沖縄4選挙区の情勢:今回も崩せない?「オール沖縄」の厚い壁

疑惑だらけの前職も。それでも自公は...
批評ドットコム主宰/経済学博士

いよいよ総選挙が始まった。辺野古移設(埋め立て)の反対と容認で対立を続けてきた沖縄県には、全部で4つの小選挙区があるが、前回2017年は4つのうち3つの選挙区でオール沖縄系(辺野古反対)の候補が勝利を収め、自公候補が勝利したのはわずか1選挙区に留まった。前々回2014年も2017年とまったく同じ状況だったが、2012年の総選挙では自公3、オール沖縄1という構成だった。つまり、2014年に自公はオール沖縄に逆転されてしまったのである。

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県知事は「沖縄国王」

これが意味するところはきわめてシンプルだ。沖縄の選挙は現職の知事が属する党派が勝利するのが定石なのだ。自民党の仲井眞弘多氏が知事を務めていた2012年には自公が優勢だったが、2014年に翁長雄志氏が自民党を飛び出してオール沖縄の「顔」となってから自公は負け続けている。沖縄では知事を中心に政局は動く。いってみれば知事は「沖縄国王」で、国民(県民)は国王に靡くようにできているのである。

では、今回の総選挙はどうか。選挙前の世論調査のデータを見るかぎり、国王(現職知事)好きの沖縄の国民性(県民性)は変わりそうもない、というのがとりあえずの結論である。もちろん世論は流動的であり、政治の世界では一寸先は闇、何が起こるかわからない。だが、何も起こらなければ「オール沖縄」が勝利するはずである。

2014年の県知事選・那覇市長選でダブル勝利を祝う翁長雄志氏と城間幹子市長(翁長氏ツイッターより)

とはいえ、2020年の県議会選挙では自公系が躍進した上、過半数を占めていた「オール沖縄」から離脱者が出るなど目下与野党同数となっており、今年行われた那覇市議選においても「オール沖縄」の城間幹子那覇市長を支持する与党会派が、野党である自公系会派に議席数で逆転を許した。おまけに「オール沖縄」を経済界から支援していた金秀グループ(呉屋守将代表)が離脱して、「自民党支持」を打ちだしている。「オール沖縄」は傷だらけなのである。昨今は、「オール沖縄」に好意的な報道を続けてきた地元紙の琉球新報、沖縄タイムスまで、「オール沖縄もいよいよ終わりか」といった内容の記事を掲載するようになっている。

「オール沖縄」の弱体化を生かせない自公

自公にとって追い風ともいえるこうした環境を、本来なら生かせてもよいはずだが、なぜ今回も「自公の敗北」が予想されるのだろうか。これには、各選挙区固有の事情もある(以下候補者名は敬称略)。

まず挙げなければならないのは、沖縄1区(那覇市と一部離島)における「保守分裂」である。この選挙区では従来からふたりの保守系候補がしのぎを削っている。自民党の國場幸之助と保守系無所属(元自民党、民主党、国民民主党)の下地幹郎である。下地は前回の選挙では日本維新の会の公認候補だったが、IR汚職に絡んで維新を除名され、行き場を失ってしまった。今回の選挙では自民党に復党した上での立候補を望んだが、自民県連はこれを却下している。

対する「オール沖縄」の候補は共産党唯一の選挙区選出衆院議員である赤嶺政賢だが、國場と下地による票取り合戦の間隙を突いて、2014年、2017年と連続で当選している。ただし、國場と下地の得票を合算すれば赤嶺の得票を上回るから、県内では「保守統一候補」を求める声が強かったが、今回も保守分裂選挙が確定している。國場が下地に上回るのは可能だが、赤嶺を上回るのは難しい。選挙区で負ければ國場は3連敗となり、前回同様、比例復活に賭けることになる。

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沖縄2区(浦添市、宜野湾市など)は長く社民党元副党首の照屋寛徳の独壇場だった。今回その照屋は引退し、北中城村前村長で新人の新垣邦男が後継候補として指名された。照屋が社民党唯一の選挙区選出議員だったので、同党は総力を挙げて議席の死守に臨んでいる。自民党の宮崎政久も善戦するが、照屋の集票力が新垣にそっくりそのまま移行する可能性が高い。自民党の集票力が5万票から6万票であるのに対して、社民党の集票力は7万票から9万票である。宮崎はこれまで3回連続で照屋に敗北を喫し比例で復活してきたが、今回も同じ轍を踏むのか。なお、沖縄2区には今回、日本維新の会から山川泰博、「NHKと裁判してる党弁護士法72条違反で」から中村幸也も立候補している。

候補者の道交法違反が問題にならない沖縄

沖縄3区(沖縄市、うるま市、名護市など)は、もともと玉城デニー知事の地盤で、玉城が2018年の知事選に出馬したことから空席となった議席をめぐって2019年に補選が行われ、玉城の後継者となった無所属(現在は立憲民主党)の屋良朝博が約7万7千票を獲得して、約5万9千票を集めた元沖縄担当大臣(元参議院議員)の島尻安伊子を下している。今回も同じ顔ぶれで選挙が行われるが、3区における衆院議員時代の玉城の得票は最大9万5千票もあったので、その分が屋良に回れば大勝する。

だが、屋良については、これまで経歴詐称疑惑、不倫疑惑、秘書に対する上納金要求疑惑などが指摘されており、厳しい選挙戦を予想する向きもある。

直近では、屋良と玉城が揃った公示前の10月16日の名護市の街頭演説会で、歩道の点字ブロック上に街宣車を乗り上げたまま演説したことがSNS上で問題になった(道交法違反の疑い)。このとき、注意に来た男性(反オール沖縄らしい)に対して、知事は「私が運転していませんので」と答える一方、運動員に街宣車を移動するよう指示したらしいが、運動員と男性のあいだで言い争いになった。知事は言い争いの様子をスマホで撮影するという謎の行動をとっているが、その模様はYouTubeで公開されている。

大阪では、立憲民主党の尾辻かな子が街宣車を歩道に乗り上げて問題視され、本人自ら「反省している」と謝罪したが、告示前の時点で選挙違反の警告が46件もあるなど(他県では数件)、選挙違反の常態化が深刻な沖縄で、候補者の道交法違反が注目されることはない。もちろん屋良も謝罪していない。

沖縄4区(糸満市、豊見城市、石垣市、宮古島市など)は、現役の復興大臣(沖縄担当兼任)の西銘恒三郎と「オール沖縄」が推す元那覇市議の新人・金城徹との戦いである。西銘は2017年の選挙で当選した自民党唯一の沖縄選挙区選出議員で、沖縄の自民党候補のなかではこれまでも比較的安定した戦いを続けてきた。しかしながら、今回は接戦が予想されている。西銘やや有利との観測は強いが予断は許さない。

自公にとっての「神風」はいつ吹くのか

ネット選挙の行方は(MicroStockHub /iStock)

以上のように、選挙区ごとに見ても前回の選挙と同様、「オール沖縄」が有利な状況に変わりはない。そこで、「自公がなぜ追い風を生かせないのか」という問題意識を持って4選挙区に共通の事情を探ってみると、選挙を戦う組織自体の劣化という問題に突き当たる。企業や創価学会などに依存した選挙運動に限界があるということだ。

今回についていえば、沖縄の主要選挙で学会員の司令塔の役割を果たしてきた遠山清彦衆院議員が、緊急事態宣言下に銀座のクラブで飲食していたことが発覚し、今年2月1日に議員を辞職したことも大きいが、総じていえば、SNSやWEBなどを使った、時代に即した選挙運動がまるでできていないということだ。時代の変化に対応できる組織や人材も貧弱だ。ポスターと幟とお手ふりと選挙カーで戦うから選挙違反も増える。自公は、選挙戦術を早急に見直すべきだが、今回はとても間に合いそうもない。

このまま「オール沖縄」が総選挙で勝利すれば、来年行われる沖縄県知事選でも自公候補が敗北する可能性が高くなる。台湾海峡の「有事」が想定されるなか、政府の安保政策や米軍との連携や協調に消極的な県知事が選ばれれば、県民の生命と財産が危険にさらされるケースもありうる。

今回の選挙でも自公にとっての「神風」は吹きそうもないが、「神風を吹かせて見せよう」という人物が現れるまで、あと何年必要なのだろうか。

批評ドットコム主宰/経済学博士

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