北京の日本人学校は「時限爆弾」、嫌がらせ電話の発端となった中国「フェイク記事」とは?

暗躍する反日ブログ「日本人の凶悪な野望を明らかに」
ライター
  • 北京の日本人学校に嫌がらせ電話が相次ぐ。原因は「反日ブログ」
  • 「突撃検査を行うべき」。煽られたユーザーが突発的に“電凸”実行か
  • 中国では言論統制をしているが、反日的な言論は放任される傾向

中国・北京の日本人学校に嫌がらせとみられる電話が相次いでいることが4日分かり、日本大使館が中国の公安部・外交部に「邦人保護と、子供の安全確保のための適切な措置を取るよう要請した。

嫌がらせ電話の原因は、中国のインターネット上で出回っている文章で、日本人学校の数が多いことなどを問題視している。

北京日本人学校の公式サイトより

10月28日に発表されたブログのタイトルは「35カ所の日本人学校を突撃検査!日本人の陰謀を明らかにしよう 凶悪な野望を防ぐべし」というもの。ブログは、

「日本は巨費を投じて我が国の都市部に35カ所の純日本式学校を設立している。日本人学校のシステムは想像を絶するもので、日本人の陰謀を隠蔽しているようだ」

との文言から始まり、日本人専用の閉鎖空間であると説明。

「授業内容も不明で、学校内に社会に危害を及ぼすものがあっても、我々は知り得ない」

として、こう続けた。

「みなさんにアンケートです。日本人学校に『突撃検査』を行うことを、支持しますか?支持する場合は、コメント欄に『支持』の二文字を記入してください。日本人の凶悪な野望を明らかにしなくてはいけません」

「日本人学校は時限爆弾」

さらに

「我が国の領土に作られた日本の学校と言える」

「軍事的な管理と訓練が行われているとの推測もある」

とも指摘。外部からは知り得ない恐ろしいことが行われているのではないかと言わんばかりである。

文章はここで、1931年の満州事変の経緯を説明。日本人が現地に早くから入り込み、内部から中国軍を瓦解させたと解説した。

「日本人学校は(満州事変の時と同様に)、本来の目的を隠した日本の常套手段かもしれない」

「日本の考えを知るための方法として、最短で確実なのは突撃検査を実施することだ。さもないと、日本人学校は我が国の領土に置かれた極めて危険な時限爆弾になる。根こそぎ排除することが望ましい

文末では、高齢化社会の日本は中国に向けて、「この5年間で数十万人の高齢者が移民している」と説明。日本経済の負担を減らそうとしていると解説した。

北京日本人学校(百度地図より)

だが、「日本から中国へ5年間で数十万人の高齢者が移民」は事実ではない。また、「中国には35カ所もの日本人学校が存在する」との記述も事実ではない。文科省が認定する在外教育施設の一覧を見ると、中国国内に存在する日本人学校は10校に過ぎない(香港を含めると12校。上海日本人学校浦東校と高等部は校舎を共有しているため、合わせて1校として計算)。

ブログのコメント欄には「これは決して看過できない」「なぜ我が国の領土に日本人学校などあるのだ」などの書き込みとともに、「支持」の文字が殺到。同様のブログは多数転載され、拡散した。「突撃検査」が何を意味しているかは書かれていないが、こうした書き込みを見たネットユーザーの一部が、突発的に“電凸”を仕掛けた可能性がありそうだ。

中国では自国の政府批判ができないなど厳しい言論統制がある一方、日本に対する“反日的”な言論や行動であれば、たとえフェイクニュースであっても放任される傾向がある。今回の文章がどのような経緯で発表されたのかは不明だが、中国と関わる上では、さまざまなリスクがあることは知っておく必要がありそうだ。

 

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