どこまで上がる?首都圏マンション価格、坪360万円超の衝撃

専門家も予想外、まだ上がるか?弾けるか?
住宅・不動産ライター/宅地建物取引士
  • 専門家も予想外の首都圏マンション価格高騰の今後を占う
  • 在庫件数が増加していけば価格下落しそうだが、筆者がそう思わない理由
  • 住宅市場動向を考える上で重要な東京の人口は減少するのか、それとも…

11月1日に東京カンテイ(東京都品川区)が公表したデータ「新築・中古マンションの市場動向」によると、2021年7月~9月の首都圏新築マンションの坪単価が前期比でプラス8.9%の360.6万円に上昇したという。90年代バブル期の最高価格が約320万円なので、現在の価格は当時よりも坪当たり40万円も値上がりしたことになる。

新築マンション価格はバブル後も調整局面を繰り返しながらも緩やかに上昇してきた。しかし、コロナ禍の最中にここまで上がるとは専門家も予想していなかっただろう。

CHUNYIP WONG /iStock

右肩上がりを続ける東京のマンション価格

公益財団法人 東日本不動産流通機構のデータによると、今年9月度に首都圏で売買された中古マンションの価格(成約㎡単価)は1都3県ともに前年同月比で10%以上、上昇している。特に東京では、成約㎡単価が17か月連続で前年同月を上回り、今年3月以降は7か月連続で前年同月比10%を超える上昇率となっている。

今後この状況がどうなっていくかは未知数だが、少し市況が変化する兆しが出てきている。先述した同機構のデータによると、実際に売買されたマンションの成約件数が減り始めているのだ。

東京では今年6月から成約件数が減少に転じ、9月度まで4か月連続で前月比を下回った。当初は在庫不足による成約数の落ち込みかと考えられていたが、今年8月以降は在庫数も徐々に増え始めてきているのだ。現在のところ、在庫数は前年比でマイナスの状況が続いているが、その割合は少しづつ縮まってきている。

参考:(公社) 全国宅地建物取引業協会連合会「不動産総合研究所不動産市場動向データ集
中古マンション成約件数/成約単価 推移(首都圏)

もしこのまま在庫件数が増加していけば、いずれは市場の調整局面が訪れることになるかもしれない。つまり価格の下落だ。

大幅下落は起こらない?

今後、首都圏のマンション在庫が増えていったとしても、大幅な下落はあまり期待しないほうがいいかもしれない。

全国宅地建物取引業協会連合会が調査したデータによると、首都圏の中古マンション価格は2002年から約20年もの間、緩やかに上昇を続けている。

在庫件数が増えることで市場が供給過多になれば、マンション価格は一時的に下落に転じるだろう。しかし、現在のマンション価格高はバブル期のようにわずか数年で価格が倍になるような上昇ではない。先述したように約20年もの間、ゆっくりと上昇を続けてきた結果なので、バブル崩壊時のような急激な下落は考えにくい。

たしかに、コロナ禍によって住宅ニーズが高まり、在庫が減り続け、住宅価格がこの1年ほどで約10%という急激な上昇を見せたのは間違いないが、逆に言えばそれは実需に伴う市場の正常な反応だ。在庫がこれまで通りの水準に戻るなら、市場もそれに反応し価格的な調整局面(下落)に入るのも正常な反応だといえるだろう。

Fumie Murakami /iStock

もう一つのシナリオ

今後の住宅市場の動向について、考えておかなければならないシナリオがもう一つある。

マスコミはコロナ禍の功罪として、地方移住の促進や東京一極集中の是正を主張して止まない。たしかに東京の人口は今年に入ってから減少を続け、10月1日現在、前年同月比で約3万6000人のマイナスとなっている。コロナによって東京から人口が流出し、一極集中に歯止めがかかるのではと一部で期待が大きいのも理解はできる。

しかし、現在の東京の人口減少についてその内訳を分析すると、コロナ後に東京の人口はまた増加に転じると考えざるを得ない。東京都が公表している人口推計のデータによると、今年の9月中に他県から東京へ転入したのは25,047人で、転出者は29,550人となっている。たしかに人の流れが「他県から東京へ」ではなく「東京から他県へ」となっているのが分かる。

しかし、コロナ禍前、令和元年9月中のデータを見ると、転入者は35,500人、転出者は27,500人となっている。これは、月ベースで転入者が1万人も急減し、転出者は2,000人だけしか増えていないということだ。

つまり、コロナ禍の影響を受けて転出者が急増し東京の人口が減ったのではなく、転入者が激減したことで東京の人口は減少しているのだ。

kardan_adam /iStock

東京の人口再増加で住宅需要増

10月1日、緊急事態宣言が全国的に解除された。また、各地の感染者数も激減している。仮に今後も感染者が急増することが無かった場合、人の移動は必ず活発になるだろう。その時、コロナ禍でさえも激増しなかった東京からの転出者がこれ以上増え続けるとは考えにくい。むしろ、感染拡大が収まった東京への転入者が増加する可能性のほうが遥かに高いだろう。

考えておかなければならないもう一つのシナリオとは、コロナ後に東京の人口が増加することによる住宅需要の高まりである。仮に住宅需要が増加することになれば、東京のマンション価格はこのまま高止まりすることになるかもしれない。

さらに、中国の不動産バブルが本当に崩壊すれば、割安といわれる日本の不動産を中国国内の投資家が買いに入るのも想像に難くない。このシナリオの場合、東京のマンション価格は、高止まりどころか更に上昇基調へ転じる可能性もある。

マンション市場に変化が現れるとすれば、年末から新年度にかけての時期ではないかと筆者はみている。東京のコロナ感染者数が感染拡大の目安となったように、東京の人口増減こそが今後のマンション価格動向を左右する目安になるだろう。

東京の人口が増加に転じ、住宅需要が今よりも高まり、中国国内の投資家が首都圏のマンションを大量に購入するような事態が起こった場合、果たして東京のマンション価格はどこまで上がってしまうのだろうか。

 
住宅・不動産ライター/宅地建物取引士

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