続・岸田政権の安保外交姿勢は大丈夫か:岸防衛相の続投が自衛隊の士気に影響するワケ
中国からは警戒されている存在だが...- 岸田政権の人事から安保・外交姿勢を考える続編。岸防衛相続投について
- 中国から警戒される存在で本来は適任のはずだが、体調の問題が…
- 不眠不休の局面もある職務。続投に自衛隊幹部の間で上がった声とは
引き続き、岸田政権の人事から安保・外交スタンスを考える。前回は、この時期に林芳正氏が外務大臣に就任することへの懸念に触れたが、今回は、防衛大臣人事について述べる。
防衛大臣に任命された岸信夫氏は、安倍元総理と同じく自民党でも右寄りの保守派で靖国神社にも度々参拝されていらっしゃる。また、林芳正外務大臣とは対照的に「日華議員懇談会」の幹事長を務める「親台派」として中国からは警戒されている存在である。外務副大臣や防衛大臣政務官などの経歴を見ても、台湾との関係を強化しようというこの時期の防衛大臣として、本来ならば適任であったと考えられる。
だがしかし、いかんせん問題は何よりその体調にある。
岸氏の防衛相続投、体調不安が…
防衛大臣は、「自衛隊を管理、運営し、これに関する事務を行うことを任務」とする防衛省のトップであり、他国から見れば日本国の軍事組織の代表である。
主要国の国防長官などを見ても、このような地位にある方々は、何れも颯爽として力強い印象を与える方ばかりである。もちろんそれは、職務上(元軍人などを含めて)心身ともに充実していて押し出しのきく剛健な方が本職に抜擢されているからであろうし、これが兵士の士気にも影響するからである。
今年の夏ごろから、岸防衛大臣の声のかすれ方や歩行が尋常ではなかったので気になっていたのだが、やはり恐れていることが起こった。
9月28日早朝、北朝鮮は「極超音速ミサイル:火星8号」と称する新型の弾道ミサイルを発射したが、この日岸防衛大臣は体調不良により公務から離れておられた。もちろん、たまたま体調の悪化した日に北朝鮮がミサイルを発射したのではあろうが、おおよそ緊急事態とは、なぜかこういう時に限って起きるものなのである。
常に報告は受けられる状態であったとはいえ、これがもし、中国による台湾への奇襲攻撃だったとしたら、報告を受けるだけでは済まない。内閣から次々と情報を求められ、自衛隊からも様々な判断や指示・命令を求められる重大な局面となっていたところである。昼夜を問わず不眠不休で続けられるオペレーションに、この体調ではとても耐えられなかっただろう。
防衛大臣は自衛隊員と一心同体であるべき
現在、わが国周辺においては、「軍事的にいつ何が起こってもおかしくない」という状況にあるということを、岸田総理は十分に認識して危機意識を抱いておられるのかと問いたい。
すでに、大臣の体調は回復したと伝えられているが、目の力も声も歩き方も、以前のような状態には戻っていらっしゃらないご様子である。諸外国の軍事高官がセレモニーなどで大臣と同席してこの立ち居振る舞いを見たときにどのように感じるであろうか。また、間近に接する機会がなくともテレビなどでそのお姿を見て、最前線で国境を守る自衛隊員らはどう感じているであろうか。
ちょうど前述の北朝鮮によるミサイル発射のあと、現役の自衛隊幹部数人と話す機会があり「大臣は大丈夫なの」と尋ねたのだが、中央で勤務する多くの隊員らは、政権交代と同時に大臣は当然交代されるものと思っていたようだ。
ちなみに、筆者も自民党総裁選で岸田総理が選出された際には、この選挙で一気にその名を馳せた女性候補者によって、2016年に放映された映画「シンゴジラ」で余貴美子さんが演じたような、とっても勇ましい女性の防衛大臣が誕生するのではないかとワクワクしていたところであった。
しかし、早々に防衛大臣続投と報じられたことで、申し訳ないが正直がっくりしてしまった。このような感情を抱いたのは、決して筆者だけではなかっただろう。「え、なんで」と思った現役自衛隊員は少なくなかったと思う。
場合によっては、一時大臣の任務を誰かに委譲し、十分な静養をとって体調を万全にしてから再び本格的に職務に復帰していただいてもよいのではないかと思うのだが、いかがであろう。
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