維新は全国政党になりたいなら、“橋下商店”から“上場企業”になれ!
浮かび上がったガバナンス構造の問題- 維新の「お家騒動」で浮かんだガバナンス構造の問題を検証
- 橋下氏と足立議員の論争で、実質的に「大阪上位」の構造が浮かぶ
- 組織を揺さぶる創設者。“橋下商店”からの脱却こそ全国政党化の布石
最近、サキシルのことを「維新の御用メディア」呼ばわりする輩が散見される(例えばこの人とか)。確かに規制改革や減税など、政策的にサキシルのコア読者層の考えに近く、こちらも関心事に答える記事を増やすために、そう見られてしまうのかもしれないが、維新に対して言うべきは言う。当たり前のことだ。
お家騒動で浮かんだガバナンス構造

そしてリンクした人物らが疑念を持つ理由は、ここ最近の維新の「お家騒動」に関して記事がないからだという。言い訳をするつもりでは全くないが、騒動を広げた橋下徹氏と足立康史衆院議員のツイッターバトルのスピードがあまりに速過ぎて、こちらも少人数で運営している中で、維新の話ばかりフォローしているわけにはいかず、正直なところ追い付けていなかっただけだ。
お家騒動は、文書交通費の取り扱いについて橋下氏と足立氏の論争がヒートアップしたものだが、特に波紋を広げたのは橋下氏が「維新国会議員団が大阪維新の下部組織であることが崩れていないか?」と投稿したことだった。維新の規約では、常任役員の選任は大阪維新の会所属党員からと規定され、代表選の候補者になるにも大阪維新の会の推薦を要する。
音喜多駿参院議員はブログで「直ちに大阪維新が国政維新の上部組織と言えるかといえば、そうではない」と釈明しているものの、この騒動が起きる少し前のこと、筆者旧知の地方議員は「大阪維新の会が日本維新の会の上に位置づけられる、国政政党では珍しい組織」とやはり認識していた。多少の事実誤認があっても、実態としてはそういうガバナンス構造になっていた部分も強かったのは否めまい。
実は恥ずかしながら筆者がこの規約の明確な内容を知ったのは衆院選後のことだった。もちろん大阪に党本部があり、党首を市長が務めていることから大阪維新主導の党であることは十二分に承知してきたが、規約でここまで徹底的に裏打ちされ、構造的だったとは思わなかった。
ここ数年、維新がなぜ全国政党になれないのか、「大阪ローカル色が強い」といったイメージレベルの話以外に原因を考えていたが、この構造にこそ大阪以外で伸び悩む課題の根幹があったわけだ。
ただし規約(ガバナンス構造)が、党勢拡大のリミッターではあったものの、石原慎太郎氏、江田憲司氏ら首都圏の新党勢力との離合集散を繰り返した過去の教訓に立ち、この5年あまり、純化路線を採る組織を守るための効果は発揮した点を指摘しておかないと公平ではあるまい。
純化路線を核に鉄の結束を貫けたことで、絶大なカリスマだった創設者の橋下氏なき後も、雲散霧消どころか、大阪で無双ぶりを発揮。とうとう大阪府内で候補者を擁立した15の小選挙区全てで自民党候補者を破って当選する空前の快挙を遂げた。

「次」を考える象徴?音喜多氏の存在
さて問題はここからだ。
橋下氏が古巣に対し容赦ない口撃を連日続けているが、足立氏の粘り強い反論や抵抗は予想外のこととはいえ、大阪の維新関係者は偉大なる創業者に物申せない。橋下氏が維新の発展を思ってこその「炎上マーケティング」の意図を持って、激辛な発言を続けていたとしても、それが言いっぱなしになって維新の印象を悪くするだけで終わるところだった。
しかし、いまの維新には東京に音喜多君という発信力のある議員がいる。持ち上げるつもりで言うのではないが、持ち前の当意即妙の説明能力で橋下氏の一連の言動について「『国政維新、このままでいいのか?言われっぱなしで悔しくないのか?』という、創設者からの激烈なメッセージ」(ブログより)との丁寧な解説をつけることでフォローできている。

この構図は維新の「次」を考える上で象徴的だ。
実は、橋下氏と音喜多君は複雑な“因縁”がある。以下の話は音喜多君にはあえて聞かずに、複数の政界関係者らの確たる証言を得ているが、2年前の参院選で、維新が東京選挙区に音喜多君を最有力候補に検討した際、橋下氏は党幹部に難色を示したという。
橋下氏の番組に音喜多君が出演して打ち上げで飲みに行った際、あることで議論が過熱。それが橋下氏の目に反抗的に見えたからではないかとの説もあるのだが、真相は不明だ。
しかし、万一、当時すでに民間人だった橋下氏が党に意見したのが事実であれば、それが「維新を支持する1人の豊中市民個人」の見解であったとしてもやはり創設者の一言は重い。党のガバナンスに微妙な影響を与えかねなかった。
一方で、維新も首都で悲願の議席奪取に懸命だった。音喜多君以外に、ベストセラーで世の中の障害者像を革新した作家の男性や、有名討論番組でおなじみの女性国際政治学者らに打診をするも断られ、最後に候補に残ったのは音喜多君と、バラエティ番組で女性たちと“あいのり”している元国会議員の弁護士。維新内部には後者を推す声もあったようだが、極秘に情勢調査をかけたところ、音喜多氏がわずかに支持率で上回ったことが決め手の一つになった。
全国政党へ“上場”できるか
そうした、すったもんだも乗り越えて音喜多君は初当選。維新入り後の広報マンとしての活躍もあるためか、いまは橋下氏との関係性は悪くなく見えるが、“跳ねっ返り”の若い議員を1人や2人くらい擁しているくらいのほうが、大組織に相応しい「包摂力」を示すことになろう。
結局、足立氏との諍いとそこから党全体が揺さぶられるように見える状況を見ていても、良くも悪くもいまだに「橋下商店」の根幹から脱却できていなかったようにも見える。ただし、橋下氏は代表選に後ろ向きな党内に「愛の鞭」を激烈に振るってもいる。私は橋下氏が再び政界で活躍する姿を見てみたい1人だが、その確率が2万%あろうとなかろうと、「創業者のレガシー」として代表選を当たり前のように実施する党への変革、世代交代を主眼に、個人商店から全国政党に“上場”させる機運を作り出そうとしているように見えてならない。
代表選が実施される場合、立候補には“大阪縛り”の規約は改訂されるとのことだから、党が文字通り“全国仕様”に変わるためのガバナンス改革になる。音喜多君でも、柳ヶ瀬参院議員でも名乗りをあげて、身を切る改革のような“自傷行為”ばかりではなく、小さな政府をめざす減税や規制改革、社会保障の抜本改革など、東京のネオリベ志向の無党派が好物にしそうな前向きな看板政策を掲げ、脱皮できるのか。
各政党は3年後の都知事選で維新がどう出てくるか注視している。今回の代表選をやるかどうかは、全国政党への大きな試金石になりそうだ。
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