岸田首相、2度目の所信表明演説は9146文字中「改革」は計2か所4文字だけ

菅前首相に対抗したかっただけ説も...
所信表明演説を読み上げる岸田首相(6日国会で、画像は官邸サイト)

岸田首相は改革志向があるのかないのか?6日の臨時国会冒頭、就任2度目の所信表明演説は改めてその意図を探る試金石になった。

岸田氏は自民党総裁選当時は「小泉政権以降の新自由主義政策からの転換」を訴え、規制改革推進会議を改組する意向を示していた。さらに分配重視する“新しい資本主義”を構想。こうしたことから、小泉政権や菅政権の「改革路線」を支持する人たちからは「反改革」と見做されがちだった。

ところが、掴みどころがないのも岸田氏の特徴だ。「転換」したはずの新自由主義のイメージが強い経済学者の竹中平蔵氏を「デジタル田園都市国家構想」実現会議のメンバーに招聘した。この時はネットで保守論客などから「岸田さんはそんな新自由主義から脱却すると言いながら、竹中平蔵を徴用した事は国民に対する深刻な裏切り」(藤井聡氏ツイッター)などと疑問視されることになった。

岸田氏は10月の国会で披露した就任最初の所信表明演説では、「改革」の二文字が全く出てこなかったことが話題になった。元経産官僚の原英史氏の調べでは、「規制改革(規制緩和などの関連語含め)」という言葉が全くなかったのは、70年の大平政権以来のことだという。

「改革」の2文字が出てきた箇所とは?

そして衆院選を終えて、本格運転開始を告げる2度目の所信表明演説。文字数は見出しも含めて9146文字。このうち「改革」の2文字が出てきたのはわずか2か所だけだった。

今回も冒頭からずっと「改革」の二文字は出ず、初めて目に触れるのは11ある項目のうち6つ目の「新しい資本主義の下での成長」でイノベーションに言及したくだり(下線と太字は編集部)。

科学技術によるイノベーションを推進し、経済の付加価値創出力を引き上げます。上場を果たしたスタートアップが、更に成長していけるよう、上場ルールを見直すなど、スタートアップ・エコシステムを大胆に強化します。大学改革にも積極的に取り組みます

というように、「大学改革」という固有名詞の中でやっと出てきたものだ。もう一つは、7つ目の項目「新しい資本主義の下での分配」の終盤、社会保障改革に触れた時(下線と太字は編集部)。

(前略)全世代型社会保障構築会議を中心に、女性の就労の制約となっている制度の見直し、勤労者皆保険の実現、子育て支援、家庭介護の負担軽減、若者・子育て世帯の負担増を抑制するための改革、さらには、こども中心の行政を…(以下略)

と、こちらもいわゆる規制改革的な文脈でもなく、子育て負担抑制という分配強化の流れでの読み上げだった。

菅氏への対抗心?

しかし、だからと言って全く“”改革”にやる気がないというわけではない。地方創生を独自に焼き直したとはいえ、「デジタル田園都市国家構想」で掲げる大規模データセンター、光ファイバー、5G、あるいは自動配送、ドローン宅配、遠隔医療、スマート農業などは規制改革や新たなルールづくりが不可欠なテーマだ。

ある閣僚経験者は「菅前首相が規制改革を旗印にしていただけに、『改革』の二文字を使いたくないだけではないか」と岸田氏の心中を察するが、いずれにせよ、問われるのは結果だ。15日間の論戦は、「実行力」があるのかを見定める機会になる。

 

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