「岸田4本柱」より「2対1ルール」、商工会議所も要望するワケ
規制で貧しくなるか?改革で豊かになるか?- 規制の見直しへ、日本商工会議所が提言する「One in One out」とは?
- ほぼ同じ米国の「2対1ルール」は規制見直しで自由市場を活性化
- 一方、岸田首相の掲げる成長戦略「岸田4本柱」の問題点は?
岸田新首相の解散宣言もとで行われた衆議院選挙。「新自由主義からの脱却」を旗印に戦った自由民主党は議席減。一方で「改革なくして成長も分配もなし」と戦った日本維新の会は大幅増となりました。
その維新の会の政策の中で特に注目されたのはトランプ前米大統領が実施した経済政策「2対1ルール」で、後にN党も選挙期間中に後追いして政策に加えました(関連拙稿:衆院選で見えた「脱団塊」。マスコミが知らない、これからの政策トレンド)。
そして選挙只中の10月21日、多くの中小企業が加入する日本商工会議所は近い意味をもつOne in One outを盛り込んだ意見書を公開しました。規制導入と見直しの連動の仕組みが、なぜいま多くの分野から注目を集めているのでしょうか。
市場を活性化する2対1ルール
「One in One out」は2010年にキャメロン政権下の英国で中小企業を支援するビジネス振興策として開始。2012年には「One in Two out」へと進化した後、2017年にはトランプ前米大統領によって米国に導入。「Two for One rule」としてあらゆる政策に適応されるルールへと進化していきました。
これは「新しい規制を1つ作るなら、いらない規制を2つ廃止しなければならない」というもので、増え続けてスパゲティ・コードになってしまった規制を整理し、法的対応力に限りがある中小企業の負担を減らそうというのが主な目的です。
新しい規制を要望する声は常にあります。規制の発行は政府や官僚の実績にもなるため積極的に取り組む一方で、古い規制を見直し廃止していく作業は誰もやりません。その結果業態が固定化し新しいチャレンジがしにくくなれば、経済活動にとって重い足かせとなります。
規制導入と見直しを連動し、規制の総量や経済的影響に上限を設ける、あるいは減らしていく。2対1ルールは自由市場を活性化させ、経済成長の原動力となる政策です。
「2021年度 規制・制度改革に関する意見」を公表 – 日本商工会議所 (jcci.or.jp)
「2対1ルール」安倍政権もやってほしかったトランプ政権最強の政策 – SAKISIRU(サキシル)
例えば、新規事業開拓時には思いがけず規制に抵触する法的リスクが存在します。それらのチェックを専門家に依頼する、必要な許認可取得を調べ取得するなどの行政対応のために、相応のコストが必要です。
私自身小さなクリニックを経営していますが、分類としては「中小・零細企業」。医療に関わる様々な許認可申請・年次報告書にくわえ、法人や雇用主としての書類業務にも追われます。
本来歯科医療の専門家として診療行為に専念すれば、より多くのきめ細かなサービスが提供できるところを、行政への事務的対応という「付加価値を生み出さない業務」が時間と集中力を浪費させます。
これは医療関係者だけではなく、建築業や製造業などで規制は多くの専門家の労働時間を奪っています。新型コロナ感染拡大以降では、これまで少なかった飲食店でも書き仕事が倍増したと聞き及びます。
必要なのは「新自由主義からの脱却」ではない
商工会議所にも多く加入する中小企業の中には、岸田首相が総裁選で支援を約束したスタートアップやベンチャーも含まれます。
当事者団体から求められ、政策として掲げる政党が議席を伸ばした以上、岸田首相は民意を受け止める形で「規制導入と見直しの連動の仕組み」導入を推し進めていくべきです。
一方、岸田首相の掲げる成長戦略「岸田4本柱」は、「10兆円ファンド」「勤労者皆保険制度」の新設など。公営ファンドは採択基準が保守的になりがちで、新たな保険制度は庶民の可処分所得をさらに縮小させます。
ベンチャーやスタートアップも中小企業であるならば最大の経費は人件費であり、その人件費を膨張させている保険制度のさらなる拡大は明らかな逆風。同じ予算を組むのであれば民間企業からの研究投資に対する減税や、パッケージになっている生活保護制度を分解して一時金制度などと再編し失業者も活用しやすくするほうがわかりやすくシンプル。
いま必要なのは「新自由主義的なものからの脱却」ではなく、「改革による真の自由主義政策の推進」ではないでしょうか。
(参考)
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