行政改革でデジタル改革 !? 期待の38歳 小林副大臣発案の“デジタル臨調”って何?

官僚を“悪玉”にする手法から転換
ジャーナリスト
  • 土光臨調など行政改革のイメージが強い”臨調”で、デジタル改革を行う
  • このアイデアを岸田首相に進言したのは、38歳の小林史明デジタル副大臣
  • 官僚を悪玉に見立てた過去の改革手法とはどうアプローチを変えるのか
首相官邸(fujikiseki1606/PhotoAC)

政府は16日、「デジタル臨時行政調査会(臨調)」の初会合を開く。民間有識者には、DeNAの南場智子会長ら8人を起用する。

臨調といえば、80年代に「土光臨調」として知られた「第二次臨時行政調査会」が有名だ。行政改革によって「増税なき財政再建」を達成すべく始まった。“メザシの土光”との呼び名もある土光敏夫会長のリーダーシップで国鉄民営化などいくつもの改革に繋げて、国民の支持を集めた。岸田政権のデジタル臨調も、この土光臨調を念頭にしているという。

世界の構造変化は加速」発案した小林副大臣

とはいえ、財政再建や公務員制度改革などのイメージが強い臨調だが、今回の臨調の枕詞にはなぜ、“デジタル”の名がついているのだろうか?

デジタル臨時行政調査会、通称“デジタル臨調”という名称がいいのではないかというのは、1年半前から温めていました
自身のホームページでそう語るのは今回、このデジタル臨調の事務局長を異例の兼務で務めることになる小林史明デジタル副大臣。今回このデジタル臨時行政調査会立ち上げを、岸田首相に提言したのも、この小林副大臣だ。

記者会見する小林副大臣(デジタル庁YouTubeより)

9日の記者会見でも「デジタル化が非常に急速に進んでいる中で構造変化が起こってきている。個人や事業者が発展出来るチャンスがあるのに、制度が対応していない」と、立ち上げにあたっての問題意識を語っている。

今回のデジタル臨調設立立ち上げについては「このままのスピードでは間に合わないと考えたからです。これまでも漁業法改正、携帯電話事業の新規参入、放送改革、オンライン診療など大きな改革を実現出来ましたが、どうしても一つ一つに数年の改革を要しています。しかしテクノロジーの進展による世界の構造変化は加速しており、これまでの改革手法だけでは間に合いません。より早く根本的な構造問題を改革するアプローチが必要だと考えました」(小林氏ブログ)。

ツイッターでは有識者からも期待の声が出ている。オープンデータ問題に詳しい情報社会学者の庄司昌彦は、小林副大臣のツイートに「デンマークのような行政通知文書の完全ペーパーレス化、国によるバラマキ的な実証実験事業の見直し(と民間資金調達の支援)、政府によるデータ活用の透明性向上、高品質なデータを作り社会に提供することを国・自治体の重要な役割とすること…あたりがとりあえず頭に浮かんだ」と具体策を語りかけていた。

ダイエーやJALの再建で知られる企業再生コンサルタントの冨山和彦氏も「憲法改正に準じるレベルの統治機構法体系と実態法体系の大転換が必要。パッチワークでは難しい」と難題であることは指摘しながらも、「やる以上は突っ走れ!」とエールを送った。

「戦い方を変える」改革イメージ

小林副大臣は、9日の記者会見で、デジタル臨調では「デジタル原則」を全ての改革に通底する共通の指針とし、デジタル改革規制改革行政改革が一体となって構造改革を進めていくという。そして、これまでのシングルイシューを提示して「個別撃破」をしてきた、従来の戦い方を改め、今までと違うやり方を模索するという。

これまでの改革での成功例としては、押印の廃止の際には“押印”と描かれた法律があるか全てを洗い出し、見つかった法律40本を一括改正で廃止したことだ。こうしたやり方で、デジタルを阻害しているものが何なのかを、まずは省庁横断的に見直していくのが狙いのようだ。

さらに安全規制などでは、現在の「事前一律規制」型から、とりあえず導入して検証を重ねていく「リスクベース」型に変えていく。現状では、自動運転や医療機器などの分野では、機能が追加されるたびに事前に申請を紙で出し、許認可を取るまでに半年から1年待たなければならない。このやり方では、スピード感ある世界の動きに自ずと遅れてしまう。

官僚“敵視”から慣習との戦いへ?

metamorworks /iStock

さらに、入り口から出口までオンライン化をすすめる「デジタル完結原則」をすすめていく。役所に出向かずにアプリでも手続きできるようにする方法も模索していく。そして、これまでの法律がデジタルに適合しているか、アナログを押し付けていないかを常時チェックし、見直しを行う「デジタル法制局」構想などもあるという。

「行革」と一言でいっても様々なやり方があるだろうが、今回のそれはあえて行革の中に、デジタル改革を位置づける試みのようだ。突き詰めてしまうと、行革なしにはデジタル改革はなし得ない、という判断がそこにはあるのだろう。

過去の行革では、霞が関の中で長く利権化してきたものを官僚を悪玉に見立てて戦う。そんな手法が常だったといえる。だが、人を敵視するこの手法は、行政の担い手である霞が関の人たちを敵に廻すために、途中で頓挫するようなケースが多々あったものだ。

ところが、今回はそんな人間の利害関係の戦いというよりは、はんこ論争の時のようになんとなく存続してきた慣習との戦いになるかもしれない。デジタル改革を行革という俯瞰からアプローチする手法は、意外にも早道かもしれない。

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