありますか? 大量保有の報告義務は怠っていません。」

「呑気に懸念を表明してる前に動かないとダメですね。業界の衰退の同じように時すでに…」

などの声が上がっている。「新聞社連合もファンドに対抗して、ホワイトナイトで東京機械株を買い増せばよくね?」と言ったツッコミも出ているが、部数減が止まらず、経営不振が続く新聞業界にそうした大胆な対抗策ができるのか怪しいとみる向きが支配的だ。東京機械製作所は買収防衛策を講じつつあるが、政府の注視も表面化したことも受けて、この買収騒動、果たしてどうなるだろうか。

 

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