伝説のエンジェル投資家は、なぜそのスタートアップを応援しようと思ったのか?

「見分けるべきは創業者が辛く苦しいときに...」
IPO請負人/中小企業診断士
  • エンジェル投資家が、投資先のスタートアップを支援する決め手とは?
  • ウーバー最初期に投資をしたカラカニス氏はどう投資家を見極めているか
  • 逆に創業者が投資家にどう向き合うべきなのか?

エンジェル投資家とは、スタートアップの創業者が絶体絶命になった時に、天使よろしく窮地から救い出す役割から名づけられたと言われています。今回はエンジェル投資家の視点を分析しながら、スタートアップの資金調達のポイントについて考えてみましょう。

nadia_bormotova /iStock

ウーバーの最初期に投資したことで有名なジェイソン・カラカニス氏は、他にも多くのスタートアップに投資して巨額のリターンを得ており、シリコンバレーで大きな成果を出しているトップクラスのエンジェル投資家です。エンジェル投資は一般的な投資に比べてリスクが高く、それだけ期待するリターンも大きいと言われています。

どんな会社や起業家にとっても、設立当初のシードからアーリーの時期には資金が必要です。自己資金が多く準備できれば良いのですが、大半の起業家は「目標額の4分の1から2分の1程度」しか準備できないのが現実です。

そのシードからアーリーの時期に、起業家側が資金の出し手としてお願いし易いのがエンジェル投資家です。

伝説のエンジェルに学ぶ、資金調達のポイント

私が思う、起業家がスムーズにエンジェルからの資金調達を成し遂げる秘訣は以下のとおりです。

  1. ビジネスで自らが創り上げたい世界を考えに考え抜く
  2. メンターにしたい「尊敬する」起業家を見つける
  3. 周囲に対し「起業について」積極的に話す
  4. 著名な経営者に直接コンタクトを取る
  5. 経営者・起業家のアドバイスを受ける

起業家の熱意が伝われば伝わるほど、周りの人たちはより協力的になり、有力な情報やコネクションをつないでくれます。躊躇なく周囲に夢を語り、可能性の輪をどんどん広げていくべきです。

また、自分が目標とするメンター(先駆者や指導者、目標とする人物)を探し、自らが「いつかは超えたい」と思える、業界のトップランナーたちを知り、実際にコンタクトし、エンジェル投資の可能性を広げることも良いでしょう。

なお、エンジェル投資家の観点を知るための起業家のバイブルとして、『エンジェル投資家』(ジェイソン・カラカニス著、滑川海彦・高橋信夫訳、日経BP社)があります。以下にその内容を要約して紹介します。

カラカニス氏(Christopher Michel /Wikimedia CC BY 2.0)

カラカニス氏は、投資を検討するため、投資家をふるいにかけます。その際の方法として、以下の4つの質問を創業者に投げかけます。

  • あなたは今どんな仕事をしていますか?
  • あなたはなぜこれをやっているのですか?
  • なぜ今なのですか?
  • あなたの不当なまでの優位性は何ですか?

これらの質問に対する創業者の回答によって、カラカニス氏は以下のことを理解できると説明します。

  • A, この創業者はなぜこのビジネスを選んだのか。
  • B, この創業者はどこまで本気なのか。
  • C, この創業者がこのビジネスで成功するチャンスはどのくらいか――人生ではどうか。
  • D, 成功した時の収益や私へのリターンはどのくらいか。

逆にいえば、上記の4つの項目についてエンジェルが納得できるよう、起業家は自身の思考を具体化し、話せるようになるべきなのです。起業家とカラカニス氏が1時間のミーティングを行ったとしたら、その半分30分が以上の4つの質問を答えるために消費されます。そうして基本的な事項を理解したら、今度は先ほどのA~Dをより詳しく理解するために、次の5つの質問をします。

  1. 競合について教えてください。
  2. どうやって利益を出しますか?
  3. 顧客にはいくら請求しますか?
  4. 平均的な顧客はいくら使いますか?
  5. このビジネスが失敗する理由のトップ3を教えてください。

これらの質問に対して客観的で端的な答えを話せる創業者に、彼は投資したくなるのだそうです。

Uberはライドシェアの代名詞として今や世界各地に展開(MOZCO Mateusz Szymanski /iStock)

創業者はエンジェルとどう向き合うべきか

上述したのは、カラカニス氏がミーティングをした際に、10億ドルの創業者かどうかを判断するための基本的な質問です。しかし、そもそもミーティングすらしない創業者のタイプもいます。それは、トラクション前の創業者です。

トラクション(Traction)とは、「地面をつかむことで生み出される推進力」を意味します。ここでは、その製品やサービスを使っている人数や、そのためにお金を払っている人数として考えます。スタートアップでよく聞く「トラクションが足りなかった」という言葉は、「一定数の顧客をつかめなかった、または成長する兆しが見えない」という意味です。

「トラクション前」の段階とは、ナプキンの裏のメモ書き、基礎研究、ビジネスプラン、モックアップ、機能プロトタイプ、MVP(実用最小限の製品)、βテスト、ステルスモードなどの段階のことを指します。

カラカニス氏に言わせれば、この段階でエンジェルに対して出資を相談にくるということは、「自分でプロジェクトを作れないうえ、優秀な人材を雇って週末に製品を作ることも、友達や家族に出資をしてもらうことのできない証拠だ」そうです。

カラカニス氏は、創業者がどのようにエンジェルと付き合っていくべきかも本の中で説明しています。付き合いの際に創業者が意識するべきことは以下の3つです。

  • エンジェル投資家が何を検討しているか
  • エンジェル投資家とのコミュニケーションのとり方
  • 忠誠心の価値

また、彼はこのようにも言います。

「投資すべき創業者とは誰か。見分けるべきは、創業者が辛く苦しいときに逃げないかどうかだ。スタートアップが廃業する主な理由は、資金が底を尽くからでなく、創業者がビジネスを放棄するからだ。自分のビジョンに対する飽くなき追求心を持っているかどうかが重要だ」

佐々木義孝さんの著書「IPOを目指す会社のための資本政策+経営計画のポイント50」(中央経済社)、好評発売中です。

※画像をクリックするとAmazonへ

関連記事

編集部おすすめ

ランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事