「AI絵画×NFT」に挑戦!京大ベンチャーの大学院生社長に話を聞いてみた
どうやってAIを“画家”として認めるのかAIが描いた絵をNFTで販売する--。そんな最先端技術を組み合わせたプロジェクトが、日本でも始まっている。
京都大学のメンバーを中心とする株式会社XNOVAは2019年より活動を開始、今年5月に法人化したばかりのベンチャー企業。これまでAIによって映画「ローマの休日」などモノクロ動画のカラー化や、絵画の生成など、AIやブロックチェーンなど最新のテクノロジーの研究開発やクラウドファンディングなどを試みてきた。

今回、同社が始めたのは、AIの描いた絵をNFT(非代替性トークン)化して販売するプロジェクト。現在は事業開始にあたりクラウドファンディングを実施している(クラウドファンディングREADYFORにて。10月31日まで)。NFTとは、ブロックチェーンを活用したデジタル資産管理のための技術で、最近は世界的にその価値が高騰するなど盛り上がりをみせている。
このクラウドファンディングに参加するとリターンとして、NFTでの絵の権利を得ることが可能だ。1000円から参加でき、5万から150万でNFTの権利が得られる。権利が得れば、OpenSeaなどのNFTプラットフォームなどを介して転売していくことも可能だ。
同社のCEOは八鳥孝志氏。なんと現役の京都大学大学院の2年生だという。大学院では、AIのことを専門に研究しているのだろうか。
「専門ではないのですが、AIについては自分で勉強していました。大学でもAIについても授業はありました。流行の技術でもあるので、周りの学生もみな自主的にAIの勉強会をしたりとそんな環境でした」(八鳥氏、以下同)
人類の外側”から見たアート
AIが絵を描く、といってもそれは一体どのような過程を経るのか。技術としては、敵対性生成ネットワークという想像力を持ったAIを使用するという。技術に疎い記者の素人考えでは、スーパーコンピューターのような大型機械を使って作るのかと想像していたが、そこまで大掛かりなものではなく専用のクラウドコンピューティングを外部から借りて生成していくのだという。
AIが絵を描くにあたっては、まず、テーマの設定に関しては人間が指定する。
「テーマを与えないと、AIは絵を描き出すことはありません。ひとつテーマを設定すると、AIが自ら文章や、世界中の画像や芸術作品などを読み込んで、絵を描いていきます」
十分に学習したAIが、蓄積されたデータから新たなつながりを見出し、このつながりを絵として表現する。AIが描く絵は独特で、人間が描くものとは全く異なるもので、そこが魅力でもある。八鳥氏はAIが描いた絵画の中でも、特に「海底」をテーマにした絵が気に入っているという。

「海の中で光るネオンの感じなど、芸術的だなと感じています。色使いも形も、人間が描くタッチとは、また違った独特の世界を描いてくれているのです。こういう“人類の外側から見たアート”というのも、これから増えていくのではないかと思っています」
AIは、同じテーマを指したとしても、同じ作品を作ることはないという。
「人がそれぞれが生きてきた環境によってそれぞれ感性が違うように、AIがどの情報を汲み取ってどう解釈するかも個々に違ったものになります」
それは人間が絵を描くのと同様に、量産されるものではないという。世界に1枚だけの芸術が生み出されるわけだ。
NFTでAIを”画家”として認めるために
「AIが描いた絵の価値の素晴らしさを見るにつけ、一体どうやってAIを“画家”として認めて挙げられるのかを考えた際に、AIはNFTの存在と相性が良いように思いました。人間の絵がデジタルになると、複製可能なものとして価値が生まれませんが、デジタルでは世界では逆のことが起きるのです。AIの絵をコピーして額縁に入れても、価値は生まれないのです。人間の世界とデジタルの世界とでは、その価値の置き方が全く逆になるのです。AIの描いた絵を見せる方法として、紙に印刷して見せる方法もありますが、デジタルから紙になった時点でそれは単なる複製物になってしまいます。AIの場合、本物の価値はあくまでデジタルな世界に存在するのです」
AIが描いた絵を販売すること自体は、世界ではすでに始まっている。2018年には、AIの描いた肖像画が競売大手クリスティーズのオークションで予想の40倍を超える43万2500ドル(約4800万)で売れている。今年3月にはNFTマーケットでAIロボットが描いた絵が、68万8888ドル(約7500万円)で落札された。AIもNFTも最新技術による「新たな芸術」として熱い注目を集めている。
NFTのマーケットも盛り上がっている。NFTを使ったデジタルアートが6930万ドル(約73億円)で落札されたニュースは記憶に新しい。こうした新興マーケットではコレクターはどのような動機で高額のアートを買っているのだろうか。
「おそらくそれは、既存の絵のコレクターと同じではないでしょうか。単純に、絵が好きだから持っておきたい、資産として持っておきたいなど様々な理由があると思います。ただ既存の取引と大きく違うのは、流動性が高いという点ですね」
人気の絵は転売を経てどんどん価値が上がっていく。流動性の高さは、“活気”そのものでもあり、これが今後このマーケットを育てていくことにもなるのだろう。
日本人にとって、NFTマーケットは英語圏のものが多いために、まだ身近なものだとはいえない。ところが今年になって日本でもNFTマーケットが開設されるようになった。今後は日本人にもこうした取引が身近なものになっていく可能性は高い。NFTのようなデジタル技術に触れるための敷居は今後、確実に下がっていくことになるだろう。
最先端技術が新たな芸術分野を創造する時代が、すでに始まっているーー。そして、AIとNFTという最先端技術同士が組み合わさることで、今後はより大きなマーケットが形成され、”文化”となっていくのだろう。さらには、こうした新興の芸術から人間がインスピレーションを受けて、さらに新しい芸術が生まれる可能性もある。人間とAIの高次元の“文化的交流”が始まる時代が来るのかもしれない。
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