岸田政権の安保外交姿勢は大丈夫か:中国に付け込む隙を与える林芳正外相
有能だが、「今ではなかった」- 岸田政権の外相、防衛相人事で、外交・安全保障の姿勢を問われているように見える
- 林氏の防衛相時代は短期ながら好印象も、外相人事は「この時期はまずい」と筆者
- 「日中友好議員連盟」会長の林氏、北京五輪「外交的ボイコット」の切り崩し危惧
10月4日に第100代内閣総理大臣に選出された自民党の岸田文雄氏が衆院選後の11月10日、衆参両院の本会議で行われた首相指名選挙で第101代首相に選ばれ、岸田政権が本格的にスタートした。

衆院選で自民党がいわゆる「絶対安定多数」を確保したことや、改憲派勢力である「日本維新の会」や「国民民主党」が議席を伸ばしたことなどから、岸田総理の改憲へ向けての勢いも加速して前向きな言動が見られ、保守派層には頼もしい印象を与えているようだ。
一方で、安保・外交における骨幹組織の長である外務大臣及び防衛大臣の人事については、内外からこの姿勢を問われるような人選をしているように見受けられる。
外務大臣について
外務大臣に任命された林芳正氏は、次期首相候補とも噂されるほどの人物であり、東大法学部を卒業後、三井物産に入社して商社マンとして社会人生活をスタート。民間会社で経験を積んだ後に父親の跡を継いで政界に入ったというエリートで、参議院でありながら数々の大臣職を歴任、参議院から初めて総裁選に立候補するなどその経歴には輝かしいものがある。
2008年に福田内閣の防衛大臣として初入閣された際には、福田総理の退陣によりたった1か月という短命の大臣ながら、(当時筆者は防衛省勤務で比較的そばでお仕えしたときの印象から)幅広い知識を有するジェネラリストで語学も堪能であり、立ち居振る舞いもスマートで趣味のギターで隊員に弾き語りを聴かせるなど、今までに経験したこともないようなとても素敵な大臣であったことを記憶している。1か月でお辞めになることを多くの隊員が残念がっていたものである。

それならば、外務大臣として適任ではないか。と思われるであろうが、そのとおり今でなければ、全く適材適所であったろうと思う。
しかし、この時期に外務大臣に就任するというのはやはりまずい。というのも、すでに一部のメディアなどで指摘されているように、林氏は(厚生大臣や大蔵大臣を歴任した父親の林義郎氏から)親子二代にわたって中国との友好関係を推進する超党派の「日中友好議員連盟」の会長を務めている親中派である。外務大臣に就任して会長を辞任したとしても、親中派であることに変わりはなく、中国もそれをよく承知している。
中国にとってウエルカム人事
現在中国は、習近平国家主席が絶大な権力を握り、覇権主義をむき出しにして南シナ海などで国際法秩序を乱し、これを阻止しようとする米国としのぎを削って台湾やわが国を武力で威嚇している状況にある。これに対して、米国などは民主主義国の結束を強めるべく、新たな安全保障の枠組みである「Quad:日米豪印4か国協力」や「AUKUS:米英豪3か国軍事協力」などを発足させて、日米同盟を基軸に東アジアから中国包囲網を構築しようとしている真っ只中である。
米英豪などから見れば、こんな時期に外相に親中派を就任させる岸田政権は、中国に対して韓国のような「戦略的曖昧性(Strategic Ambiguity)」で臨もうとしているのではないかと不信感を抱くのではないか。
案の定、就任のあいさつのため、中国の王毅国務委員兼外交部長と電話会談を行ったところ、早速中国訪問を打診され、この実現へ向けて調整する運びとなった。
決して、中国外交部長との対話が悪いというわけではなく、これが外務大臣本来の大切な任務ではあるのだが、問題はタイミングである。米英豪がいずれも北京五輪での「外交的ボイコット」を検討し、カナダのメディアでは元外交官が「北京五輪自体のボイコット」を主張しているような中で、日本の外務大臣が北京に赴いて大歓迎されたりすれば、これらの動きには決して同調できなくなってしまうであろう。つまり、民主主義国の結束が乱れるということだ。中国はこれを狙っている。
現在の中国は、尖閣諸島領海への公船の侵入を繰り返し、ロシアの軍艦とともに海軍の戦闘艦艇がわが国の特定海域で示威行動を行い、ロシアの爆撃機とともに空軍の爆撃機が日本海や沖縄周辺でわが国への接近飛行をし、海軍の測量艦を鹿児島県の屋久島や口永良部島付近の領海内に侵入させて測量するような行動をとっているのである。
今、わが国が中国に対してとるべき対応はいかなるものか、よくよく考えていただきたいと思う。
(※続く:次回は防衛相人事について)
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