追いつめられる玉城デニー沖縄県知事の憂鬱、衆院選で“自公完勝”の衝撃

コロナ失策、総選挙完敗、公約未達成、軽石被害…
批評ドットコム主宰/経済学博士
  • 沖縄の衆院選は予想外の“自公完勝”。知事の不人気とオール沖縄の弱体化が露見
  • 就任から3年、実現した公約がほとんどなく地元メディアも「落第点」
  • ふって沸いた「軽石漂着問題」。知事の表情もしだいに曇り始めている

衆院選は事実上自民党の「大勝」に終わったが、沖縄県では玉城デニー知事が率いる「オール沖縄」(「辺野古反対」の保革連合)が敗れ、自民党・公明党が躍進した。沖縄県には4つの小選挙区があるが、選挙前まで「自公1対オール沖縄3」という議席配分だった。ところが、今回の総選挙によって沖縄1区と2区でオール沖縄の候補が勝った(※1 訂正)ものの沖縄3区と4区で自公候補が当選して、「自公2対オール沖縄2」という配分に変わったのである。

知事就任3年の記者会見に臨む玉城氏(沖縄県サイトより)

沖縄の総選挙“自公完勝”

しかも、選挙区で敗れた沖縄1区と2区の自公候補が比例復活を果たしたのに対して、沖縄3区と4区で敗れたオール沖縄の候補は比例復活できなかった。おまけに沖縄県出身の公明党比例単独候補1名が当選している。結果的に、衆院における沖縄県選出議員の勢力図は「自公5対オール沖縄2」に変わった(選挙前は「自公3・オール沖縄3・無所属1)。全国的には「自民大勝」だったが、沖縄県にかぎっていえば「自公完勝」である。立候補者全員が当選している。

SAKISIRUの10月20日付拙稿では、恥ずかしながら「自公完勝」ではなく現状維持を予想して「はずれ」となってしまったが、ここまで自公が躍進するとは、正直いって想像しなかった。

分析してみると、「はずれ」の原因は、「玉城知事の予想以上の不人気」と「オール沖縄の予想以上の弱体化」にあったようだ。知事が不人気だった背景には、長いこと「全国一の水準」で推移した沖縄県におけるコロナ感染者発生率や大幅な景気後退があり、オール沖縄が弱体化した背景には、県内有力企業の離反があった。もちろん、自公陣営が背水の陣で総選挙に臨んだという事情も無視はできないが、自公の勝因の半分以上は、玉城知事の失政とオール沖縄の失敗に起因している。

地元メディアが知事に「落第点」

そして、総選挙前の9月下旬から10月初旬にかけて、玉城県政の評価についてもうひとつ重要な動きがあった。10月4日に就任3年を迎える玉城知事に対して、琉球新報、沖縄タイムス、RBC(琉球放送、TBS系)などといった地元有力メディアが、公約の達成を基準に「採点」を試みたのである。

沖縄県庁と県議会(手前、画像はInushita /Photo AC)

それによれば、玉城知事の知事就任時の公約は291本だが、達成した公約はわずか5本、着手した公約も6本にすぎない。達成率でいえば2%弱、100点満点で2点ということだ。救いようのない落第点である。

普段からオール沖縄に好意的な地元メディアが、総選挙前になってなぜ知事の立場を悪くするようなニュースを流したのかといえば、それも玉城知事とオール沖縄側の自責点である。9月21日の県議会の代表質問に立った身内(オール沖縄)の県議に行政上の実績を問われて、知事自身が上記の数字をあげてしまったのだ。正直といえば正直だが、「291分の5」という驚くようなデータをメディアが放っておくわけがない。琉球新報に至っては、解説記事や社説も含めて少なくとも4本の大きな記事を掲載している。いってみれば、身内の質問に気を許して正直に答えたばかりに、ちょっとした騒ぎになってしまったのである。

知事の実現公約は1本だけ?

この騒ぎは総選挙に少なからぬ影響をもたらした。一般県民からすれば、「知事は勝ち目のない辺野古反対にばかり力を入れて、県民の暮らしをすっかり忘れている」という評価になってしまう。実際、自公陣営は「県民の暮らしを置いてきぼりにした玉城知事とオール沖縄」というロジックで総選挙を戦い、勝利を収めた。

知事に追い討ちをかけるようだが、筆者から見れば、「実現した公約は5本」というのも眉唾だ。知事自身が決着を付けられたのは、「琉球歴史文化の日の制定」という、どちらかといえば中身の薄い公約1本だけである。他の4本のうちの3本(「那覇空港第2滑走路の早期増設」「カジノ誘致反対」「本島北部や西表島などの世界自然遺産登録の早期実現」)は、翁長雄志前知事が着手したもので玉城知事のオリジナルではない。残りの1本「就学前教育の充実」は安倍晋三元首相の打ちだした施策と同じで、安倍政権が実現したものだ。

昨年3月に供用開始された那覇空港の第2滑走路(内閣府那覇空港プロジェクト公式サイト)

曇り始めた知事の表情

就任3年での公約達成状況がこんな調子だから、残りの任期の1年間、玉城知事がいくら頑張ってもおそらく結果を出すのは難しい。もっとも大きな問題となっている「沖縄の貧困」や「子どもの貧困」についても知事は有効な打開策を見いだせないままで、政府からの支援に頼るほかないのが実情だ。

そこに降って湧いたのが、「軽石漂着問題」である。11月4日時点で、沖縄県内27市町村、108海岸で漂着が確認されており、91箇所の漁港のうち、操業に支障を来たしている港が6箇所ある。離島航路の一部にも影響が出ており、減便や欠航も報告されている。

沖縄県はすでに8億円を超える除去費用を負担しており、軽石問題でも国の支援が不可欠だ。辺野古での国との対決に血道を挙げることに、引き続き県民が理解を示してくれるかどうかはきわめて微妙な情勢で、明るいキャラが売り物の玉城知事の表情もしだいに曇り始めている。

(※1)【訂正7:58】初出時「今回の総選挙によって沖縄1区と2区でオール沖縄の候補が敗れ、」と書きましたが、「オール沖縄の候補が勝った」の誤りでした。失礼いたしました。

批評ドットコム主宰/経済学博士

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