「まずは成長が優先」三木谷氏の新経連が岸田政権の“新しい資本主義”に異論

金融所得課税強化も明確に反対

新政権の発足早々、日経平均株価の続落が止まらない中で、IT系の新興企業などが多く加盟する経済団体「新経済連盟」(代表理事:三木谷浩史・楽天会長兼社長)は6日、岸田首相が目玉に掲げる経済政策の理念「新しい資本主義の実現」に対し、事実上の苦言と言える声明文を発表した

岸田氏は自民党総裁選に際し、小泉政権以後の新自由主義的政策からの転換を標榜。供給サイドを強化して経済全体が成長し、その結果、低所得者にも恩恵が及ぶという「トリクルダウン」理論に基づいたような考えで進めてきた構造改革路線を見直す意思を表明し、「経済には、成長と分配の両面が必要」と分配を強化して、次の成長につなげる考えを示している。

これに対し、新経連が出した声明文は、国民所得や賃金水準などが韓国に追い抜かれる厳しい現状を共有し、政権がめざす国民所得増加に理解を示しながらも、

我々としては、労働分配率の事実上強制的な変更などを講ずるべきではないと考える。むしろ、民間のイノベーションを引き出しそれへの投資を促すことで付加価値や生産性向上を図ることこそが、日本経済の構造自体を変革するものとして根本的かつ持続的な治療となる。つまり、まずは成長が最優先である。

と異論をぶつけた(太字は原文と同じ)。さらに、「肝心の所得を増やすということ自体への道筋やそれを達成するための具体的打ち手をより明確にする必要がある」と、所得倍増政策の曖昧さを指摘し、首相が検討している金融所得課税強化についても「リスクマネーの供給を大きく阻害し課税計算対象である株価等にも大きな影響を及ぼす」として明確に反対した。

総裁選の最中から三木谷氏はツイッターで、構造改革志向の河野太郎氏を支持する政治家のツイートをリツイートするなど間接的に岸田路線への不満を示唆していたが、株式市場がこの金融所得課税強化への懸念を強めて株価が下落するなど分配政策偏重の影響が出始めており、旗幟を鮮明にした格好だ。

岸田政権に対する経済団体のスタンスを巡っては、経団連が4日、十倉雅和会長(住友化学会長)名義のコメントで「岸田政権の政策遂行に全面的に協力し、政府・与党と力を合わせ、コロナ禍の克服とサステイナブルな資本主義による持続可能で豊かな未来社会の確立に向け、自らの役割を果たしていく」と完全に同調したのは真逆の構図となった。

 

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