米英豪の新同盟?日本は参加?「AUKUS」巡り専門家がツイッターで議論活発に
これを読むだけで概要が丸わかり!?アメリカのバイデン大統領は15日(日本時間16日)、ホワイトハウスでイギリスのジョンソン、オーストラリアのモリソン両首相とオンラインによる共同記者会見を行い、インド太平洋地域の安定をめざした新しいパートナーシップを締結する方針を明らかにした。新しい枠組みは、3か国の名称から「AUKUS」と命名した。
バイデン大統領は記者会見で、「おそらく最も重要なことは、イギリス、オーストラリア、アメリカがさらに緊密に連携し、私たちの間の信頼の尺度、友情の深さ、そして自由と民主主義の共有価値の永続的な強さを反映することだ」と述べた。仮想敵国の具体名こそ明言していないものの、自由と民主主義の価値共有を強調した点から、中国への対抗策の一環であることを強くにじませた。また、記者会見では、AUKUSとしての最初のタスクとして、オーストラリアの原子力潜水艦保有を支援することも明らかにした。
ツイッターの政治トピックでは、自民党総裁選などの国内の話題が中心で、政治クラスタの間で関心は高くなさそうだったが、国際政治学者らの専門家は各国政府の公式ページや海外からの報道記事を引用しながら、活発に議論を展開した。
慶應義塾大学の鶴岡路人准教授(国際安全保障)は「昨日からの報道で、仏との豪潜水艦契約を破棄して米英と原潜で組むという話かと思いきや、それのみならず、3カ国で『同盟』をつくるということでした。サイバー、AI、量子コンピューティングを含む防衛技術共有が柱」と第一報を紹介。AUKUSについて論点として以下の4点を示した。
- 中国の脅威に対抗するという目的は明確
- 英国のインド太平洋へのコミットメントが制度的に強化される
- 不拡散関連の問題は厄介(共同声明でも1段落使って説明)
- Quadや日米同盟との連携の方向は?特に日本がいかに連携するか(できるか)は大きな難題
同じく慶応大の中山俊宏教授(アメリカ政治外交)も「豪州の安保関係者との対話の中で数年前から原潜保有の話がでていて、その時はどちらかというと「PLAN B」の文脈だったとの印象が強かったが、この取り決めは米英とガッチリと組む「AUKUS」。アングロサクソン同盟が数段バージョンアップ」と指摘した。
日本も参加はあるか?
専門家らの議論とは別に、外交に詳しい自民党の長島昭久衆議院議員は、NHKニュースのAUKUS報道を引用する形で「これは、ソ連の脅威を前にNATOを創設したことと多くの面で重なる動き。さらに、日本やインド、台湾などを加えてインド太平洋の平和と安定を「面的」に支える安全保障共同体を築く努力をすべき。新政権に期待」と言及した。日米同盟重視の保守層などからAUKUSの拡大や日本の参加が将来的にあるのか関心が寄せられそうだが、現実にはハードルがありそうだ。
東京外国語大学の篠田英朗教授(国際関係論)は「AUKUSについてロマン主義的解釈がだいぶ出ているが、基本はオーストラリアに原潜運用をさせる枠組みと思うので技術的な評価だけをすべきでは。同盟機構としての付加価値があるように思えない」と冷静な見方を示した。篠田氏はさらに、AUKUSの発表直前、オーストラリアがフランスから供与される予定だった原潜の契約を破棄した経緯に触れて「これによって生じる直接の結果は、フランスがオーストラリアとの大型契約を失うこと。中国は、むしろそこに着目するのでは」と懸念を示した。
ここで二松学舎大学の合六強専任講師(国際政治学)がフランス政府の声明を引用し、「政治的な信頼関係と、豪州における非常に高度な防衛産業・技術基盤の発展に基づいた、仏豪間の協力関係の文言と精神に反するもの」といち早く翻訳してツイート。これを引き合いにする形で専門家らの議論がまた展開され、鶴岡氏はフランスの反応について「たとえ豪の意向が伝わっていたとしても、やはり「激おこ」のようで仏の声明は必読」と指摘した。オーストラリアによるフランスとの潜水艦契約の破棄は、アメリカがフランスなど他の同盟国にAUKUS構想を事前に周知していなかったことを裏付ける。
さらに鶴岡氏、中山氏らはAUKUSの今後についても議論を展開。中山氏が「日本を巻き込んでJAUKUSにしようとする動きは一切なかったと解していいんでしょうか?」などと鶴岡氏に水を向けると、鶴岡氏は「私は残念ながらかなり懐疑的です。英米の発表や発言をみていても、最古の同盟、歴史、特別、ユニーク、今回限り、といった言葉が、これでもかというほど並んでいますし。いつも一緒に戦う彼らはやはりDNAの同盟であって、原潜就航の暁には、米英豪合同の部隊のように運用される気がします」との見解を示し、篠田氏も「同感。ひどく内向き志向に見えますね」と応じていた。
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