“移民解禁”騒動の週末、橋下氏「真正面から議論を」、自民・小野田氏も苦言

保守層“発狂”の裏で「人手不足」本質論置き去り
  • 外国人労働者受け入れの「特定技能2号」在留期限撤廃の報道で“移民騒動”
  • 保守層パニック。生活保護受給者となる外国人が多いとの指摘も相次ぐ
  • 橋下徹氏「日本の外国人労働者の受け入れ方はおかしい」と制度不備を指摘

政府が、外国人の在留資格「特定技能2号」について、在留期限が無期限となり、これまで認められていた建設など2分野以外の農業や機械製造、外食産業などについても大幅に広げる方針を固めたことが先週後半に報じられ、「事実上の移民の解禁」だと衝撃を受けた保守層が週末にかけてSNSでヒートアップする事態になった。

※画像はイメージです(FTiare /iStock)

日経スクープに保守層パニック

騒ぎの発端は、日本経済新聞が17日夕方に電子版と翌日朝刊1面で放ったスクープ「外国人就労「無期限」に 熟練者対象、農業など全分野」。2年前の入管法改正により特定技能制度が設置されたが、人手不足の深刻な14業種について最長5年の滞在を認めたのが同制度の1号。一方、2号は滞在期間を更新でき、家族との帯同も認められるが、業種は「建設」と「造船・舶用工業」の2種類に限定していた。

しかし新型コロナの影響で外国人の入国が減少し、人手不足がさらに深刻化した業界から2号の対象拡大を求める声が強まり、出入国在留管理庁が対象を13分野に増やし、在留期限を実質的になくす方向で検討しているという。日経は「専門職や技術者らに限ってきた永住への道を労働者に幅広く開く外国人受け入れの転換点となる」と制度変更の意義を指摘。このスクープがツイッターで拡散し始めると、保守層が半ばパニック状態になった。

ジャーナリストの門田隆将氏は「外国人就労期限、全分野なるという報衝撃。事実上の移民受け入れだ」との感想を述べた上で、「英仏が1940年代後半からやった事と同じ。“これからは多文化共生”と言って大失敗し、英は2011年にキャメロン首相が失敗を認めた」とイギリスの事例を引用。さらに「岸田政権が事実上の移民開放策を取った事は信じ難い。岸田さん、日本を潰すつもりですか」と首相に苦言を呈した。

Route55/iStock

「国会を通さず通達」問題視

ツイッターでは、外国人就労の受け入れ拡大に反対する人たちが群馬県大泉町のケースを論じる動きもあった。自動車メーカー「スバル」の工場城下町でもある同町は、工場で働くブラジルを中心に外国人が多く住むことで知られる。外国人が人口の2割近くを占める一方で、同町の生活保護を受給する外国人が少なくないことも問題視されてきた。ツイッターでは、民放の報道番組で町長が受給者の4分の1を外国人が占めることを説明する様子を写した画像が拡散されていた。

自民党小野田紀美参議院議員は17日夜、日経のツイッターを引用しながら「行うべきは、国会を通さずに厚労省の通達で決められた外国人への生活保護の廃止と、永住資格の更新厳格化です」と、行政上の手続きのみで制度の転換を進めることを厳しく指摘。小野田氏はさらに「永住資格取る時には収入要件あるのに一度取ればその後条件の審査なし、生活保護も受けられる、そんな馬鹿な話ないでしょうよ。在留管理と出口を厳しくせぬうちに入口ばかり広げる愚かさ!」と痛烈に非難した。

野党では、国民民主党玉木代表も日経報道を受けて「これは事実上の移民の解禁。人手不足への対応は必要だが、こんな重大な政策変更をするなら十分な議論が不可欠。現行の技能実習制度や特定技能制度にも問題が指摘されており、速やかに国会で議論を始めるべき」と主張した。

橋下氏「受け入れ方おかしい」

橋下氏(Wikipedia:CC BY 3.0)

この問題について、橋下徹氏はツイッターで「日本は移民政策に入った」と指摘。「外国人に日本のどんな風習を守らせるのか真正面から議論しなければ欧米のような移民問題に発展する」との持論を述べた。ただ、橋下氏は保守層のように反対ありきの論者ではない。

2017年には、アメリカのトランプ大統領(当時)がテロ対策の名目で、中東などからの入国禁止措置に乗り出したことに日本国内でも批判の声が上がったが、橋下氏は「トランプ氏の一時入国制限措置に対して、日本人がきれいごとで文句を言うのは筋違い。なぜなら日本の国こそトランプ氏措置よりも難民・移民を制限しているから。トランプ氏を批判すれば、お前の国よりましだと言い返されるだけ。国会できれいごとを言う前に日本の制度を議論しろ」とも苦言。

最近もAbemaTVの自らの番組「NewsBAR橋下」で「日本の外国人労働者の受け入れ方はおかしい。技能実習生の賃金の安いことや、転職ができないこととか。“移民”と言うものだからアメリカ型やフランス型に見えるが、そうではなくて、一定のルールのもとに、受け入れるんだったら日本国民と同様にちゃんと対応しましょう、というのが僕の考え方」との見解を示している。

結局、外国人労働者の問題は、現下の人手不足をどう打開するか、その本質的な論議が置き去りにされている感は根強い。日米の政治に詳しい渡瀬裕哉氏はツイッターで「移民増加が嫌だという人は、ロボットによる労働力代替を促進する規制廃止に同意してください。自動運転車にすら人間が乗ってないとダメ、とか、様々な分野で人間の存在を前提とした配置規制があります。徹底した規制廃止と投資減税で機械化を進めるのか、移民をガンガン入れるのか、それとも両方かです」と、規制の観点から論点を提示していた。

 

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