野田聖子氏電撃出馬⁈でも結局、安倍さんの掌の上でみんな踊ってないか?
「爽やかな闇将軍」の深謀遠慮説- 自民党総裁選、野田聖子氏の推薦人確保見通し報道に驚き
- 事実なら河野太郎氏の1回目投票での過半数確保は難しく
- 総裁選で安倍前首相の深謀遠慮説。高市氏支援も岸田氏勝利のため!?
自民党総裁選は15日、告示まで残り2日となった。石破茂氏が出馬を見送って河野太郎氏の陣営に何らかの形で合力する見通しが強まる一方で、岸田文雄氏が手堅く支持率を維持。安倍晋三前首相の後ろ盾を得た高市早苗氏が激しく追い上げ、その結果、1回目のフルスペック投票で河野氏の過半数を制するかどうか……という情勢で固まるかと思った矢先だった。14日深夜になり、テレビ東京が、野田聖子氏が20人の推薦人を確保する見通しだと速報した。
推薦人確保?一報に驚き
他のメディアも「野田聖子氏、推薦人確保を最終調整」(産経新聞)などといった論調。これまで推薦人集めに苦戦していた野田氏が石破氏らへの働きかけなど必死の交渉を続け、悲願の20人が射程に入る際どいところまで持ち込んできた様子を伺わせる。当初筆者は三原じゅん子氏あたりが急に動いたのかと思ったが、思い返してみれば、彼女は初めて選挙に挑む際、最初に親身に相談に乗ったのが野田氏だったから、ある意味「譜代」的な存在だ。実際、7月21日夜の時点でも尾辻秀久氏らと野田氏の出馬を模索する会合に出ていたことがNHKに報じられている。
では三原氏以外に10数名をどこから確保したのか。総裁選に名乗りをあげて1か月余り、菅首相の不出馬が決まり、派閥にとらわれない投票行動を訴える若手議員たちの「党風一新の会」の動きに見られるように党内の流動化は強まっていた。この間、野田氏は推薦人に手をあげる人を以前よりは集めやすい環境になっていたのは確かだった。
安倍政権時代、野田氏がたびたび総裁選に出ようとして推薦人を集めかけても切り崩しにあい出馬断念に追い込まれたのは、永田町では有名な話だ。特に2015年総裁選は、安倍氏が無投票での再選を果たすため、野田氏の推薦人に協力しないよう党内の締め付けが半端ではなかった。そういう経緯を覚えているので、最後の最後の段階で20人を集める見通しを立てられるところまで来たというのは率直に驚いた次第だ。
河野氏 過半数阻止「切り札」!?
だから、それだけに意地悪く、舞台裏を邪推してしまう。テレ東の報道通り20人の見通しが立ったのが本当であれば、それはどの段階だったのか。仮に石破氏が出馬をせずに河野氏側に加勢する運びになったここ一両日のことであったとすれば、その推薦人は野田氏の説得だけで“オチ”たのだろうか。これは筆者の勝手に描くストーリーだが、野田氏本人も気づかないところで「見えざる力」が働いて突然援軍が出現したのか…。
もしそうだとすると、援軍の目的は野田氏を勝たせるというよりは出馬させることそのものだ。つまり、野田氏の出馬と同じく派閥横断型の河野陣営は、1回目の投票で幅広い層を取り込んで一気に過半数制覇に持ち込んで勝利したい。逆に河野総裁誕生を歓迎しない人たちの視点からすれば、野田氏が出ることで票を分散させられるのは魅力だ。熱狂的な保守・右派層に支えられた高市氏もここまで健闘しているので、野田氏の出馬は、河野氏の過半数制覇をさらに制止する上で小さくない「切り札」になる。そして結局、岸田氏が手堅く2位をキープしさえすれば決選投票での逆転勝利の公算が強まる。
もちろん、そんな「陰謀論」が事実であれば面白いが、現実にそうでなくても河野氏には「痛手」なのに変わりはない。それに高市氏が党内右派の論客として知名度が高まり、保守層が熱狂的になればなるほど党全体が保守色を強めすぎ、無党派層が「ドン引き」し始める懸念も出つつあったが、リベラルな野田氏が論戦に加わることで自民党全体の多様性を演出することができ、イメージコントロールの効果も小さくない。やはり総裁選を盛り上げて沈みかけた自民党を再浮上させるという「神の視点」を感じさせる。これは長期政権の主だった人でなければ得られない。それは安倍氏本人だけが持っているだけではなく、安倍政権を首相秘書官・補佐官として長年支えた、元経産省の今井尚哉氏のものであったとしてもだ。
安倍氏の「深謀遠慮」説は?
高市氏が唐突に総裁選に名乗りをあげ、そこに安倍前首相が支持に舵を切ったことに「深謀遠慮」があると永田町ではささやかれてきた。これもそれも「変人」河野氏の当選を阻止するため、1回目の投票での岸田氏との一騎討ちを回避し、2回目の議員投票で岸田勝利を決めるという“高等戦術”のことだ。
だから誰が総裁選の本当の筋書きを描いているのか、こちらも筋書きを考えてしまうのだが、まさか野田氏の推薦人確保に何らかの「深謀遠慮」が働いたのかどうか。政局勘が冴え渡るいまの安倍氏や今井氏ならそれくらいの発案はやりかねないが、それが事実でなくても、河野氏優勢で3人の論戦で迎えようとしたムードで「マンネリ感」も漂い始めたところに新しいサプライズが加わったことには間違いない。
結局は、候補者も陣営も論客の皆さんも記者たちも、ネット右派も、結局は、安倍さんの掌の上でみんな踊ってないか--。筆者のよくない性で、ついつい邪なことを考えてしまうが、いまの安倍前首相は、スター性は健在なものの、これまでにない「爽やかな闇将軍(キングメーカー)」と形容したくなるほど隠然たる存在感の大きさを感じ取ってしまうのである。
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