イノベーションのジレンマを突破せよ!大企業のベンチャー出資

出資側とベンチャー、最適なシナジーをどう求めるか
IPO請負人/中小企業診断士
  • 大企業が投資を通じてベンチャー企業に接近する例が増加している
  • 出資する側は失ったマインドセットの要求。自社事業のイノベーションが狙い
  • 出資する側、される側、それぞれを経験した筆者が示す留意点は?

最近は、事業会社である大企業が投資を通じてベンチャー企業に接近する例が増えています。日本経済新聞の調査では、ベンチャー企業に資金調達の候補先を聞いたところ、事業会社と答えた企業が全体の88%で、VC(77%)や銀行(25%)を上回りました。

資金の出し方としては、事業会社が自社で内部留保しているお金で投資する場合や、それを外部の専門家(VC)に委託しして投資を行うケースがあります。これらをコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)と呼びます。

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ベンチャー出資で「イノベーション」

CVCの目的は、ベンチャー企業への出資を、既存事業とのシナジー創出や新規事業開発のきっかけにするというものです。ベンチャー企業と共同で技術開発を行ったり、事業会社の既存顧客へのソリューション開発やスタートアップの製品の販売代理機能として協働したりしていくことを狙っています。

彼らの目的は事業シナジーであるため、投資基準は、独立系VCとは少し異なります。ベンチャー企業の技術やビジネスモデルが事業会社のそれと親和性があるか、ベンチャー企業が獲得したユーザーに事業会社のサービスを提供できるか、といったことが事業会社のCVCにとっては重要になります。いつ頃の上場を目指しているか、イグジットまでにどの程度時価総額を大きくできそうかといった点については、VCよりも重視していません。

私はCVCとして投資側に回ったことがあり、事業会社側とベンチャー企業側の両方の立場を経験しました。ベンチャー企業側に立って考えると、ある特定の事業会社を資金の出し手として選択するならば、事業会社に期待するのは、彼らの事業基盤を生かした支援です。反対に事業会社側の立場に立って考えると、さらなる成長を企図するうえで絶対的な必要な「イノベーション」をベンチャー企業から取り込むことを期待しています。

言葉は悪いですが、IPO後に成長が行き詰った所謂「上場ゴール」的な会社、もしくはさまざまな制約の中で硬直化し過ぎてしまった大企業などは特に、失ったマインドセットを外部へ求めています。

また、ベンチャー企業は数人でもグローバルなサービス展開に着手できますが、中堅・大手企業の内部で同じ人数がアサインされても同じ展開を望むことは難しい。この欠落したイノベーション力を補うのがベンチャー投資というわけです。出資を通じて、長期的に事業シナジーを生み出し、自社の事業のイノベーションにつなげることを大きな目的としているのです。

事業会社の出資を受ける際に留意すべきこと

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そして、事業会社の立場としての本音を言えば、「破壊への欲求」もあるのではないでしょうか。つまり、自らの事業領域を拡大することというよりも、自らを破壊するつもりでベンチャーへの投資を行うのです。特に、前述した上場して今後の戦略や方向性を見失った会社にとっては、停滞する現状の打開策として、ベンチャー企業に出資するという手段が使われる場合があります。

ここで事業会社が留意すべき点は、以下になります。

  • 過去・現在のビジネスモデルを破壊する覚悟を持つ
  • 未来の事業戦略とドメインを明確に決める
  • 事業会社側は、自力でできない自己革新をベンチャー企業の力を借りて成し遂げようとしているわけです。そこで、出し手である事業会社と、受け手であるベンチャー企業は、破壊と革新の緊張関係を常に意識しながら、事業の発展につなげていく機会が必要になります。

なお、ベンチャー企業が事業会社との協業を推進していくためには、以下の5つの視点を持って、自問自答を繰り返しながらPDCAを回していくことが肝要です。

  • 目的は明確になっているか
  • しっかりとした体制で臨めているか
  • 信頼関係を構築できているか
  • 目標達成までのストーリーを持てているか
  • マーケットサイクルを意識できているか

また、ベンチャー企業としては、大企業の課題と向き合い、彼らにとって何が狙いなのかをきちんと認識することも大事です。気をつけるべきは、大企業のうまい話に乗せられ、いいように使われて疲弊しないことです。そのためには、実現しないプロジェクトを避け、決裁者のコミットメントをもらって、大企業が積極的に推進できるプロジェクトに参加すべきです。要は梯子を外されないように、最初の段階で話を詰めておくということです。

そして、最終的には大企業に勝つために、大企業が攻められない領域、特にニーズが顕在化していなかったり、法制度が未整備だったり、よくいうニッチマーケットだったり、この辺りを攻めて先行者利益を獲得することを狙います。

ベンチャー企業は大企業から見ると蟻のようなものです。大企業に比べ協力者も多いわけではありません。蟻が巨象をどう倒すか?それには巨象に気づかれないよう小さい穴をじわりじわりと掘り続けることです。そして巨象が気づいた時には穴に落として、一気に倒してしまうことができます。

イノベーションのジレンマを好機と捉えて、オープンイノベーションの活用により成長することがベンチャー企業には求められます。

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