自民党総裁選:各候補の政策は現状認識が甘い。日本の首相には「改革力」不可欠
田村重信『政策現場発:型破りサラリーマン道』特別編- 元自民党職員の政治評論家、田村重信さんが今回の総裁選を振り返る
- 女性2人の立候補に意義。メディアの報じ方も変化、各候補者の長所分析
- 各候補の政策は現状認識が甘い。日本の首相には「改革力」不可欠
(編集部より)サキシルの連載『政策現場発:型破りサラリーマン道』で、自民党職員時代に仕掛けた斬新な政策的アクションを振り返っている政治評論家の田村重信さんに、きょう29日に議員投票と開票を迎える総裁選のここまでについて、連載の特別編として振り返っていただきました。

メディアの報じ方が変わった
今回の自民党総裁選、今までにない画期的な総裁選だったように思います。
今回4人出馬したのは良いことで、特に女性が2人立候補したことは画期的でした。日本にとっても良いことだし、海外に対しても良い発信になったと思います。
連日活発な討論会がメディアで報じられたのも良いことです。今は、テレビやインターネットの時代。以前なら、テレビでその時間しか見られなかったものが、今ではYouTubeでいつでも見られるようになりました。
あまり知られていないことですが、衆議院の選挙が控えていることもあり、その都度、世論調査で自民党をはじめ各政党の支持率調査を行っていて、自民党の支持率がアップしていることです。実は総裁選の討論会をマスコミで報道されればされるほど、自民党の支持率がアップしているのです。各候補が議論を活発に行なうこと自体が、自民党支持に効果があったと思います。
高市早苗候補は、ネットでは人気を博しているようですが、なかには支持者による他候補への誹謗中傷が問題にされました。自民党の総裁選挙ですから、相手を罵倒し、寛容性のない行為は良くないと逆に批判されることになりました。ネットの影響力の程も、選挙結果が出ればわかると思います。ネットで見れば高市さんが断然優勢でも、結果を見れば、ネットが全てでないことがわかることでしょう。
しかし、今回の総裁選、ネットが凄かったです。
また今回の総裁選で大きな変化は、メディアの報じ方です。これまでのように、公正中立なものよりも各メディアが色彩を明確にして主張を展開するようになったのは注目すべきところです。
総裁選は出るまでも試練
岸田文雄候補のような、派閥の長ならばすんなり20名が集まりますが、派閥の長でない人が20名集めるのは至難の技です。下村博文氏は出馬を表明していたものの、派閥内での軋轢があったために出馬を断念しました。その経緯をみていると、派閥の締め付けがいかに強いかがよくわかります。
麻生太郎さんは、河野太郎候補だけでなく、岸田さんも高市さんも支持しました。
高市候補は前総理の安倍晋三さんの力を借りて20人集めました。高市さんの熱意が通じたのでしょう。
野田聖子候補は4回目の挑戦でした。かつては土壇場で20人集められずに出馬が出来なかったけれど、今回は前日までに20人を集めて立候補が出来ました。石破茂さんが最終的に断念したことが、野田さんには有利に働きました。20名集めるのは本当に大変なことで、よく突破されたと思います。この至難の技(20名の推薦人確保)をクリアした候補ですから、誰が総裁になっても大丈夫だと思います。
かつての自民党総裁選には、女性は東京都知事の小池百合子さんしか出ていなかったです。日本の将来考えれば、女性の活躍が大事です。さらに高齢化率が高い中、少子化をどうクリアするか大事な問題で、その点、今回、野田さんの提起した人口減少、少子化、子ども対策など社会的課題に触れた主張は良かったように思います。
岸田さんは、満を持しての出馬です。「今回こそは勝つんだ」と、ずっと準備していました。主張もあるし、経済対策も新自由主義から転換するんだと明確に提起しました。党員・国民の理解得られるようわかりやすく問題を提起しました。
高市さんは、安倍さんや保守層の支持を得るために、靖国参拝も含めて国防力の強化を訴えました。
野田さんは、少子化問題や、弱者への目配せを主張して支持を得てきました。
河野さんには、日本の現状を変える突破力と改革力があると思います。
日本の厳しい現状分析が不可欠
今は平時ではなく、日本経済が沈んでいる最中です。日本の中だけでいるとわからないけれど、海外と比べると、日本の実質賃金は下がっているのです。世界におけるGDPで日本が占める割合は1995年が18%だったのに、2020年には6%で3分の1になってしまっているのです。2018年、1人あたりのGDP(購買力平価)もついに、韓国に抜かれてしまった現状にあるのです。
“成長がない”ことは日本の中にいるとわからないものです。そういうところを本気でやっていかないとダメになります。世界から見ると日本は後退しているようにしか見えないのが現状です。 1997年に、平均給与471万円だったのが、19年には436万ですから、35万円も減っているのです。

今回の総裁選は、かつてよりも若返ったといわれていますがまだまだです。若返りといったって、河野太郎58歳、彼以外はみな60代。世間では、定年退職前に差し掛かっている年齢です。
日本の政治経済が停滞するのは、各分野で高齢者がバトンタッチしないことです。
政界では、カナダ、フランス、ニュージーランドだってトップが40代。小泉進次郎氏にも言いましたが、「先生は若くないですよ。海外ならトップに立っているべき年齢なのです」と。
アメリカの大統領選は、爺さんの争いで、異常だと思います。それに影響されてはいけません。
私は会社の顧問をやっていますが、社長は26歳です。もっと若い人を応援すべきです。
公約を見ていると、みんな現状の厳しさをちゃんと分析していない気がします。将来のことを考えず、日本の置かれた危機的状況に対する認識が薄いと思います。公約を述べる前に、まずはこの日本で切迫している事実をキチンと説明しないといけません。
何かをやりますだけではなくて、現状はこうだからこれをやるという、厳しい現状の説明と具体案がないように感じます。日本は、65歳以上が29.1%で高齢化率が世界一の国なのです。その次は、イタリア(23.6%)とポルトガル(23.1%)なのですから。
日本の超高齢化の問題について、ピーター・ドラッカーは、これを『見えざる革命』と言っていますが、それは生産年齢に比べ高齢者が多く、この変化が日本は急速でこれが大変なことだというのです。
今の我々日本人は、その中にいるのですが、その深刻さがないです。
コロナ禍ですから財政出動は必要ですが、それと併せて、各候補者は将来どうするか?それを語らないといけません。
小泉純一郎氏が総裁選に出たときは、政策主張で、ほかの候補が「景気対策をやります」などという中で、一人だけ「それは良くない。孫子のツケを回していけない」とはっきりと言いました。政府のムダをなくし、民間でできることは民間にやらせるべきだと言い、それが評価されたわけです。今回の候補らは、それに比べると、将来どうするのか?日本が今置かれた状況に対する認識が甘いと思います。
憲法改正が必要なわけ
そもそも、憲法上で出来ないことをいっています。例えば、ロックダウンの法律を作るといいますが、それは実効性がありますか?
そもそも今の日本では、飲食店でお酒を禁止しているのに、それを守らずにお酒を出す店もあり、現状でそれすら取り締まれないのです。裁判したら負ける事がわかっているからです。憲法上明らかに出来ないのに、それを無視して、いくら法律を作っても実効性はないのです。飲食店のお酒の提供も取り締まれないのだから。
ロックダウンも本当に変えるのならば、憲法を変えないと実効性ある法律ができないので、緊急事態条項を憲法に入れようと主張すべきです。また、専守防衛の自衛隊でなく、憲法に規定された軍隊を持っていない限り、アメリカがいなければ日本を守れないのです。今の日本の現状では、アメリカとの関係を強化して、中国と対抗するしか方法がないのです。ただし、文化・経済などの関係を考えれば、中国との関係を断絶することなど、今の時代には日本の国益にはマイナスで出来ないことです。どうやって折り合いをつけていけばいいか、そういう話なのに軍事だけが突出していいわけがないのです。
日本の防衛を考えるならば、9条を改正して自衛隊を軍隊として扱えるようにすべきです。

改革力がなければ総理は務まらない
世論調査のトップは河野さんです。今の日本には、改革力ある人でなければ総理は務まらないと誰もが思っているはずです。それは、自民党の議員の考えも社会の見方とさして変わらないので、自民党票も世論調査に影響されるというのが僕の主張です。
総裁選は河野さんと岸田さんの2人が最終決戦になるだろうと、いわれています。
決戦投票で議員らが、もし河野総理では過激だと警戒すれば安定感で岸田氏が選ばれることになるでしょう。最終的にどうなるかわからりません。
河野さんが総裁・総理になれば、日本を変えてくれると思います。次に総選挙を控えていますから、国民に人気のある方が良いからです。小泉(純一郎)さん以来の人気が出るかも知れません。岸田さんが総理になれば安心感、安定感のある政権になることでしょう。
今回、どなたが総裁になっても、他候補を党役員及び閣僚に入れて全員で協力していくことになると思います。
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