自民、立民、維新…日本の政党の党首選挙に決定的に欠けている〇〇感覚

民間の株主総会で問われる「当たり前」とは
国際政治アナリスト、早稲田大学公共政策研究所招聘研究員
  • 今年は与野党で党首選が行われたが、日本の党首選で決定的に足りないこと
  • 民間の株主総会で経営陣が夢物語だけを述べて許されるわけではない
  • 議員数の増減だけでは政党運営の成否は判断しにくい。もっと大事なことは?

2021年は衆院選だけでなく与党第一党の総裁選、野党第一党の代表選が行われる政局の年であった。そして、27日は日本維新の会は党大会で代表選挙実施の是非を決める予定だ。

しかし、筆者はこの政党のトップを決める選挙に関して違和感を覚えている。なぜなら、彼らは政策理念に関する空虚な理念を並べているが、自党の経営についてはほとんど何も言及しないからだ。

現在4候補が論戦中の立民代表選(党公式サイト)

日本の政党に欠落する「感覚」とは?

もちろん、政党のトップは国家を担う可能性がある人物であり、その政治理念や政策を問うことは極めて重要である。彼らが外交安全保障、社会保障、財政政策、その他内政上の課題について様々な意見を交わすことは必要だ。

だが、これらの選挙は党のトップを決める選挙でもあり、その政党の経営戦略・党勢拡大計画・予算計画について語る言葉がもう少しあっても良いのではないかと思う。まして、日本の政党は政党助成金を受け取っており、その政党の運営について具体的なプランを公に示すことは当然だろう。

日本の政党の代表選挙には「経営感覚」が決定的に欠けている。

維新の領収書論争が空しいワケ

現在、日本維新の会が代表選挙の事実上の前哨戦として、国会議員らの資金使途の適切さについて領収書添付が云々という経理レベルの話で盛り上がっているが、正直言ってウンザリする。民間の零細企業でもやっていることは速やかにやったら良いだけの話だ。

日本維新の会公式サイト

当たり前の話であるが、政党のトップや幹部の支出が適切なものであるかは、領収書添付の是非で決まるものではない。

政党の支出が適切なものであるかは、政党の経営理念、事業戦略、事業計画、予算計画、その他下位の計画などに資するものであるかで判断されるべきものだ。たとえば、政権奪取までのスケジュール、国会議員目標数・地方議員目標数、党員数目標・党費目標、法案作成・提出数などを示し、そのために拡販・広報・採用・政策研究などの何に幾らの予算をかけるかが問われるべきだろう。領収書が添付されていても、それらの目標に役立たないものは不適切な支出として監査の対象とすべきだ。(選挙のための裏金も外部監査を入れればほぼ無くなることになる。)

また、仮に野党は本当に政権を獲るつもりがあるなら、目標や予算の進捗管理を行うべきだろう。民間の株主総会で経営陣が夢物語だけを述べて許されるわけがなく、約束した経営目標が達成されたか否かが厳しく問われる。そして、場合によっては成果が芳しくない経営陣の交代が行われることになる。その際、既存の計画の失敗点が是正されて、より強力な体制を作っていくことが期待される。

今のままではどの党も官僚の思う壺

9月に行われた自民党総裁選(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

現状の政党運営は選挙による議席増減だけで成果が判断されて、政党自体の中長期的な発展は極めて軽視されているように思う。実際、既存政党の組織運営体制が貧弱で無党派層の風の影響が大きい現状、特に衆議院の小選挙区比例代表制における国会議員数の増減だけでは政党運営の成功・失敗は判断しにくい。

まして、政策立案力の向上などに政党のリソースを投入・拡大しなければ、百年経っても官僚機構に伍する政党(民主主義の装置)を創り出すことなど到底不可能だ。議員数が十分であっても民主党政権のように官僚機構側に簡単に切り崩されて瓦解するだろう。

政党は政治家の私物ではない。政党は党費を納める党員のものであり、更に税金によって運営されている以上は納税者のものでもある。そして、日本という国の民主主義を支える公の器だ。

したがって、経営感覚を持ったマトモな政党が生まれることに期待する。代表選挙で経営計画を示し、最低でも年1回は党大会で経営計画・予算計画の進捗を確認する。この当たり前のことができる人に政党の代表を務めてほしい。

 
国際政治アナリスト、早稲田大学公共政策研究所招聘研究員

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