生産緑地「2022年問題」のウラ側面…通勤ラッシュに苦しむサラリーマンに朗報説
業者に不都合でも、規制開放で都内に家を持つ“チャンス”- 2022年に都市部の「生産緑地」指定解除。俗に「2022年問題」と言われるが…?
- 地主や不動産業者には都合が悪いことだが、宅地が増えれば家を買うチャンスも
- 「生産緑地」指定は地主優遇の法規制。住民にとって住みやすい都市づくりに
霜月を迎え2021年もあと2ヶ月をきった。来年の2022年はどんな年になるのだろうか?ここ2年間のコロナ禍に関しては、起こる以前にはほとんど予想がつかなかったが、2022年、来年の予測に関しては今からわかっていることがひとつある。それは、東京・大阪・名古屋など三大都市圏に集中して存在している市街化地域における「生産緑地」指定された農地の8割が2022年に指定解除になることだ。
都心の中で、農地以外の転用を禁じられていた土地が解除されるのである。都会なのに大きな畑があると驚くことがあるが、それはたいていの場合、この生産緑地なのである。指定されているうちは、地主が負担する固定資産税も相続税も格安で済むのだ。

来年(2022年)到来する“問題”とは?
全国の生産緑地指定地は1万2324㌶。都内の生産緑地は、東京ドーム約800個分にも及ぶともいわれている。存在する生産農地のうち、8割が2022年に生産緑地の指定解除となるという。東京都内ではおもに、生産緑地は練馬区(187ヘクタール)、世田谷区(91ヘクタール)などが多い。いずれも、住宅地として人気のあるエリアだ。仮に全ての緑地が宅地化すれば25万戸分もあるという。
これらのことは、かねてから「2022年問題」として危惧されてきた。ただし“問題”だと言っていたのは、おもに地主と、不動産業者である。
地主にとっては、緑地指定を外されてしまうと、今までと同じようにはできなくなる。一般の土地と同じように、固定資産税や、相続税を払わなければならなくなる。都心の広い土地は税金も高いので、そのままにしておくと税金が払えない。地主は固定資産税を払うために売却するか、アパートなどに転用し収益事業を行う必要がでてくる。
不動産業者が危惧してきたのは、大量に宅地転用されて供給が増えて、地価が下がることだ。今の高騰する都心の不動産価格を維持できなくなってしまうのではないかという懸念だ。
政府は、2022年問題に関するこれらの懸念の声をうけて、2017年に法改正を行った。そして、地主が望むなら10年ごとに延長することを可能にする法改正を行ったのだ。要するに先送りである。結果、8割近くの地主が生産緑地としての存続を希望した。
通勤族には“問題”ではなく“チャンス”

この2022年問題で重視されたのは、固定資産税の優遇を受けたい地主や、地価を高止まりさせたい不動産業者の声ばかりだった。不在だったのは、都内に家を持ちたい“潜在的”な住民の声だ。立場が変われば見方は全く変わる。
都心で働く一般の人々からしたら、都心の土地が放出されることは、これまで無理だった一軒家を買うチャンスが増える。今年の「住みたい街ランキング」(関東)の自治体別上位には港区や世田谷区をはじめ上位10位はいずれも23区内。不動産価格が低下することは、当然ながら、不動産会社にとっては不都合だろうが、“買う側”からすれば、都内に家が買えることも、安く買えることも、うれしいことだ。
東京は特に、世界でも有数の不動産価格が高いことで知られているが、こうした地主優遇策が特権として守られてきたことで、供給が足りず、土地は高騰してきた面はある。本来の市場原理が機能していたならば、住める場所であったはずなのに、法規制によって住める土地が限定されているために、庶民の手の届かない価格になってしまっているのだ。
都心で働いているのに、不本意に満員電車に乗り、郊外から通勤を強いられている人は今も多い。その意味では、今存在する都市問題は、政治や行政が既存住民の権利や不動産業者の利益を守りすぎてきた結果だともいえないだろうか?都心に緑地が少ないことも指摘されての制度だが、畑として無理やり維持させても、しょせんは私有地で、畑である限りは樹木も生やせない。緑地を維持したければ公園として行政が買い取って木を植えたほうが、緑は増える。

規制を開放し、住みやすい街へ
今年はコロナ禍にも関わらず都心の不動産価格が高騰した。東京23区の住宅地の公示地価はここ10年で爆上がり。1平方メートルあたり、2011年に48万7800円だったが、2021年には63万円1400円と1.3倍も値上がりしている。新築小規模一戸建ての価格は23区平均で6032万円(2021年10月)都内の住宅価格は日に日に上昇し続け、持つものと持たざるものの差が今以上に開き始めている。ここまで来ると、もはや「資産インフレ」にさえ見える。
地主や不動産業者の声ばかりを重視していては、いつまでたっても、この国は住みやすくはならない。政治にも既得権を守るばかりでなく、住民にとって住みやすい都市づくりを期待したいところだ。
いずれにせよ、今回、宅地指定を解除されるのは2022年に期限を迎えていた土地の2割だけだが、それだけでも単純計算で約5万戸分の新たな都心の住宅地が生まれる。通勤ラッシュに苦しむ1000万人にとって、チャンスが出てきたのは朗報だろう。
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