日本にもある! “宇宙ベンチャー”とは?
宇宙ビックデータで“最適な場所”を探し出す- 日本企業が宇宙産業に本格参入へ。JAXA公認の宇宙ベンチャー「天地人」が注目
- 観測衛星のデータを活用し、最適な土地を見つけられるサービスを展開
- 海外企業にも続々と評価。天地人のような国内の宇宙産業の発展を応援したい
宇宙産業。現在、40兆円産業ともいわれているが、20年後には100兆円産業に拡大するとも予測されている。将来的なビジネス拡大を目論んでいまアメリカやロシアなど海外企業の進出が目立っている。ヴァージン・グループのリチャード・ブランソン氏や、アマゾン創業社ジェフ・ベソス氏のブルー・オリジンなどの有人宇宙旅行への参入で、注目を集めている。日本ではZOZO創業者の前澤友作氏が今年12月にロシアでの宇宙旅行する計画も話題になっているが、日本人が宇宙ビジネスの話題に登場するときは、あくまでも“お客様”側として登場することも多い。
日本では、2016年に宇宙活動法が成立。民間企業の参入を促す土台が作られたものの、日本企業の宇宙産業への本格的な参画はまだまだこれからのようだ。そんな中、すでに宇宙産業に進出している日本のベンチャー企業がある。その一つがJAXAも公認している宇宙ベンチャー「天地人」だ。
宇宙ビックデータで“適地”探し
宇宙ベンチャー「天地人」は、2019年にJAXA職員と農業IoT分野に知見のある開発者が設立。独自の土地評価エンジン「天地人コンパス」では、地球観測衛星のデータを活用し、ビジネスにおいて最適な土地を宇宙から見つけることが出来るというサービスを提供している。依頼企業に宇宙からの視点でソリューションを提供しているのだという。
衛星データというとGPSのような光学衛星の画像がよく知られているが、実はそれ以外にも様々なデータが取得できるという。各土地の降水量や、地形情報の他に、赤外線によって地表面の温度が観測できたり、二酸化炭素の量やメタンなど温室効果ガスの量までわかる。こうした宇宙から俯瞰的にわかるデータのことは「宇宙ビックデータ」と呼ばれている。
同社は、米卸大手の「神明」と、農業ITベンチャーの「笑農和」と協業して、今年「宇宙ビックデータ米」を栽培、年内に発売予定だという。この米の栽培にあたっては、より収穫量の増える圃場や、より美味しく育つ可能性のある圃場を、「天地人コンパス」で割り出した。現在の米栽培では、地球温暖化によって米栽培では高温障害が発生し、外観や味の低下が問題になっている。同社の技術によって栽培に適した立地を探し出し、より適切で効率的な管理方法を実証的に模索しているのだという。
また、同プロジェクトでは、米栽培の工程の中で一番時間と労力を使うという水管理の工程に着目。スマートホンで簡単に水管理が出来る「padith(パディッチ)」シリーズも開発。適正な水温と水量を維持することで、より美味しい米を栽培することができるという。現在、農業就業人口は急減しており、農水省の調査では2020年に136万人と、2015年と比べると約40万人も減っている。農業の担い手が減っていくなか、より少ない人で管理を可能にするための試みだともいえる。
同社は、他にも「キャンプ場の候補地を宇宙から衛生で探すプロジェクト」を、キャンプ場の企画開発運営に取り組むRecamp社とともに行っている。キャンプに向いた気候条件や地表面温度などの諸条件を設定して、より広範囲から適地を探し出すことができるという。例えば「夏の温度は30度以下で、降水量は100~150ミリ」など設定することで、リサーチの精度もあがり、事前の予測によって現地に行く頻度もかなり減らせるのだという。
世界からの評価
宇宙ビジネスの知恵を、世界から集めることに積極的なのはやはり海外のようだ。この土地評価システム「天地人コンパス」は次々と評価されているようだ。先日には、フランス通信大手Orange社がアジアのスタートアップを支援するプログラム「orange fab asia2021」で採択されたばかりだという。
さらに、イギリスの果実栽培企業Bardsley社と、その関連企業で炭素排出量取引のプラットフォームを運営するBx社が募集した「炭素排出量削減に向けて土の健康を維持し、荒廃した土地を再生する事業」という課題に対して提案を行い、日本企業で初めて優勝したばかりだ。
評価されたのは、天地人の衛生データと、複数のデータをかけ合わせ、各土地の気候や土壌にあっていて、さらに炭素を土の中に最も固着する可能性のある植物を提案するソリューションだ。今後はイギリスに限らず、世界中の土地に炭素削減のソリューションとして拡大していくことも可能だともいう。
宇宙産業というと、宇宙旅行のように地球の外に出ていく技術というイメージが大きいが、同社の技術は宇宙から地球を見つめ直し、さらに地球の質を高めることに貢献する。宇宙産業は、遠い未来をみているようで、いま佇んでいる足元を良くしていくような技術でもある。
民間を主体にした宇宙産業は日本ではまだまだこれからだろうが、こうした技術がグローバルに受け入れられていけば、日本も今後、世界的なリーダーシップをとっていけるかもしれない。今後の国内の宇宙産業の発展を応援したいところだ。
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