衆院選「世代交代」「維新・れいわ躍進」はロスジェネ中核化の兆しか?
野党支持層も若返りか衆院選から一夜明けてさまざまな得票分析が出ている。自民が議席を減らしたのに、立憲民主党が後退し、維新が「一人勝ち」とも言える躍進を見せた要因について「与党の右傾化・野党の左傾化で中道が空いた」(大濱崎卓真氏、ヤフーニュース個人)、「野党連携の誤算 — 国民の「左派警戒感」が露わとなった」(篠原章氏、批評.COM)といった論考が出てきたように、「中道改革」へのニーズが顕在化したという指摘がある。
このうち「与党の右傾化」については高市早苗氏のプレゼンスを過度に評価しすぎで少し疑念があるものの、「消滅する」とまで言われた国民民主党がむしろ議席を増やしたことも考えると、マクロな流れとしては筆者も確かに感じた。一方で、衆院選初挑戦で3人の当選者を出したれいわ新選組については「中道」と言い難く、なんらか補足する必要があるのではないか。

「ロスジェネが影響力増した」説
山本太郎代表は相変わらず過激だ。今回の選挙も消費税廃止や原発即時禁止、奨学金チャラなどを掲げた。それでも歴史のある社民党が高齢化で衰退著しいとはいえ議席が1人にとどまったことを考えると、れいわが著名人である山本氏以外にも当選者を出した要因は過小評価できまい。
れいわは今回、比例ブロックで東京、南関東、近畿と都市部で当選者を出した。山本氏が比例単独で立候補した東京では36万票を獲得。これは参議院の東京選挙区の当選目安(50万票)にこそ届かないが、今回の衆院選全体で8人から11人に議席を増やした国民民主党を、6万票も上回っている。近畿でもれいわは国民とほぼ互角の29万票を集めており、都市部に限っては着実に存在感を上げた。
今回の選挙結果は自民や立民で大物前職が相次いで落選する世代交代も特徴的だったが、維新とれいわの躍進について、筆者旧知の左派活動家氏がSNSで「団塊世代の影響力が弱まり、ロスジェネが影響力を増したのでは」との見方を示していて、筆者も一程度当たっている印象がある。
実際にどうなのか。報道各社の投票当日の出口調査を見ると、まず全体的な傾向としては「若者は自民、高齢者は自民や立民」という傾向があった。朝日の調査で10代と20代は4割を超える人たちが自民党を支持し、政党別ではトップ。自民党支持層は他の世代でも、概ね3割台のトップをキープしてし、立民は60代、70代の支持層がともに24%と2番目のおおく、「立憲は高齢者頼み」’(朝日)という構造がまずあった。
そして本題のロスジェネはどうだったのか。90年代〜00年代前半の就職氷河期を過ごした世代はちょうど今回の40代にほぼ集約すると考えてみると、前述の朝日調査では40代では、自民の35%に次いで、維新が立民と並ぶ17%の支持を集めた。共同通信の調査でも維新は40代の12%の支持を集めており、20代(5.9%)、70歳以上(6.9%)より高めの傾向があった。
れいわについては朝日や共同の調査結果の記事では「その他」に集約されてしまったため、かなり不満なのだが、手がかりはある。参院選の時の朝日の出口調査では、れいわの世代別支持率は「40代が29%で最も多く、40代以下を合わせると6割を占めた。50代以上の支持層が8割近くを占める共産や社民とは対照的に、若い世代が支えていた」という結果があったことから、今回も同様の傾向があったと推測できそうだ。
社会保障、雇用で既存政党と差異

政策面では、維新がマニフェストで「目先の利益優先 VS 子ども・将来世代への投資」と争点を仕掛け、次世代重視を掲げれば、れいわに至ってはロスジェネへのピンポイントを隠さず、「安定雇用1000万人!ロスジェネに安定を」をぶち上げた。年金を中心に現役世代の負担となっている社会保障の改革についても、高齢者の支持層を意識する自民や立民が今回の選挙であまり前面に出さない印象があった中で、維新はベーシックインカム導入による社会保障制度改革を打ち出し、れいわは国費投入による社会保障負担軽減を掲げる。
字面は異なるが、ベーシックインカムについて、れいわ支持層が「弱者切り捨て」と批判しがちなものの、れいわ自体は公式サイトで「既存の社会保障制度での受益を損なわないことを前提に導入できるかどうか、慎重に検討を行う」との見解を示しており、否定的ではない。要は「社会保障制度の改革」先送りへの不満・不信を感じている、ロスジェネのニーズには応えようとしている姿勢は一致している。
他方、雇用政策については真逆だ。維新は労働市場改革を掲げており、「解雇ルールを明確化するとともに、解雇紛争の金銭解決を可能にするなど労働契約の終了に関する規制改革を行い、労働市場の流動化・活性化を促進」の立場だ。れいわはこの点、「不安定雇用を生む、派遣法制等の見直しで雇用の流動化を阻止」を強く主張している。

しかし、維新もれいわも、現在の正社員と派遣の格差をこのままでいいとは全く思っていない点では共通しており、手法や観点の違いと言える。れいわは、大手企業の正社員の権利を擁護する労組組織との関係がある立民や国民とは、ここで立ち位置が異なるともいえる。特に立民とは選挙で共闘関係ではあっても、雇用政策への支持層のニーズにおいて互いに利益相反する側面がある。
立民の左傾化に親和性のあった団塊世代はあと数年で後期高齢者に差し掛かる。体力の低下や病気などで投票所に行けない人も増えてくる一方で、ロスジェネたちが50代となり、社会のさまざまな組織で意思決定層になった時、政治へのニーズが着実に変わるのは間違いあるまい。果たして今回の選挙結果はその兆しなのだろうか。
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