与野党両候補に早くもスキャンダル!悲劇の韓国大統領選が始まった

どちらが勝ちそうか?日韓関係はどうなる?
早稲田大学名誉教授
  • 韓国大統領選で候補者が出揃う。野党は尹錫悦氏、左派与党は李在明氏
  • 2人とも、韓国社会と政界から疎外された経歴。ともにスキャンダル
  • どちらの候補が勝つ見通しか?日韓関係はどうなる?

韓流「大統領選挙」が始まった。与野党の大統領候補者が出そろったが、野党の尹錫悦(ユン・ソクヨル)候補に当選する勢いがある。大陸国家に先祖帰りするか、海洋国家に残るか。韓国は歴史の重大な岐路にある。

尹錫悦氏(Facebookより)

入党たった3か月で大統領候補に

野党「国民の力」は5日に、大統領候補に前検事総長の尹錫悦氏を選出した。尹氏は、7月30日に入党した人物だ。それが3ヶ月で大統領候補になったのは、いったいなぜか。

保守野党の大統領経験者は、政権時代の学生運動への弾圧や光州事件の責任、巨額の収賄事件で逮捕されてきた。現在の野党政治家は金持ちばかりで、国民のために権力と対決して、牢屋に入る覚悟のない政治家集団と化している。

大統領予備選挙で敗北した洪準杓(ホン・ジュンピョ)氏は、長年の汚れたイメージを刷新できなかった。野党は「洪氏では政権交代できない」と考え、入党したばかりの尹錫悦氏を大統領候補に据えた。国を憂える人々には、政権交代できなければ、韓国は北朝鮮に飲み込まれ「亡国」の事態を迎えるとの危機感がある。

李在明氏(Facebookより)

一方、左翼与党も同じ事情を抱えていた。大統領候補の李在明(イ・ジェミョン)前京畿道知事は、与党の反主流派だった。李氏は貧しい家庭の出で、小学校を出て工場労働者となったのち、検定試験で中高卒の資格を得て、奨学金で中央大学法学部に入った。頭がよく大衆の意向を瞬時に嗅ぎ取り、世論操作に長けている。

大統領候補者はいずれも「ハジパイ」

2人とも、韓国社会と政界から疎外された、麻雀用語で言えば「ハジパイ」だ。

与党候補の李氏は、名門大学の出身でもなく貧しい生い立ちだ。左翼与党の政治家を揶揄する「新興貴族」の言葉も生まれる中では異色の候補と言える。韓国社会でソウル大卒の肩書は、日本における東京大学も比較にならない威光があり、李氏のように小卒で中央大学出身弁護士では、相手にされない。

しかも李氏には、城南市長時代の大型不動産スキャンダルがある。城南市の都市開発公社が開発を請け負った企業に不正に180億円以上の配当金を支払い、別の資産管理会社に対しても40億円以上の不正支払いの疑惑が捜査され、すでにかつての側近が逮捕されている。この資金の一部が、李在明氏に回されたとの疑惑が広がり、支持率は激減した。

一方、尹氏も「全斗煥元大統領は、クーデターと光州事件を除けば、功績はあった」との発言で、国民の反発を買い支持率が急落した。尹氏個人の金銭疑惑はないが、夫人のスキャンダルが捏造されている。

こうした疑惑のある2人を大統領候補にせざるを得ない政治家不信が、韓国の悲劇である。

特定の意図が見え隠れするコメンテーター発言

尹氏が大統領候補に選出された5日夜の討論番組で、日本のBSテレビ番組は韓国人教授に発言させたが、多くが左派の李在明氏を支持する意向がミエミエで、その方向に視聴者を誘導しようとした。韓国人教授の多くは、意図的な発言が多いので「どちらの支持者か」を見極めて意見を聞いてほしい。日本の朝鮮半島政策は、昔から帰化人や亡命韓国人、在日コリアンに動かされ失敗してきた事実を忘れてはならない。

恵泉女学園大学の教授は「尹候補は、9年間も司法試験浪人した。家庭が裕福だからできた」とやや悪意あるコメントをした。実際は尹氏がソウル大学の光州事件模擬法廷の検事役で「全斗煥大統領死刑」を求刑したため、合格成績なのに9回も司法試験で落とされたのが理由だが、「めげない信念」の人とは語らないところに特定の意図を感じざるを得ない。

次期大統領の選択が韓国の命運を分ける

韓国大統領府「青瓦台」、次に入るのは誰か?(SUNG YOON JO /iStock)

大統領選挙は、野党の尹錫悦氏の勝利は間違いない。直近の世論調査では「野党候補が勝つと思う、政権交代が望ましい」との答えが58%にも達した。世論調査に、本心を明かさない韓国人は多い。「どちらの候補が勝つか」との質問には、「野党候補が勝ち、世間交代が起きるという人が多い」と言える状況があるからこそ本心を語るので、この結果は国民の多くが政権交代を望んでいるのだと判断できる。

韓国は、古代から中国に何度も攻め込まれ、その影響を受けた。中国の影響を脱したのは日本の支配時代と、戦後のおよそ50年間、日米との関係を維持し「海洋国家」として、発展した。一方北朝鮮は、中国の影響下に置かれる「大陸国家」として発展に失敗し、自由と人権を否定した。北朝鮮は、米中関係改善をはじめ何度となく中国に裏切られ、圧力を受けた経験から「中国は信用できない」と考えている。

朴槿惠政権と文在寅政権は、北朝鮮の失敗に学ばず「大陸国家」に憧れた。背景には、韓国経済の中国依存の高まりがあるが、民主主義はかなり弱体だ。次期大統領が「海洋国家」と「大陸国家」、どちらを選ぶかが、韓国の命運を分けることになるだろう。李在明が勝てば、中国と北朝鮮に忖度し、日韓関係は悪化する。尹錫悦は、日韓関係を改善し米韓同盟を強化するとみられる。

「林芳正外相」に期待をかける韓国

では日韓関係はどうなるのか。日本の衆院選挙は、自民党が261議席を獲得し、事実上勝利した。この選挙結果の意味を、韓国記者はほとんど解説できなかった。自民党の大幅議席減と野党躍進を期待していたから、「勝者は強硬右翼の維新」(中央日報)との記事を書いた。

韓国のメディアは、「日本の保守」との表現をあまり使わない。自分たちの期待と主張に反する相手を、「右翼」と表現するため、日本政治の正確な分析ができない。「右翼」と書くと読者は「反韓人士、集団」と納得する。韓国社会がイメージするのは、「戦前の右翼」で、植民地化を推進し、韓国差別の人々と考える。

林芳正氏(官邸HP)

日韓関係悪化の原因と責任は文在寅大統領にあるが、韓国の新聞も日本のメデイアもはっきり言わない。関係悪化の原因が、元徴用工と元慰安婦に対する判決だとは書くが、「文在寅大統領が最高裁人事を動かしてまで、自らの意向に沿った判決を出させた」と明確に言わないのだ。

日本政府は文在寅大統領の責任だと理解し、「韓国政府が解決すべき」との正しい対応を維持する。韓国メディアは林芳正外相の誕生を「知韓派政治家」として期待をかけるが(参照:ハンギョレ)、林外相は岸田文雄首相が外相時代にまとめた「慰安婦基金」を解散させた文在寅政権を相手にできない。4ヶ月後の新大統領誕生を待つ意向で、外交原則を曲げるつもりはない。

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