時流はワクチン…広島県の「今更」PCR大規模検査に困惑

県の専門員会議も「苦言」
2021年05月09日 06:00
広島市議会議員/元読売新聞記者
  • 広島県による大規模PCR検査の問題点を、元新聞記者の広島市議が解説
  • 費用対効果の問題や、市の保健所を逼迫させる恐れ。それでも県は拘泥
  • 全国的にはワクチン接種のフェーズ。県の専門員会議も遠回しに「苦言」

広島県による大規模PCR検査が波紋を広げています。とうとう6日には湯崎英彦知事が記者会見し、県内で新たに56万人規模で無症状者を対象に始めると打ち出しました。県の突出ぶりに、保健所などの現場を預かる広島市などでは困惑が広がっている模様です。

全国の自治体がワクチン接種対応でも逼迫している中で実効性はあるのでしょうか。元全国紙記者で、県の大規模PCR検査に当初から反対してきた市議の椋木太一氏がこの問題を「そもそも」から解説するとともに、現場の「空気」を伝えます。

Feodora Chiosea/iStock

新型コロナウイルスの感染拡大防止を目的に、広島県は5月6日、広島市内の全事業所の従業員約40万人を対象にした「PCR検査集中実施」を始めました。原則、無症状者を対象にしたもので、5月13日からは福山市内の全事業所の従業員も含め、両市で約56万人規模を想定しています。

私自身、検体採取時の状態しか分からないというPCR検査の性質上、感染拡大防止目的で大規模PCR検査を用いることには懐疑的で、なおかつ、新型コロナウイルス対策の主軸がワクチン接種となっているこの段階での集中実施に、いささか困惑しています。

なぜ大規模検査に反対なのか?

広島県がこれほど大規模なPCR検査を画策するのは、今回が初めてではありません。今年1月から2月にかけて、「無症状者を早期に捕捉し、感染拡大を抑制する」ことを目的に、広島市の住民らを対象にした「80万人大規模PCR検査」をぶち上げました。しかし、費用対効果などから批判が噴出し、6000人規模の「試行」を実施したにとどまりました。

この件でも、私は終始一貫、大規模PCR検査に反対しました。大規模検査を実施しても所期の目的は達成できないことや、陽性判明者(いわゆる「感染者」)の健康観察などに広島市(保健所や担当部局)の人的・医療資源が大幅に割かれてしまうことなどが理由です。

集中検査を告知する広島県のホームページ

それから3か月弱。大規模PCR検査が感染拡大抑制の有効策となるのかどうか判然としないまま、またしても、広島県が「大規模PCR検査」を打ち出してきました。PCR検査へのこだわりは強く、広島県は4月1日から、広島と福山両市内の薬局計約340店舗で、検査キットの無料配布・回収を始め、5月31日まで継続予定となっています。

4月12~25日には「春のPCR検査集中実施」と題し、広島市内などの15大学で検査キットの配布場所を設置するなどして、受検を推奨していました。さらに、4月23日からは「第2弾 春のPCR検査集中実施」としてプロモーションを続けています。

ネット上などで“愚策”と批判を浴びている大規模PCR検査。なぜ、広島県がここまで、PCR検査に固執するのでしょうか。「検査キットの在庫を処分するため」とか、「意地になっている」とか、様々な意見を耳にします。本当の理由は分かりません。広島市や県の行政マンの心中を察すると、やるせない気持ちになってしまいますし、検査の原資となっている税金を納めている皆様にも申し訳ない気持ちでいっぱいなのです。

大規模検査について発表する湯崎知事(広島県YouTubeより)

専門員会議「体制強化を図った上で…」

ところで、広島県は5月7日に、飲食店などへの営業時間短縮を要請することなどを柱とする集中対策をまとめました。この対策案の協議の中で、県の新型コロナウイルス感染症対策専門員会議が、事業所を対象としたPCR検査について、非常に重要な提言をしているのです(太字は筆者)。

「感染者が急増し、検査もひっ迫している状況が見受けられることから、事前確率の高い有症状者や接触者等の検査が滞ることのないよう確実に速やかに行われる体制を整えるとともに、保健所の調査体制、医療提供体制の更なる強化を図った上で実施することが必要である」
(引用:「広島県の新型コロナウイルス感染症の状況にかかる評価と提言」)

つまり、①検査は有症状者や濃厚接触者を優先②保健所に負荷をかけるな③医療提供体制強化--と注文を付けていると言えます。遠回しに、無症状者を対象にした大規模PCR検査に苦言を呈しているのです。

政府はワクチン接種を新型コロナウイルス対策の決め手とし、菅義偉総理は、高齢者への接種を7月末までに終えると、強い決意を示しています。5月中旬から、全国で高齢者への接種が本格化します。広島市も現在、接種体制の確立に向けて最終調整に入り、多くの人員、時間を割かれています。

ワクチンに対して賛否両論あるとはいえ、日本の新型コロナウイルス対策はワクチン接種というフェーズに入っているのは間違いないのです。

専門家に苦言を呈され、時流にも乗らず、「PCR検査」に邁進する広島県。いったい、何のため、誰のために施策を講ずるのか、今一度、立ち止まってみてほしいものです。

 

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広島市議会議員/元読売新聞記者

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