いよいよ始まるコロナワクチン3回目の接種。「そもそも」から解説します

「前2回はファイザーで3回目モデルナは大丈夫?」「子どもの摂取は?」等
医学博士、医療ジャーナリスト

新型コロナウイルスワクチンの3回目の接種券が筆者のところに届いた。筆者は、3月に医療従事者の優先接種(ファイザー)を終了しているから、2回目終了後から8か月程度経過している。どこで受けるのかはまだ思案中だが、最初に接種した病院にとりあえずは確認してみようと思っている。

皆さんのところにも、最初の頃に接種した高齢者から順に、年明けくらいから、接種券が届きはじめるのではないだろうか。今回は、医師である筆者が、3回目接種について解説したい。

Ibrahim Akcengiz /iStock

3回目の接種はいつ頃受けられるのか

厚生労働省によると、2回目の接種から、原則8か月経過していることが条件としてあげられている(1)。8か月経過した人から順に接種券が届くと思われるので、焦らずに順次届くのを待つといいだろう。

どんな人が対象になる?

アメリカなどでは、対象者を、高齢者やリスクの高い人に当初絞っていたが、現在では、18歳以上であれば3回目の接種が受けられるとしている(2)。また、近々開始される本邦でも、特に優先順位をもうけていない。2回目接種までの順番が、医療従事者に続いて、高齢者や基礎疾患ありのハイリスク者、その後年齢順におおむね接種しているので、8か月経過した人から順次接種券を受け取り、接種すれば、ワクチンの供給が順調である限り、高齢者やハイリスク者から接種していくことになるだろう。

厚生労働省によって定められている対象者は以下の通りだ。

  • 2回目接種を完了した日から、原則8か月以上経過した方
  • 18歳以上の方
  • 日本国内での初回接種(1回目・2回目接種)又は初回接種に相当する接種(※)が完了している方
    ※国内あるいは海外で、ファイザー・モデルナ・アストラゼネカのどれかを接種したケース

また、接種に優先順位はつけていないが、「特に接種をお勧めする方」として、厚生労働省は以下のようにハイリスク者をあげている。

  • 高齢者、基礎疾患を有する方などの「重症化リスクが高い方」
  • 重症化リスクが高い方の関係者・介助者(介護従事者など)などの「重症化リスクが高い方との接触が多い方」
  • 医療従事者などの「職業上の理由などによりウイルス曝露リスクが高い方」

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そもそも3回目の接種は必要なの? 

新型コロナウイルスワクチン、2回目接種から3〜4か月経過すると、抗体が低下し、ブレイクスルー感染(ワクチン接種を完了したのに感染すること)のリスクが上がる(しかし、重症化のリスクは比較的低い)ことが報告されている(3,4)。世界に先駆けて3回目の接種を行っているイスラエルで行われた大規模研究にて、2回接種者および3回接種者各約73万人の比較では、3回目を投与して7日後には、5か月以上前に2回のみを行なった場合よりも、入院を防ぐ効果が93%、重症化を防ぐ効果が92%、死亡を防ぐ効果が81%と、有効性が示唆されている(5)。また、モデルナのワクチンも、3回目の接種の有効性が示唆されている(6)

なお、現在日本で、3回目の接種が承認されているのはファイザーのみで、モデルナはまだ申請中だが、それほど遠くない将来に承認されるだろう。また、副反応の頻度や重症度が、3回目で特に多いとは報告されていない(7)

1、2回目と異なる「交互接種」は有効?

ワクチン供給量の関係から、自治体の中には、4割程度は、1、2回目の接種とは異なるワクチンを打つ「交互接種」になるのではと試算をしているところもある(8)。自治体に供給されるファイザーとモデルナの量によっては、時期にもよるが、相当数の人が交互接種を余儀なくされる可能性がある。

交互接種のエビデンスだが、アメリカの10施設で行われた500人弱の査読前研究では、同種および異種のワクチン(ファイザー、モデルナ、ヤンセン)で3回目の接種を行ったところ、同種は中和抗体価4.2-20倍、異種は6.2-76倍増加させたと報告され(9)、有効性が示唆されており、交互摂取と同種接種で副反応も差がないと報告されている。重症化や死亡の予防効果についての研究が今後なされる必要があるだろう。

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インフルエンザワクチンも受けたいときは?

インフルエンザワクチンとコロナワクチンは、今のところ本邦では、同時に接種できない。新型コロナウイルスワクチンと、他のワクチンは、原則として2週間あけることになっている。一方、アメリカでは同時接種でき、医学的には同時接種でリスクが上がるというわけではないとされる。ただ、副反応がどちらのワクチンによって起こったのかを見極めることは困難になる。

一般の方がコロナワクチンの3回目接種を行うのは年明け以降だろうから、今のうちにインフルエンザの予防接種ができれば受けておいた方がいいだろう。インフルエンザワクチンも、今年は昨年と比べて品薄になっているので、開業医での予約がすでにとれないところもあるので、まずはかかりつけ医に相談してみるのがいいだろう。なお、インフルエンザワクチンは、小児(生後6か月〜12歳)は2回接種、それ以上の成人は1回接種となっている。

子どものコロナワクチン接種は?

ファイザーもモデルナも、現在本邦では12歳以上が対象で、それ以下の子どもは対象となっていない。3回目の接種は、厚生労働省によると、18歳以上が対象だ。

アメリカでは、5〜11歳に関して、ファイザーの緊急使用許可が出され、接種が開始されている。アメリカでは、低年齢の子どもに対しても、リスクよりもメリットが大きいとして推奨しているが(10)、子どもに対する考え方は国によって異なる。イギリスでは、心筋炎のリスクを踏まえると、12〜18歳でも積極的には推奨しない立場を長らくとっていたが、9月に、12歳以上の1回接種の推奨をはじめたばかりだ。

日本はアメリカのように、肥満などのハイリスクな子どもが多いわけではなく、子どものコロナウイルス感染は依然として重症化率、致死率は低い。ワクチンのリスクは高いわけではないが、副反応はゼロではなく、流行状況なども踏まえて、親が個々に判断する必要があるだろう。

参考文献
(1)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_booster.html
(2)https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/vaccines/booster-shot.html
(3)https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2021.10.30.21265693v1
(4)https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2106599
(5)https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(21)02249-2/fulltext
(6)https://www.nature.com/articles/s41591-021-01527-y
(7)https://www.fda.gov/media/152176/download
(8)https://www.gifu-np.co.jp/news/20211125/20211125-125367.html
(9)https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2021.10.10.21264827v2
(10)https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/vaccines/recommendations/children-teens.html

 
医学博士、医療ジャーナリスト

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