いじめと総裁選のW衝撃…旭川市長選で自民系候補圧勝

出口調査が示す有権者の意向は?

衆院選出馬をめざす前職市長の辞職に伴う北海道旭川市長選が26日投開票され、与党系の新人、今津寛介氏が、野党支援の元道議で、新人の笠木薫氏との一騎打ちを得票率60%の圧勝で制し、永田町関係者の注目を集めつつある。

旭川市(ikuyan /iStock)

地方選挙は、当事者である地域住民の生活に関わる重要な意味を持つ一方で、中央政界の視点で見ると、国政選ほどの投票率に及ばないことが多く、各党の現時点での党勢の「基礎体力」を測るバロメーターの意味合いがある。旭川市は、左派勢力が選挙に強い北海道の典型的な地盤。衆院選が1996年に小選挙区制になって以来、同市を含む北海道6区は過去8回の選挙のうち、民主党や立憲民主党が6度勝利しており、この8月に辞職するまで4期務めた西川将人前市長も民主党出身だった。

党勢を占うバロメーターという点で言えば、自民党総裁選に伴うメディアの圧倒的な露出の結果、伝統的に民主系が強い地盤でどのような変化が起きるか、旭川市長選の有権者動向が注目された。

西川氏は2018年の前回選挙で8万票以上を獲得。その時の相手が今回の選挙を制した今津氏で、5万票台に止まった。しかし今回は、今津氏が8万票以上の支持を得て、西川氏の後継をめざした笠木氏が5万票台に伸び悩んだ。つまり、得票の差は今回とほぼ同じにも関わらず、与野党系が入れ替わった格好だ。地方選挙での「政権交代」はしばしば起きるが、候補者の乱立や、支持層が近い勢力内の分裂などのイレギュラーの展開が番狂わせにつながることはあっても、支持層の異なる与野党系の候補者が一騎打ちで、勝者と敗者がきれいに入れ替わるのは興味深い。

NHKの出口調査によると、前回、今津氏に投票した人の9割がそのまま同氏に票を入れた一方で、西川氏に投票した人たちのうち3割が今津氏に流れた。出口調査で支持政党別を尋ねた質問に対し、無党派層と答えた割合は17%と全国平均よりは少ないが、無党派層の6割が今津氏に投票したと回答しており、野党側から見れば無党派層の支持を逃したことが敗因の一つと言える。自民党総裁選の影響については調査項目にないので推計するしかないが、先述した「入れ替わり」の図式からすると、影響した可能性があるのか永田町関係者の注目を集めそうだ。

ただ、今回の旭川市長選ならではの要因も予想以上に大きいかもしれない。市立中学校の女子学生が凄惨ないじめを受けた末に凍死し、全国的な社会問題になった事件だ。NHKの出口調査は、いじめ問題も投票に考慮したかを尋ねており、「大いに考慮した」が37%「ある程度考慮した」が39%と、合わせて7割を超える人たちが判断材料に挙げた。

事件直後、中学校が真相解明に非協力的な態度を取り、市の教育委も第三者委員会による調査にすぐに踏み切らなかったことが問題視された。また西川前市長が調査の結論が出る前に市政を投げる形になったことにも一部で批判も噴出。市民からはいじめ問題の事後対応をめぐる前市政の責任を厳しく問う形になったとも言える。出口調査の年代別投票動向では、10代と20代の約7割が今津氏に投票するなど若い世代が変化を求めていたが、いじめ問題の当事者に世代が近いことも影響した可能性がある。

 

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