インフルエンザがこの冬流行?コロナワクチンとインフルワクチン、どちらを打てば?

コロナワクチン3回目と重なる人も…
医学博士、医療ジャーナリスト
  • 感染症学会が、今冬のインフルエンザ流行予測とワクチン推奨をして話題に
  • インフルワクチンとコロナワクチン、接種タイミングが重なったらどうすれば
  • インフルエンザ、現在の国内流行の状況は?高齢者やリスクのある人の備え方
monzenmachi /iStock

日本感染症学会は、今年の冬は新型コロナウイルスに加え、インフルエンザ流行の可能性があり、インフルエンザのワクチンを積極的に推奨するという提言を出し、話題になった(1)。感染症学会は、昨年は、国内ではインフルエンザの流行はほとんど見られなかったが、2020〜2021年にかけて、バングラデシュやインドといった国々で流行が見られ、人の行き来が活発になると、日本でも広がる可能性があるとしている。これをふまえて、例年通り、生後6ヶ月以上の全ての人、とりわけ以下の人たちに積極的にインフルエンザワクチン接種を推奨している。

  • 6か月以上5歳未満
  • 65歳以上(50歳以上とするものもある)
  • 慢性呼吸器疾患(気管支喘息やCOPDなど)
  • 心血管疾患(高血圧単独を除く)
  • 慢性腎・肝・血液・代謝(糖尿病など)疾患
  • 神経筋疾患(運動麻痺、痙攣、嚥下障害を含む)
  • 免疫抑制状態(HIVや薬剤によるものを含む)
  • 妊婦
  • 長期療養施設の入所者
  • 著しい肥満
  • アスピリンの長期投与を受けている者
  • 担がん患者

インフルエンザワクチンと新型コロナワクチン、どう打てばいい?

インフルエンザワクチンは生後6か月以上の全ての人に推奨されているが、上のリストを見ると、積極的に勧められる人として、高齢者、免疫不全者、妊婦、肥満、担癌患者などが挙げられているが、こういった人は新型コロナウイルスに対してもリスクが高く、接種の必要性が高い。また、政府は、10月29日に、新型コロナウイルスワクチンの3回目の接種に関して、2回目接種から8ヶ月が経過した人であれば接種順位はつけず、12月から開始するという発表をした。

早めに接種が終わった医療従事者、高齢者、基礎疾患のある人などは、インフルエンザワクチンと3回目のコロナワクチンの接種タイミングが重なる人もいるかもしれない。

では、どう打てばいいのかは、関心を持っている人も多いのではないか。

現状、日本では、新型コロナウイルスワクチンと他の接種間隔は前後13日以上空ける必要があり(2)、今からインフルエンザワクチンを受ける人は、新型コロナウイルスワクチン接種が終わって2週間経過していれば受けられる。また、インフルエンザワクチンが終わって2週間後に新型コロナウイルスワクチンを受けることが可能だ。

だが、アメリカのCDCは、両者は同時に接種が可能だとしている(3)。WHOは、当初、エビデンス不十分として、2週間の間隔を開けることを推奨していたが、10月21日に、同時接種の安全性やワクチン効果に関するエビデンスは現状限られてはいるものの、有害事象が増えたというエビデンスはなく、利便性や両者の接種率を高めるメリットを考慮すると、同時に行ってもよいという提言を出した(4)

これを踏まえて、今後日本でも、同時接種が可能になる可能性は十分あるだろう。また、国内でも、手違いで、2週間経過せずに打ってしまうケースがあるかもしれないが、そのようなことが起こっても、現状では、有害事象のリスクが上がるわけではないといわれているので不安になる必要はないだろう。

なお、インフルエンザワクチンは、12歳以下は2回接種、13歳以上は1回接種が原則だ。

インフルワクチンは、昨年より2割減の見込み

現在、開業医などでは、インフルエンザワクチンの供給が少なく、幼児以外の比較的年齢の高い子どもや、成人が予約できない事態が相次いでいる。

厚生労働省によると、例年に比べて特に少ないというわけではないが、製造効率などがよかった昨年と比較すると、2割ほど減る見込みとのことで、11月頃から徐々に供給は増えていくようだ。昨年は、新型コロナウイルスが流行し、医療負荷を減らす観点から、インフルエンザワクチンの接種も奨励された。そのためか、昨年は、もともと接種率があまり高くはない例年に比べて、使用量は増えている。今年も、インフルエンザワクチン接種希望者が昨年と同程度いるとすると、相対的にワクチンは不足するかもしれない。

インフルエンザワクチン供給量と使用量

グラフは厚生労働省作成。「3価」「4価」は摂取するインフル株の違い

インフルエンザ、現在の国内流行の状況は? 

現在のところ、国立感染症研究所の作成したグラフを見ても、まだ流行はしていないが(赤く太いラインが今年、明るい水色のラインが昨年)、例年通りでは、年末から年明けが流行のピークとなることが多く、今後の動向が気になるところだ。

インフルエンザの流行状況(定点あたり報告数)の過去十年間の比較

国立感染症研究所作成

また、一足早く冬を終えた南半球の先進国、例えばオーストラリアのインフルエンザ流行状況がどうだったかというと、2021年の感染者は非常に低い状態にとどまったと報告されている(5)

また、北半球のアメリカやイギリスでも、現在のところはインフルエンザの爆発的な流行は見られていないようだ(6,7)

現在日本では、新型コロナウイルス感染者数も落ち着き、インフルエンザの流行も始まっていないが、これから人の行き来も増えると、いずれも感染者が増える可能性はあり、マスクや手洗いなどの感染対策を引き続き行うようにしたい。

高齢者やリスクの高い人は、肺炎球菌ワクチンも重要

65歳以上の高齢者や基礎疾患のある人において、特に注意しなければならないのが、インフルエンザ感染に、肺炎球菌による肺炎が合併して重症化しやすいことだ。こういった人たちには、肺炎球菌ワクチンの接種も推奨される。肺炎球菌ワクチンは、医師の判断により、インフルエンザのワクチンと同時に接種することが可能だ。当てはまる人は、ぜび検討して欲しい。

(参考文献)
(1)https://www.kansensho.or.jp/modules/guidelines/index.php?content_id=44
(2)https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/0037.html
(3)https://www.cdc.gov/vaccines/covid-19/clinical-considerations/covid-19-vaccines-us.html
(4)https://www.who.int/publications/i/item/WHO-2019-nCoV-vaccines-SAGE_recommendation-coadministration-influenza-vaccines
(5)https://www1.health.gov.au/internet/main/publishing.nsf/Content/cda-surveil-ozflu-flucurr.htm
(6)https://www.cdc.gov/flu/weekly/index.htm?web=1&wdLOR=c04D0574D-1146-444C-8899-D9425A127903
(7)https://www.gov.uk/government/statistics/national-flu-and-covid-19-surveillance-reports-2021-to-2022-season

 
医学博士、医療ジャーナリスト

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