「この国にリベラルはいない」倉持弁護士、国際線の予約停止要請に“無法支配”憂慮

篠田英朗氏「『改憲絶対阻止!』と叫んでいる方々に限って…」

オミクロン株の日本上陸を懸念し、国土交通省が1日、航空各社に対し、日本に到着するすべての国際便の新規予約停止を要請したことを巡り、有識者から法的根拠の問題を指摘する声が出ている。

Takosan /iStock

倉持麟太郎弁護士はこの日、ツイッターで、引用した報道記事の中に「オミクロン株についての情報がある程度、明らかになるまでの緊急的な異例の措置」と書いてあったことを問題視。「未知の変異株の度に、『明らかになるまで』『緊急的に』法の支配は消し飛ぶ『無法の支配』です」との見方を示し、「その対策の中身の是非以前に、権利制限する場合は法的な根拠を、とか、法律によるべき、とかいう当たり前の話をしているだけなんです」と指摘した。

倉持氏は、東京都による飲食店への一律時短命令の違法性を訴え、都を相手取って行政訴訟を起こした飲食事業者、グローバルダイニングの訴訟代理人を務めている。著書などで、日本型リベラルの“ご都合主義的”な憲法論を喝破してきた倉持氏だが、リベラルを自称する人たちも入国停止に好意的な反応を見せていることを念頭に「この国にリベラルはいないわ、ほんとに。岸田さんて自民の中ではリベラルとか言ってなかったっけ?」と、痛烈に指摘した。

この倉持氏のツイートに反応したのが国際政治学者の篠田英朗・東京外国語大学教授。「日頃『改憲を絶対阻止する!』と叫んでいる方々に限って、自分の感情にしたがった内容の超法規的措置なら大歓迎です、だからね。 憲法学者の法解釈は法解釈論としておかしい、とか主張している私なんか、本当に滑稽な存在」と皮肉も込めて同調。国際法の観点から戦後日本の伝統的な憲法学を批判して注目されてきた篠田氏らしい視点を示しつつ、「新型コロナの日本社会への影響も、また新しい一線を越えたかな、という印象」と憂いていた。

篠田氏はこのツイートに先駆けて、一連の水際対策強化の問題点を指摘している。国際政治学者の秋山信将・一橋大学法学研究科教授が、航空便の新規予約停止要請の速報記事に「本気で鎖国だよ…さすがにこれはちょっと怖いかも」と投稿したのに対し、篠田氏は「この要請にはさすがに法的根拠があるのですかね。自粛要請ですか」と懸念。

また、この日の午前中にはWHOが各国の渡航制限に懸念を示していると伝えた報道記事に触れ、「WHOへの疑念もあると思うが、これはむしろ『視点の違い』による。入国禁止措置は自国領土だけを守る政策。アフリカ人にワクチンも渡さないでやっているので特にそう。現代世界で持続可能性はない」と、感染が深刻なアフリカ地域の問題を国際社会が目を向けていない状況を問題視していた。

【追記:12/2 12:00】政府は2日、航空各社に行っていた要請を取りやめたことを明らかにした。

 
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