首里城は今も燃えている 〜「焼け太り」狙う沖縄県のモラル

国民の血税どこまで費やすのか?
2021年05月07日 06:00
批評ドットコム主宰/経済学博士
  • 沖縄事情に詳しい篠原章氏が、沖縄県の首里城火災の事後対応を問題視
  • 県は管理責任不問のまま「火災をテコとした沖縄振興予算の延長」画策か
  • 復帰後だけで振興費は約20兆円。「焼け太り」で更なる血税投入に警鐘

2019年10月31日に首里城が焼失してから1年半以上の月日が流れた。沖縄県警と那覇市の消防の調査では「出火原因不明」と結論されている。

これを受けて、玉城デニー沖縄県知事は「再発防止策」を公表することになっているが、最終的には管理責任には触れずに「不可抗力の天災」として決着しそうだ。「不可抗力だから管理責任はない」としたいのだろう。さらに沖縄県は、首里城火災を「カネのなる木」に変えようと画策している。

玉城知事と消失した首里城(政府サイトより)

防災に無頓着な沖縄

だが、「損害額52億8,576万円、焼損面積3,813平方メートル」(那覇市消防局の算定)という大規模火災なのに、「管理責任なし」でまともな再発防止策など立てられるのだろうか。

首里城の電源管理の杜撰さや防災・消火設備の不備についてはすでに再三指摘されているが、そもそも沖縄における防災意識の欠落と防災体制の脆弱さが問題なのだ。防災意識が乏しいから、防災体制が甘くなり、災害が起こってからとってつけたような対応しかできない。これが沖縄県の実情である。

たとえば、令和1年度の那覇市の総合防災訓練を見ると教育委員会や小中学校が除外されており、自治会の参加もわずか5団体である。実質的に消防・警察・自衛隊が主役となる官製訓練だ。

地域の防災活動の要となる自主防災組織(消防団・自治会)の人口カバー率を見ると、沖縄は31.8%と47都道府県中最低である(2019年度)。全国平均は84.1%、下から2番目の北海道は60.5%だから、他地域との差は歴然としている。

消防団の実情はとくにお粗末で、令和元年の沖縄の消防団員数は1,761名、ほぼ人口の等しい滋賀県は8,965名、山口県は12,912名である。この「格差」の理由を那覇市の担当者に訊ねたら、「沖縄は暖かいから火事が少ない。消防団はいらないんです」というマヌケな答えが帰ってきた。

ところが、人口1万人あたりの火災発生件数を見ると、47都道府県中沖縄は24位である(平成30年)。「火事が少ない」など嘘っぱちだ。

焼け落ちた首里城建物(内閣府サイト)

狙いは次期沖縄振興計画

首里城火災の原因の一端が防災意識の欠如と防災体制の不備にあることは明らかだが、沖縄県は管理責任を不問にしたまま「次の段階」に進もうとしている。次の段階とは「首里城火災をテコとした沖縄振興予算の延長」である。

目下、沖縄県は、本年度終了する沖縄振興計画を来年度(2022年度)以降も継続するよう国に要求している。沖縄振興計画とは、1972年の本土復帰を契機に沖縄県に与えられた「(他県にない補助金や優遇税制など財政上の)特別扱い」の法的根拠となる国の計画である。

当初は、本土より遅れたインフラや生活基盤の整備を目的とした計画として県経済や県民生活を大きく改善したが、復帰後半世紀も経ってその経済的基盤は他県に遜色のない水準であるにもかかわらず、沖縄県はさらなる延長(期間10年)を強く求めているのだ。

だが、政府は今のところ色よい返事を控えている。この50年間で13兆円もの国費が沖縄振興に投入されてきたが、その効果の検証が十分行われていないからだ。しかも、これとは別に防衛省が沖縄関係予算を組み、米軍や自衛隊の基地に土地を提供している地主への地代支払いや基地所在自治体のインフラ整備に充ててきた。

総額は復帰後7兆円をくだらない。沖縄振興予算との合計は約20兆円にも達する。20兆円もの特別な補助金を受け取りながら、「まだまだ足りない」と主張する沖縄県の経済実態を、政府は冷静に見極めようとしているのである。

“焼け太り”する沖縄

こうした政府の姿勢に危機感を感じた沖縄県は、とんでもない行動に出た。再発防止策よりも先に『首里城復興基本計画』を大急ぎでとりまとめ(本年3月公表)、この計画を「沖縄振興を継続する根拠」に位置づけようとしているのだ。

同計画には次のように謳われている。

復興基本計画は、沖縄振興特別措置法に基づく沖縄振興計画としての性格を有するとともに、沖縄21世紀ビジョンが示した県民が描く将来像の実現に向け、「基本方向」や「基本施策」等を取りまとめた沖縄21世紀ビジョンの基本計画と連動し、具体的に展開されるものである。

一方、沖縄21世紀ビジョン基本計画は、令和3年度末が終期であることから、現在、新たな沖縄振興計画の策定に向け取り組んでいる。

このため、本復興基本計画は、令和4年(2022年)度を始期とする新たな沖縄振興計画の実施計画において、首里城復元はもとより、首里城に象徴される歴史・文化の観点から沖縄振興を目指す施策のマスタープランとなるものである。

以上、沖縄県『首里城復興基本計画』3頁

要するにこれは、《この10年の沖縄振興計画を方向づけた「沖縄21世紀ビジョン」という県の経済ビジョンが今年度で消費期限を迎える。そこで、次の10年の振興計画を方向づける新しいビジョンとして「首里城火災で傷ついた沖縄県民のアイデンティティを回復するための文化振興計画」を立てたから延長のほうをよろしく》という政府に対するメッセージである。

ご丁寧にもこの計画は「琉球ルネサンス」ともネーミングされているが、何のことはない、「経済振興」という名目にはもう限界が来たから、「ルネサンス」(文化振興)といういかにもなネーミングをつけて補助金獲得の大義名分にしようとしているだけの話である。これではまるで「焼け太りプロジェクト」であり、首里城火災をネタにした詐偽行為に等しい。

沖縄は「こころ」まで失ったのか?

首里城は輝きを取り戻す日が来るのか?(Sean Pavone/iStock)

焼失した首里城正殿などは国有財産だから国が再建することになっている。再建費用は100億円以上である。火災保険で下りる保険金の最高額は70億円だ。その差額は国からの持ち出しとなる。

これとは別に沖縄県は再建に付帯する「事業」をあれこれでっち上げ、あらたな振興計画の中心に位置づけようとしている。

これらの事業が沖縄振興計画に組み込まれれば、経費は国庫(国民の血税)から支出される。しかも10年間も継続するのだ。焼け太りプロジェクト以外の何ものでもない。

首里城火災に対する自分たちの管理責任には頬被りし、これ幸いとばかり火災を補助金継続のために利用しようとする沖縄県にいったいモラルはあるのだろうか。

万一政府がこれを認めたりしたら、首里城は10年後にもう一度燃えるに決まっている。首里城焼失で沖縄県は「こころ」まで失ってしまったのか?

 

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批評ドットコム主宰/経済学博士

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