「連合初の女性会長」でも労組オワコンの潮流

“救いの女神”を待ち受ける時代の荒波
  • 連合の次期会長候補に芳野友子副会長が浮上。会長就任なら女性初
  • 会長選考に立候補者ゼロの異常事態。野党共闘をめぐる組織内の路線対立
  • そもそも時代の変化で労組の存在意義が問われる状況。次期会長の舵取りは?

労働組合の中央組織、連合の次期会長に芳野友子副会長が浮上したと週末にかけて報道されたことで、1987年の組織結成以来、8代目にして初の女性会長就任となるか注目を集めている。週明けの中央執行委員会で了承を得て10月6日の定期大会での決定する見通しだ。

連合初の女性会長になるか注目される芳野友子氏(連合サイトより引用)

会長立候補が不在の異常事態

芳野氏はミシン製造JUKIの労組出身。制度上は今月30日までの告示期間に他の候補者が手を挙げれば選挙戦になるが、22日の告示日の段階で会長、事務局長への立候補者が誰もおらず、立候補の受け付け締め切りを月末まで延長するという異常事態となっていた。

そもそも、今期で退任する神津里季生(りきお)会長の後任を巡っては、混迷を続けていた。ここ最近報じられた「ポスト神津」の動きだけでも、相原康伸事務局長が昇格をめざすも出身労組の反対にあって断念。副会長の松浦昭彦氏(UAゼンセン会長)も昇格を断り、運輸労連委員長の難波淳介氏が一時有力視されたものの、これも出身労組が難色を示した。

人事が難航した要因は「政治」だ。神津氏、相原氏ら現執行部は「野党共闘」志向で、立憲民主党支持への集約を図ろうとしたが、松浦氏の出身組織、UAゼンセンを含む産別労組は「中道改革路線による勢力結集」を志向しており、国民民主党への支援を継続。同党は今年3月、民間労組出身の3人の参議院議員の入党を決めている。こうした路線対立が権力闘争に拍車をかけ、今回の次期会長人事を巡る混乱に繋がってきた。

会長に就任すれば、初の女性トップになる芳野氏は“救いの女神”になれるのかといえば、連合を取り巻く厳しい情勢に変わりは全くない。今回、露見した主導権争いだけではなく、連合を含めた労組そのものの長期停滞構造を脱却しきれていない。厚労省の労働組合基礎調査(2020年)によれば、2005年から約1000万人でほぼ横ばい。組織率は17.1%と前年より微増したものの、2002年調査を最後に20%台を割り込んでからは緩やかに減少してきた。製造業などの伝統的な企業が労組がある一方で、平成中期以後に出てきたネット企業などの新興企業は、そもそも労組がないところが多い。

令和2年(2020年)「労働組合基礎調査」=グラフは紙パ連合ニュース 第543号より

「人材流動化」時代の変化

労組が「オワコン」化する要因として指摘が多いのが非正規労働者の増加だ。旧来型の労組には正社員主体で、非正規の人たちとの「利益相反」が指摘されてきた。近年は、組合員に女性や非正規労働者を取り込むことで人数をなんとか維持しているが、そもそもの少子高齢化に加え、終身雇用の崩壊など人材が流動化する時代の変化に直面。転職が当たり前の時代になっているのに、日本の労組特有の「企業別」の組織構成が合わなくなっているという指摘も少なくない。

ツイッターで「労働組合」「オワコン」で検索すると

→コロナ禍でも賞与カットなし
・労働組合の力が強く雇用が安定

オワコンって誰が言ったのってぐらい、十分に素晴らしい環境ですよ

などと前向きな人もいる一方で、

連合は正社員クラブww

労働者保護以外の活動やめれば組合員が増えるんじゃないかなあ。平和運動とか

「労働者を教育し、市場価値を高め、辞めないように大事にする」というのは、経営者として僕が目指すことと100%同じ。
労働組合がオワコンだと僕が思うのはこのためで、志のある経営者がやった方が効率がずっといい

など、辛辣な意見も目立った。組織の混乱、旧民主党系勢力の分断、何よりグローバル化と人材の流動化が進む社会の変革にあって、労組のそもそもの存在意義が問われる荒波の中を、連合の次期会長はどのような舵取りをするだろうか。

 

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