ニューヨーク次期市長、早くも地域通貨「NYCコイン」をローンチ!

テキサス州オースティンも計画。2年以内に全米の先進都市導入も
  • NYのアダムズ次期市長が当選から8日で早くも独自通貨「NYC」発行宣言
  • スピーディーな実現の背景に、マイアミ市のコインと同じシステムを使用
  • 市民もマイニング参加で利益。オースティンなど他都市にも広がる動き

「ウェブ3.0の中心地へようこそ!」次期ニューヨーク市長に当選したエリック・アダムス氏は9日、ツイッターで高らかに宣言した。

先日の記事でも報じた通り、アダムス氏はニューヨークを「ウェブ3.0」の中心地にすべく、マイアミ市のスアレス市長が今年8月にはじめて成功しているマイアミコインに倣い、ニューヨークでも独自の仮想通貨を発行すると宣言している。

当選後わずか8日で始動

新市長の4年間の正式な任期は、来年の2022年1月1日から始まるようだが、プロジェクトは就任前から早くも動き出している。「NYCコイン」という名で、早速11月10日からローンチを開始。同日から市民がマイニングを始められるというのだ。

2日の当選から、新しい地域通貨の発行まで1週間あまり。しかも就任前に、という驚くばかりの早い展開。日本であれば、この手のアイデアを新市長が発表したとしても、早くて半年後、実行は来年度からという、スケジュール感が普通だろう。ましてや地域の仮想通貨の発行など、日本ならば首長が宣言したところで、何年たっても実現出来ないものだ。さすがの世界の中心、ニューヨーク。決断も早ければ、実行も早い。ビジネスばかりでなく、政治家の動きもとにかく早い街のようだ。

新しい通貨の歴史がここで始まろうとしている(AndreyKrav/istock)

ニューヨーク市の取り組みがここまで早いのも、使うシステムがマイアミ市と同じものを使うからのようだ。その仕組みの名前は、シティコイン(Citycoins)。地域(地方自治体)を応援・支援するための分散化トークンプロジェクトである。市民が自分の手持ちのパソコンでソフトを実行し、採掘(マイニング)に参加すれば、70%が参加した市民に、30%が市の利益となる。ニューヨーク市では、生成した仮想通貨をいつでもドルに交換してくれることになるのだという。

市民も、市側も、錬金術のような不労所得を得られる仕組みである。嘘のような本当の話で、事実、マイアミ市は、8月に始めたこの仕組みで、10分ごとに2000ドル(約22万円)の税外収入を得ているという。これを単純計算すれば、1日で3000万円以上、1年なら100億円を超える税外収入になっていることになる。初期の仮想通貨がそうであったように、民間だけで同じことを行えば、詐欺扱いされてもおかしくないが、自治体とともに正式に運営しているともなると、その位置づけは必然的に変わってくる。

全米、そして世界の都市でも…

bubaone /iStock

8月のマイアミコインに続き、ニューヨークシティコインは第2弾になる。さらにこの試みにテキサス州オースティン市が追随することも決まっていることがシティコインの公式サイトで発表されている。シティコインの仕組みを作ったパトリック・スタンレー氏は、「アメリカ国内の、全てのスタートアップ(を支援する)都市は2年以内に自治体独自のシティコインを持つことになります」と米メディアStatescoopに語っている。同氏は今後の他の都市への拡大に確信を持っているようだ。

世界の情報発信基地ニューヨークで大成功すれば、オースティンのようなアメリカの都市にとどまらず、世界中の都市にも一気に広がるかもしれない。シティコインは、自治体の許可を得なくても、どこでも実現可能な仕組みであるという。もともと仮想通貨は、国家が独占的に持つ通貨発行権を脅かす存在として、国家から睨まれる存在であったわけだが、こうやって地方自治体が公的な存在としてその価値を認めだすと、その立ち位置は今後どう変わっていくのだろうか?

仮想通貨のようなブロックチェーンを元にした自律分散型の仕組みは、ある意味、自立した都市と、相性が良いようにも思える。日本のように、中央政府の権限が強い中央集権型の国が、こうしたイノベーションが世界で起きた時に、波に乗っていけるのだろうか。マイアミやニューヨークの様な国際都市のスピード感に驚きながらも、日本が世界の変化についていけるのかという一抹の不安もよぎらないわけではない。

 

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