なぜ10万円給付が「景気刺激策」にならないのか?千葉県・熊谷知事の指摘に反響

政治が逃げてきた「ツケ」の問題に
ライター/SAKISIRU編集部

「18歳以下への10万円相当の給付問題」は、岸田首相が9日の代表質問で「クーポン給付を原則」と発言しながら、翌10日には山際経済再生担当相が記者会見で「クーポンの給付を無理強いすることはない」と発言するなど、混迷の度合いを深めている。

そんななか、この制度の“そもそもの不備”を指摘する、千葉県の熊谷俊人知事のツイートが話題を呼んでいる。

千葉県の熊谷知事(県ホームページより)

熊谷氏は10日朝、この制度が抱える問題点を次のようにツイートした。

現金給付は貯蓄に回る、だからクーポン券、という発想は分からなくはありませんが、これまでも消費喚起の名目で繰り返されたプレミアム商品券事業で購入された商品は主に米などの生活必需品で、玉突きで浮いた分が貯蓄に回っただけです。

生活必需品は、お金に余裕があろうがなかろうが買わなくてはならないもので、プレミアム商品券を配布したときも、その多くは生活必需品に使われた。本来、生活必需品に使う予定だった現金はその分、貯金に回ったという指摘だ。

今回のクーポンが何に使われるかはまだ詳らかになっていないが、たとえば、クーポンでランドセルを購入した場合、本来ランドセルを購入する予定だった現金はそのまま貯蓄に回ってしまうだろうということを熊谷知事は言っているのだ。なぜ、消費に回らないのか。熊谷知事は次のように指摘する。

なぜ消費しないのか、それは我が国の将来や社会保障制度を多くの国民が悲観的に見ており、自分たちで貯蓄をしておかなければ危ない、と考えているからです。この根本的な将来不安を解消しない限り、一過性のお金やクーポンを渡したところで国民の多くは消費を刺激されることはないのです。

要は、政治が長い間、社会保障改革から逃げ続けてきたことのツケだというわけだ。いつの間にか、多くの国民は自分の国の社会保障制度を信用できなくなり、自分で自分の将来を何とかしなくてはならないという危機感を持ってしまった。定収入以外の臨時収入が入ったときには、少しでも多く貯金をしておこうという気になるのは自然なことだろう。

SeanPavonePhoto/iStock

熊谷知事は、このような状況でのクーポンの配布は、少なくとも景気刺激策にはならないと指摘したうえで、政府には次のような要望を出している。

期待できない消費刺激効果のために、国民の税金の多くを事務経費に回し、かつ最前線でコロナ対応等に取り組んでいる自治体の負担を増やすのは得策ではありません。私は与野党や政府関係者に、例外なく自由に自治体の実情に応じて現金、クーポン券が選択できるようにすべきと訴えてきました。

なお、現金給付を巡っては、10日午前の記者会見で「10万円全額を現金で給付できるよう国に要望する」と述べた神奈川県の黒岩知事のほか、大阪市の松井一郎市長や群馬県太田市の清水雅義市長、山梨県富士吉田市の堀内茂市長など、各地の首長からも「現金給付で統一を」の声が出ている。

 

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