横浜市・山中市長がワクチン接種率で「デマ」流す。本当は「全国以下」

母数の異なるデータで「国より10%高い」と公表
ライター/SAKISIRU編集部
  • 横浜市のワクチン接種率につて「国の数字よりも10%ぐらい高い」と発表
  • 山中市長は比較不能なデータを使用。正しく計算すると「全国平均以下」
  • 神奈川新聞が市長の発言をそのまま報じ、その後軌道修正した
山中竹春市長は、横浜市のワクチン接種は全国平均より進んでいると断言(筆者撮影)

横浜市の山中竹春市長は10月13日、記者会見で横浜市のワクチン接種率について説明した。横浜市内のワクチン2回接種割合について

「全世代の接種割合が69.3%、約70%でございます。一方、国の全世代の2回接種割合が59.3%。横浜においてワクチン接種の向上が見て取れる」

国の数字よりも10%ぐらい高いところまで来ている」

と胸を張った。この発表を聞けば、普通の人はこう思うだろう。

「なるほど、ワクチンを2回打っている人の割合は、日本全体では60%ぐらい。横浜市では70%ぐらいいるのか。横浜は全国平均よりもワクチン接種が進んでいるのだな」

だが、山中市長の発表は、事実ではない。以下、説明する。

横浜市ホームページによると、10月12日24時時点の2回目接種完了者は237万365人。また、横浜市の発表している年齢別人口によると、2021年9月時点の横浜市の人口は375万8333人。そのうち、12歳以上人口は340万8840人となっている。これをもとに12歳以上の2回接種率を計算すると69.5%となる。若干の誤差はあるが、山中市長の発表とほぼ同じ数字だ。

一方、山中市長が比較している「内閣官房のデータ(デジタル庁ワクチン接種状況ダッシュボード)」によると、10月13日時点の全世代の2回目接種率は60.28%とある。一見すると「10%ほど高い」という山中市長の説明は、正しいように見える(なお、このような場合「10ポイントほど高い」と表現するほうがデータの扱い方として正確である)。

だが、内閣官房の全世代は「0歳以上の全人口」を指す。さらに、医療従事者などの優先接種は含まれていない。つまり、山中市長は比較してはいけないデータを比較しているのである。その結果、誤情報つまりデマを流してしまったのである。

横浜市の2回接種人口は237万365人(横浜市ホームページより)

正しく比較すると「全国以下」

デジタル庁に問い合わせると、

「ワクチン接種率について、政府ではワクチン接種状況ダッシュボードと首相官邸の2カ所で発表しています。医療従事者も含めた実際の数値により近いものは、首相官邸発表のデータになります」

とのことだった。

首相官邸HPでは、10月14日発表の2回接種完了者について、8331万1005人と発表。首相官邸が総務省「令和3年住民基本台帳年齢階級別人口(市区町村別)」をもとに推計した数字では、12歳以上人口は1億1461万7716人となる。すると、日本の12歳以上の2回目接種率は72.7%となる。また、日本の総人口1億2665万4244人をもとに計算すると、日本の全世代は65.8%となる。

それぞれの母数を揃えて、2回目接種率の正しい割合を計算すると、次のようになる(小数点以下第2位を四捨五入)。

「ワクチン2回接種率」(10月14日時点、サキシル編集部調べ)

日本の全世代(0歳以上すべての人)     65.8%
横浜市の全世代(0歳以上すべての人)    63.1%

日本の12歳以上               72.7%
横浜市の12歳以上              69.5%

こうして正しい数字を比較すると、横浜市のワクチン接種率は日本全体とほぼ同じか、むしろ遅れていることが分かる。間違っても「国の数字より高いところまで来ている」とは言えない。ワクチン接種率は計算方法によって多少の誤差は生じるが、これはそういう誤差の問題ではない。山中市長の場合、全国と比較する際の考え方が根本的に間違っているのだ。

全国の2回接種人口は8331万1005人(首相官邸ホームページより)

神奈川新聞が「拡散」

百分率は小学5年生で学ぶ内容であり、算数の知識さえあれば、山中市長の説明が間違っていることは誰でも分かる状態だった。山中市長はデータサイエンスを専門としており、統計処理について極めて高い知識があると見られていた。「母数が違う」という初歩的なミスに気づかないハズがなく、意図的にデータを操作した可能性もある。山中氏は選挙前、こう語っていた。

「われわれ“チャンピオンデータ”って呼んでるんですけれども、いちばん都合のいいものを取り出して『これこれこうですよ』っていうのはそれは不誠実だろうと思うんです」

 

また、15万近い発行部数の神奈川新聞は、市長の発したデマを確かめることなくフェイクニュースを垂れ流した。誤った情報はヤフーニュースに転載され、全国に広がった。

【新型コロナ】横浜市、ワクチン接種率70%に 全国平均より10%高く

山中市長に対しては、データ処理の専門家ならではの判断力や説明能力を期待した有権者も多かったはず。だが、その専門知識が市民を欺く方向に使われるとしたら……。なぜ間違った情報の発表に至ったのか、山中市長は丁寧に説明する責任があるだろう。

……と、ここまで記事を用意したところで、神奈川新聞が間違いに気づいて新たに記事を出した。

【新型コロナ】横浜市長発表「接種率は全国より高い」…単純比較できない数値だった 「訂正するかは市長の判断」

記事中で、横浜市健康安全課は

「単純比較できない数字だった」
「市民の誤解を招いたことに間違いはない。市長の発言なので、訂正するかは、市長に説明した上で判断してもらう」

と明言。「誤解を招いた」ではなく、「発表に誤りがあった」と言うほうが正確である。横浜市と市長の今後の対応に注目したい。

ライター/SAKISIRU編集部

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