「北京五輪外交」岸田政権に保守派以外からも「人権問題」風圧強まる

日経が政治面トップ、国民・玉木氏「ボイコット検討」

岸田政権の中国の人権問題への対応を巡り、これまで強硬論を主張してきた保守層以外からも「風圧」が強まりつつある。背景にはスポーツ界で起きた国際世論の変化があるためで、2022年2月の北京冬季五輪への外交ボイコット問題が論点に浮上している。

第1回経済安全保障推進会議に出席した岸田首相(19日、官邸サイト)

異変のきっかけの一つが中国の有名女子テニス選手の彭帥さんが政府高官との不倫を告白後に消息が不明となった問題だ(関連記事はこちら)。アメリカや西欧諸国の政府が強い懸念を示しただけでなく、WTA(女子テニス協会)が中国での大会開催見送りも辞さないとの考えを表明した。IOCも一部の委員から、北京五輪の開催中止の強行路線に言及したことが報じられている。

さらに今週18日には、アメリカのバイデン大統領が政府関係者が北京五輪に参加しない「外交ボイコット」を検討していることを表明した。

こうした国際社会の動きに対し、中国側は危機感を募らせたためか、政府系メディア「環球時報」の胡錫進編集長が20日ツイッターを更新し、消息不明になっている彭帥さんについて、彼女の友人から提供されたという近影をアップ。「彼女はまもなく公の場に姿を現し、いくつかの活動に参加するだろう」との見通しを英語でツイートした。

しかし、アメリカ製SNSのツイッターは中国国内から自由にアクセスすることはできず、政府系メディアの幹部が発信した裏には、中国政府が国際世論を軟化させたい意向があると見る向きが強い。

この胡編集長の発信について、日本国内の保守層ではジャーナリストの門田隆将氏が「IOCが北京五輪中止まで考えているとの情報が流れるや忽ち崩れる中国。毅然と圧力をかければ利に敏(さと)い中国は引く」と指摘した上で、「日本のひ弱な政治家や官僚はただ恐れて、舐められるだけ。情けない」と政府の“弱腰”を批判した。

岸田首相は今月に入り、中谷元・元防衛相を人権問題担当の補佐官に起用。政権として経済安全保障政策に力を入れていることから、中国を念頭に人権問題のある国に制裁措置を課すアメリカの「マグニツキー法」の日本版整備に向けた動きを見せるのか注目された。

しかし中谷氏は就任早々、テレビ番組で法整備に慎重な意向を示したため、保守系の論客から「岸田政権による『人権問題補佐官』の新設は対中国的に全く意味がない。単なるポーズだ」(石平氏)といった批判がわき起こっていた。

ただ、保守層が不満を募らせただけでは事態が動かなかった可能性がある中で、彭帥さんの行方不明事件や、北京五輪の外交ボイコットが国際問題となり、岸田政権の懸案事項にならざるを得ない事態になってきた。このため保守系以外からも何らかの対応を迫られるとの見方、政権の対応を迫る声が強まっている。

日本経済新聞は21日の朝刊の総合面3(政治面)トップに「北京五輪、岸田政権に火種 外交的ボイコットで同調圧力」との記事を掲載。日経は政治的には中道リベラルの論調で知られるが、「バイデン米大統領が中国の人権問題を理由に外交使節団を派遣しない「外交的ボイコット」の検討を明言した。日本の同調を求める声が内外で強まる可能性がある。短期間で決断を迫られる事態も起こり得る」と指摘した。

また“中道改革”路線を掲げる国民民主党玉木代表も21日朝のツイッターで、彭帥さんの事案にアメリカ政府が強い懸念を示したとのNHKニュースの記事を取り上げ、「これは人権問題。日本政府は中国に対し彭帥選手の所在や安否についての証拠開示を求め、納得できる回答がなければ北京オリンピックのボイコットも検討すべき」と主張。さらにリプライで「岸田政権もせっかく「人権問題担当総理補佐官」を設けたのだから、この問題についても人権問題として敏感であってほしい」と求めた。

サキシル関連記事:前副首相との不倫を告白した中国テニス選手、消息不明前にSNSで暴露した内容とは?

 

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