横浜市役所がフェイクニュース連発、「国が数字を変えた」は間違いだった

デジタル庁「母数を変更したことはありません」
ライター

横浜市の山中竹春市長は市のワクチン2回接種率について、「国よりも10%高い」と記者会見で発表。だが、これは母数の異なるデータを比較した結果であり、事実に反していた。事実と異なる説明をした理由について、横浜市健康安全課は神奈川新聞の取材に対し、次のように答えていた。

市健康安全課によると、全国の接種率は分母を0歳からの全世代としているのに対し、市の接種率はワクチン接種が可能な12歳以上に限定していた。国は8月ごろまで12歳以上の数字を示していたといい、前提条件が変わったことに市の担当者が気付いていなかったという。

だが、この説明も事実と違うことが分かった。間違いが多すぎて何が何やら分からなくなるが、以下の通りだった。

横浜市のワクチン接種率は実際は「全国以下」(筆者撮影)

15日夕方、記者(私)が横浜市健康安全課に取材すると、担当者は神奈川新聞の記事と同様に「国の数字は夏頃まで12歳以上の人口を母数としていた」と回答。「間違いないですか?」と念を押すと、「間違いないです」と答えた。国の数字とは、デジタル庁情報通信技術(IT)総合戦略室の運営する「CIOポータル」というサイトに掲載された「ワクチン接種状況ダッシュボード」の数字だという。

だが、デジタル庁の担当者に問い合わせると、まったく回答が異なった。

「ワクチン接種状況ダッシュボードは、一般接種の始まった4月12日から運用を始めています。当初から0歳以上のすべて年齢を母数としており、変更したことはありません

「というのも、途中で母数を変えてしまうと定量的に分析できなくなってしまうからです。途中で母数を変えると、そのタイミングで接種率が急激に変化してしまう。定量的な接種率の推移を見るために、一つの基準として母数を全人口としています」

理由も含めて教えてくれた。極めて明快で腑に落ちる説明だった。

「間違いない」は間違いだった

ところが、その後、横浜市役所の担当者から以下のメールが届いた。

本日、16時頃に内閣官房CIOポータルの接種率データについてお問合せいただいた際、接種率の分母が12歳以上から0歳以上に8月以降変更した旨を回答させていただきましたが、内閣官房 情報通信技術総合戦略室に問い合わせたところ、当初から0歳以上で算出していたことが分かりました。訂正させていただきます。

国や県、本市の接種データを比較している中で、様々な分母があり、県のデータが12歳以上を分母にしており、検討する中で混同してしまったことが原因です。

大変申し訳ありませんでした。

「国が接種率の分母を途中で変えた」という説明は、やはり間違っていたのである。気の毒なことに、神奈川新聞は結果論とはいえ、またもフェイクニュースを流すことになってしまった。

担当者に電話で確認すると、「個々のデータが間違っていたわけではない」と主張しつつも、「分母の異なるデータを並べて市長に資料として提示したのは、適切でなかった」と説明した。数字を上げなくてはというプレッシャーなどは、特になかったという。

「国よりも10%高い」という誤情報の発表に至った原因は、市役所のずさんな資料作成にあったようだ。母数が違うという初歩的なミスに誰も気づかず、新聞報道にまで至ったのは不可解であり、今後の発表を鵜呑みにして良いのか心配になる。とはいえ、山中市長が“データ処理の専門家”であるなら、気づいて欲しいものであった。

 

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