マツコさんと芦田愛菜さんのプロの話し方「受けの1秒」のヒミツとは?

魚住りえさん特別連載「1秒で心をつかめ。」#1
2021年09月29日 06:01
フリーアナウンサー/ボイス・スピーチデザイナー
  • 魚住りえさんが重視する、話し方での「1秒」の大切さとは?
  • 「受けの1秒」マツコさんが辛辣な話をしてもゲストがなぜ笑顔に?
  • 芦田愛菜さんも実践。「えー」「あのー」を避け、キレを増すコツ

(編集部より)営業、プレゼンテーション、あるいはリモート会議…社会人でも若い人を中心にコミュニケーションの取り方に悩まれる方が少なくありません。ただ饒舌にしゃべればいいというものでもありません。元日本テレビアナウンサーで、現在はフリーで活躍する魚住りえさんは「出会い頭の1秒、会話の最中の1秒、別れ際の1秒など、コミュニケーションのあいだに生じる『特別な1秒』」を重視しています。

この連載では、魚住さんが「喋りのプロ」である著名人の隠された凄さを解き明かし、私たちが参考にすべきポイントを解説します。

(本稿は魚住りえさんの新刊『1秒で心をつかめ。一瞬で人を動かし、100%好かれる声、表情、話し方』(SBクリエイティブ)の一部を再構成しています)

魚住りえさん

「1秒」の心がけで人間関係が楽に

この人、仕事ができるな。
この人、優しいな。
この人、一緒にいると安心するな。
この人、すごく感じがいいな。

出会った人にそんなふうに思ってもらえたら、人生は必ずよい方向に進んでいきます。なぜなら、あなたと私がここでつながったように、私たちは人とのつながりのなかで生きているからです。

魅力的な人のまわりには、魅力的な仲間が集まります。すべての人に好かれる必要はありませんが、多くの人に好印象をもってもらえると、気の合う仲間と出会う確率が上がります。心理学者のアルフレッド・アドラーは、「私たちが感じるストレスの9割は人間関係から生じている」と指摘しました。その悩みの大半が「1秒」の心がけで軽減されていくのなら、それはとても素敵なことです。

今回出す新刊では、私がアナウンサー、ボイス・スピーチトレーナーとして「声のもつ力」と「話すこと、聞くことの大切さ」を考え続けてきた経験を活かし、好印象を生む「1秒」の秘密を解き明かしています。

キーワードとなるのは、「受けの1秒」と「攻めの1秒」です。
とはいえ、いきなり「受けの1秒」と「攻めの1秒」と言われてもピンときませんよね?
そこで、日々、私たちがメディアを通して目にしている「秒」の達人たちの技を例にして、「受けの1秒」と「攻めの1秒」のイメージをお伝えしたいと思います。

マツコが辛辣でもゲストを笑顔にできるのは

たとえば、テレビで見ない日はない司会者となったマツコ・デラックスさんは、見事に「受けの1秒」を使いこなしています。これだけちょっとした発言が炎上につながる時代に、マツコさんはテレビというファンばかりではない多くの視聴者の目に触れるメディアで、必要であればゲストに対して辛辣なコメントも口にします。

マツコ・デラックスさん(写真:つのだよしお/アフロ)

ところが、ほとんどの視聴者は好意的に受け止め、そのコメントをぶつけられたゲストご本人も笑顔になります。

なぜ、ポジティブな反応が広がるのでしょうか。それは短い時間のあいだに、話し手であるゲストと聞き手であるマツコさんのあいだに信頼関係が結ばれ、その空気感がお茶の間の視聴者にも伝わっているからです。その信頼の源となっているのが、「間(ま)」の1秒。マツコさんはゲストのどんな話にもしっかりと耳を傾け、深く納得したときも、ツッコミを入れるときも、辛辣なコメントを返すときも、返事の前に「間」を置きます。「ええ」も、「はい」も、「うん」もなく、静かに聞いて受け止めて、1秒の間を空けてから、「……わかる」「……私、それはね」「あー!」と話し始めるのです。この「受けの1秒」が、話し手にとって「しっかり話を聞いてくれた」という安心感となり、信頼感につながります

そして、視聴者にとってはゲストの話を自分なりに理解する時間となり、マツコさんの切り返しへの期待感を膨らませます。まさに「秒」で人を惹きつけているのです。

芦田愛菜さんが実践する「口閉じ」

もう1つ「受けの1秒」の例を挙げます。
あなたは、4歳から芸能活動を始められた俳優でタレントの芦田愛菜さんにどんなイメージをもっていますか?
私は演技力のすばらしさはもちろん、普段の話し方から親しみに加え、落ち着きと高いインテリジェンスを感じています。そのイメージをつくり出しているのが、「言葉の言い終わりで必ず口を閉じる」という「受けの1秒」です。

昨年の国勢調査のCMにも起用された芦田愛菜さん(総務省統計局リリースより)

じつは多くの人は話しをするとき、無意識のうちに口を開き続けています。すると、句読点や文末で音が途切れず、だらだらとした口調に聞こえてしまいます。

そして、言葉と言葉をつなぐための「えー」や「あのー」が増えていくのです。「えー、私は営業を担当しておりまして」「えー、今回は」「あのー、その件は」と。次の言葉のための場つなぎとして出てきてしまう「えー」や「あのー」。本人の意識は話の続きに向いているので、無意識に言ってしまっていることがほとんどです。

ところが、聞いている側は言葉と言葉のあいだの1秒に挟まれる「えー」「あのー」によって、「この人、わかっているのかな?」「焦ってるのかな?」と心配になります。せっかくいいメッセージを発していてもネガティブな印象になってしまうのです。こうした、どうしても開いてしまう口、こぼれ出る「えー」や「あのー」を遠ざけ、聞き手の印象を劇的に変える方法があります。

それが芦田愛菜さんも実践している「言葉の言い終わりで必ず口を閉じる」です。「ありがとうございます」(パクッ)、「驚きました」(パクッ)、「営業を担当している○○です」(パクッ)、「今回は○○についてご提案があります」(パクッ)、「その件についてはすぐに返事します」(パクッ)と。

言い終わりに「パクッ」と口を閉じることを意識すると、相手に「きちんとした人」「知的な人」という印象を残すことができます。発語の音のキレがよくなり、緩急のリズムのある話し方になるからです。

こんなふうに、「受けの1秒」は会話の流れのなかで相手の心を動かしていくテクニック。新刊では、声のトーン、言葉の選び方、表情のつくり方などの切り口で、さまざまなシチュエーションに合わせた「受けの1秒」を解説しています。

一方、「攻めの1秒」はこちらから積極的に仕掛け、相手に好印象を残すテクニックです。

#2に続く。次回はYouTubeで大活躍のあの人の話し方に迫ります。)

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