NTTグループが「働き方大改革」全国32万人社員の原則リモートワーク化へ

消える“滅私奉公” 日本人サラリーマンの生活の質は変わるか?
  • NTTグループが32万人の原則テレワーク化。家族を含め100万人に影響か
  • 転勤や単品赴任もなくなり、移住も可能に。生活の質がかわる可能性
  • 「日本型雇用システムの典型」NTTが変われば日本全体の働き方も変わる?

 

NTT発表資料より

NTTグループは9月28日、コロナ禍後を見据えた経営改革の一環として、全社員の原則リモートワーク化することを発表した。対象は全グループ社員で導入は2022年度から。現在、約60拠点あるサテライトオフィスを2022年には260拠点に増設、自宅でも出先でも働ける環境を2023年までにIT環境を整備する。一極集中型の組織形態から、自律分散型のネットワーク組織形態に変えていくという。

これまで東京など首都圏に集中していた本社や管理部門を含む組織を、地方の中核年に分散する計画も同時に発表された。現在、社員が住んでいる場所と勤務地が離れてもリモートが可能になるという。同時に転勤や単身赴任も無くなることになる。日本企業の代表的存在が社員の働き方を分散型ネットワーク化に舵を切ることになれば、家族を巻き込む日本の“滅私奉公”的なシステム、社員と会社のあり方も変わっていきそうだ。

日本だけテレワークに後向き

NTTグループでは現在のリモートワーク実施度は、NTT本体が77.3%、東日本が67.4%、NTT西日本は51.0%、NTTコミュニケーションに至っては91.4%(2021年度8月実績)とすでに、高いリモートワーク度を維持しているようだ。

全グループ社員32万人を擁するNTTが、コロナ後も見据え原則リモートワーク化を認めたことは、今後の日本社会に与える影響が大きいだろう。32万人といえば地方都市並みの人口規模でもあるし、世帯を含めるとおそらく100万人以上に影響があることになる。今後は、企業の移転同様に、多くの社員が、会社が都心から地方に分散する可能性も生まれてくるだろう。

コロナ禍に対応してこれまで多くの企業がリモートワークを導入してきたが、企業によっては賛否両論もあった。日本では、テレワークの働き方について調査をすると「テレワークだと仕事がはかどらない」という結果が、7カ国調査で唯一出てしまう国でもある。この調査とは、アドビ社が9月16日にテレワーク勤務のメリットや課題をテーマに発表したもので、「テレワークのほうがオフィスよりも仕事がはかどる」と答えたのは、グローバルで平均69.1%だが、日本では42.8%だけだったという。

「私生活を犠牲」から転機に?

日本人が仕事がはかどらない要因はいろいろ考えられるが、他国と比較すると、はんこや紙文化を重視するが故か雑務が多いことも原因としてあげられている一方で、都心の狭い家に家族と“密”な環境の中で仕事していることも、はかどらない原因としてありそうだ。

kohei_hara /iStock

海外の広い家ならまだしも、日本の都心の狭い家でのテレワークというのは、生活感から逃れることも出来ず、苦行のようなところがある。そもそも首都圏の家やマンションは、1時間以上の通勤後に、くたくたになった身体で帰って寝るだけを前提とした間取りが多い。家には、リラックスするスペースがないのは無論、仕事に集中するための専用スペースなどほとんどない。地方に移り住むことで、より広い家で仕事専用の部屋などを確保して働くことが実現していけるのならば、多くの人の生活の質の改善が望めることになるのではないだろうか。

通勤電車に狭い家、転勤や単身赴任など、日本的雇用は生活の質を犠牲にして成り立ってきた側面が多い。リモート化は、日本人が目を背けてきた生活の質の向上に目を向けられる契機になりうる。

NTTはリモート化決定と同時に、様々な改革に着手することを発表している。入社年度による昇進体系を改め、ジョブ型雇用を全管理職に取り入れていく方針だ。NTTは、過去には日本的雇用制度の典型とされて、多くの日本企業の労務のあり方の参考にされてきた。そんなNTTがいま本気で変わろうとしている。このNTTの「働き方大改革」を契機に、日本全体の雇用のあり方も、一気に変わっていくことになるのかもしれない。

※参照:NTTグループ公式サイト「新たな経営スタイルへの変革について

 

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