「中国恒大集団」危機:中国不動産バブル崩壊で、日本でも暴落あるか?

バブル崩壊の経緯とその先の波及を読む
住宅・不動産ライター/宅地建物取引士
  • 中国の不動産大手「中国恒大集団」が巨額の有利子負債で経営危機
  • 中国の不動産価格下落は可能性大。日本のバブル崩壊時と似た経緯と原因
  • 日本の不動産市場に与える影響はあるのか?価格動向から見えるのは?

中国の不動産大手「中国恒大集団」が、巨額の有利子負債(日本円で9兆円超、2021年6月時点)を抱え経営難に陥っている。中国当局は昨年12月、不動産市場にバブル懸念が生じたとして、銀行の住宅ローンや不動産関連企業への融資に総量規制を設けると発表。これにより中国恒大集団は資金繰りが悪化したうえに、中国当局がマンション購入に一定の規制をかける措置を講じたことから不動産事業の業績も悪化したとみられている

※参考「中国大手銀、不動産向け融資悪化 当局の締め付け影響」日経新聞 9/13

中国恒大集団サイトの不動産ページより

中国の都市部を中心に高騰しすぎたマンション価格を抑制する措置として、現在、中国当局が行っている対策は、不動産関連融資に対する総量規制・マンション取引に対する事実上の価格統制・マンション購入の許可制などだ。不動産価格の下落は見られないが、今後さらにこれらの規制が厳しくなっていけば、中国のマンション価格は長期的に見ると下落に転じる可能性が極めて高い。

日本の不動産バブル崩壊時に酷似?

バブル当時の日本は高い経済成長率(1988年当時、6.8%)に支えられ、日本中が「財テクブーム」に沸いていた。今では死語となった財テクという言葉の本来の意味は、企業が手元の余剰資金や借入金を有価証券や不動産などに投資して利益を確保しようとすることを指している。

だが、当時は企業だけでなく一般のサラリーマンや専業主婦もこぞって株や債券、不動産などへの投資を行っていた。なかでも不動産は自己住居として利用できるという側面をもち、一般個人にとって投資の対象としては最も身近な存在だ。日本の不動産価格が右肩上がりで上昇し続けるという状況の中、持ち家を取得することは同時に不動産投資を始めることを意味するものでもあった。

wenjin chen /iStock

日本の不動産バブルが崩壊する直前、当時の日本政府は、土地の高騰を抑制するためにさまざまな施策を行った。なかでも土地価格の高騰抑制に効果を発揮したのが、土地取引価格の上限を事実上国が管理する「国土利用計画法(通称国土法)」と、金融機関の不動産関連融資を制限する「総量規制」である。

取引価格の上限を国に定められ、さらに不動産購入の原資となる資金の借入が急激にストップすれば、買いたいけれど買えない、売りたいけれど売れない状況になり、不動産流通・取引は急激に減る。そして当然それは市場価格を押し下げることになった。

日本のバブル崩壊は金融政策の転換や外圧などを含めさまざまな要因が重なった結果だが、不動産価格だけに絞って見るのであれば、当時の不動産価格が暴落したのは、国による取引価格の制限と融資の総量規制が直接的な原因であることに間違いない。現在、中国が行っている不動産価格の高騰抑制策もまさしく当時の日本と同様の措置である。

国全体の経済動向の今後は別として、不動産の取引価格制限と融資総量規制を行えば、少なくても不動産流通・取引が減ることは間違いない。その事を明確に示しているのが冒頭で紹介した中国恒大集団が置かれた現状といえるだろう。

今後、中国国内で経営危機に陥る第2、第3の中国恒大集団のような不動産企業が立て続けに現れるようなら、中国は過去の日本同様、不動産関連の不良債権処理に長い時間を費やすことになる可能性もある。

北京の金融街(画像はイメージです。SeanPavonePhoto /iStock)

中国バブル崩壊で日本の不動産暴落は?

過去、日本で起きた地価の急激な下落は、金融危機と同時にしか起こっていない。もちろん調整局面としての短期的な地価下落はあったが、急激で大幅な下落はオイルショック以降では平成バブル崩壊とリーマンショックのときだけである。

不動産価格はその国や地域ごとのドメスティックな市場感で相場が構成されており、中国不動産の価格が暴落しても、それが直接日本の不動産市場に影響を及ぼすことはない。仮にそれが世界的な金融危機をもたらすなら話は別だが、今回の中国恒大集団のデフォルト問題は、リーマン級の金融危機をもたらす可能性が指摘されている一方、実際にデフォルトしてもそれが即世界的な金融危機につながるとは考えにくいと指摘する声の方が多い。同社の融資債権の多くは政府系金融機関が保有しているとされており、さらには市場の混乱を避けるために今後も中国政府の積極的な介入があると考えられているからだ。

日本の首都圏マンション市場の今後

現在、日本では首都圏を中心とした地価の上昇と住宅需要の急増が顕著だ。今年8月の首都圏新築分譲マンションの平均価格は一戸当たり7,452万円で、前年同月比24%の大幅アップとなっている(株式会社 不動産経済研究所調べ)。

また、(公財)東日本不動産流通機構のデータによると、マンションデベロッパー側の販売戦略の影響を受けない中古マンション価格についても、首都圏の今年8月度の成約価格は前年同月比で 3.5%上昇した。これで首都圏中古マンションの成約価格平均は、2020年6月から15か月連続で前年同月を上回ったことになる。

これから首都圏でマンションの購入を考えている人にとっては、どんな理由にせよ少しでも価格が安くなって欲しいところだと思うが、日本政府がまた悪名高い地価抑制策を急に講じたり、中国恒大集団のような事業規模の大きい企業がデフォルトし世界的な金融不安を巻き起こさない限り、しばらく首都圏のマンション価格は下がりそうもない。

 
住宅・不動産ライター/宅地建物取引士

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