BTS好きでなかった私でも惹かれた「戦略性」を徹底分析

連載『日本経済をターンアラウンドする!経済再生の処方箋』#3

株式会社ターンアラウンド研究所
西村健(代表取締役社長)

皆さんは知っているだろうか。韓国発のアイドル、BTS(Bangtan Sonyeondan:防弾少年団)が世界を席巻しているその戦略を。

ご存知のように、BTSは2013年にデビューした韓国の男性ヒップホップグループである。7人組の男性からなり、BIGHIT MUSIC所属のタレントである。

11月21日、アメリカン・ミュージック・アワードで表彰されるBTS(提供:ABC/AFP/アフロ)

その業績がとにかく凄まじい。

  • 2021ビルボード・ミュージック・アワード(2021 Billboard Music Awards/BBMAs)で4冠(TOP SELLING SONG、TOP SONG SALES ARTIST、TOP DUO/GROUP、TOP SOCIAL ARTIST)
  • TOP SOCIAL ARTIST部門では初めて招待された2017年から5年連続受賞
  • ビルボードのアルバムチャートでは1位を4度獲得
  • シングル曲「Dynamite」が米ビルボードのシングルチャートで1位、韓国のアーティストとして初めて
  • 2020 MTV Video Music Awardsで「On」が4部門(BEST POP、BEST K-POP、BEST CHOREOGRAPHY、BEST GROUP)でノミネートされ、受賞
  • 「最もリツイートされた男性グループ」としてギネス記録に登録
  • オンラインコンサート「BTS 2021 MUSTER SOWOOZOO」で世界195か国、約133万人が視聴し、視聴料だけで約790億ウォン(約75億円)の売上
  • 2018年10月には次世代リーダーとしてTIME誌の表紙を飾った
  • 2017年にはTIME誌が選出する「インターネットで影響力を持つ25人」に
  • 「Boy with Luv」は「24時間で最も再生されたYouTube動画」としてギネス認定も

などなど、これだけの世界での活躍や業績はまさに「ビートルズの再来」。国連で歌ったり、演説したり、日本での人気も凄く、若い人たちにとってBTSは「ITで日本よりすすんでいる韓国」の象徴でもある。

BTSの3つの凄さ

BTSの凄さは第一に、ダンスのうまさ。筆者も凄さに舌を巻く。積み重ねてきた練習量が半端ないだけあって、ダンスのキレ、技術などダントツである。ジャニーズタレントと比較しても圧倒的である。

第二に、メンバーの能力。作詞、作曲、プロデューサーからなるという組織である。IQ148のラップ&作詞の天才RM(本名:金南俊)、メインラッパーで作詞作曲を手掛けるSUGAなどなどそれぞれの個性が魅力的である。

第三に、成長とそれを支えるメンバーの関係性。メンバーの仲がとても良く、売れる前に宿舎で寝食を共に生活してきただけあって、家族のようにもみえる。メンバー同士の関係性がそれぞれの成長につながることであろう。

失礼な言い方だが、韓国でもアイドルとして既存勢力の圧力が強く、当初は相当バッシングをされたようだ。個人的にも黒い色を着た、売れないラップグループだった印象があったが、いつの間にか洗練されていた。また、来日時、「原爆Tシャツ」で「ミュージックステーション」への出演を見送りになったのは有名だが、そうした「やらかし」も乗り越えてきた。

これだけではないが、主にこの3点が凄さの要因と考えられる。

BTS成功の要因について

芸能を越えた社会現象」であると韓国の社会学者が表現しているが、筆者が注目したいのは、BTSのコンセプト、メッセージとその裏にある戦略であり、それにつきる。

整理してみると、次の4つが挙げられる。

  1. 当初のコンセプト「10代、20代に向けられる抑圧や偏見を止め、自身たちの音楽を守りぬく」
  2. その次のコンセプト「Beyond The Scene:現実に安住せず、夢に向かって絶えず成長していく」
  3. 果たす役割:「勉強する機械にしたのは誰?」という歌詞でストレスを抱える若者の代弁者
  4. 提供価値:人間の尊厳を大切にすること、ファンと相互に支えあう・連帯

日本で言うと、KAT-TUNっぽい若者グループが成長を遂げ、尾崎豊のようなメンバーを中心としてGLAYのようなグループになったという感じだろうか。ダンスや歌唱の技術が高くメッセージ性がある主張はするが、ベースにあるのはコンセプトとそれを体現する「優しさや関係性」などを特徴とするグループなのだ。

いいか悪いかは別として、

  • ユニセフと協働して行っている「Love yourself」キャンペーンに参画
  • 市民団体への支援活動
  • そして「自分を愛することの大切さ」を伝えられるメッセージを打ち出す

という行動はZ世代の心をつかむのは自然のことであろう。長年、ジャニーズタレントを見てきた人間としても、ジャニーズ事務所のアイドルたちはとっても素敵ではあるが、こうした明確なコンセプトはほぼ見られない。若い子たちがBTSにはまるのも理解できる。

世界戦略が軌道に乗っているBTS。画像は2018年オランダでのイベント時(Robert vt Hoenderdaal)

コンセプトをもとにした「行動」の数々

正直に言おう。私は最初はあまり好きではなかった。今も好きとは言えない。

ルックスはそんなに「かっこいい」とはお世辞にも言えない。美男もいるが、KING&PRINCEなどのジャニーズタレントには劣る(と思う)。というか、顔がいいとか、美形だとかというルックスや外見の良さといったレベルをBTSは超越してしまっているのだ。第一に「踊りのうまさ」「歌のうまさ」という技術と研ぎ澄まされたパフォーマンス。第二に、コンセプトが「行動」。この2つが多くの人の心に響く。特に「ARMY」と呼ばれるファンに。

どういった「行動」か。

たとえば、

  • ファンへの強い愛情:インタビューでは「防弾少年団はARMYを愛している。感謝している」と必ず伝えてほしいと、インタビューアーにメンバーが念押し
  • 「LOVE MYSELF (私自身をまず愛そう)」の精神
  • 7人が1つとなり、ARMYと出会いお互いを支え合って道を歩んでくる

といった行動だ。

特にARMYへの愛情はすさまじい。日本にも手越祐也さんというタレントはいるが、彼はファンに対して、「こねこちゃん」とファンを呼ぶ。
そういったところに、筆者は誠実さを感じていた(筆者執筆記事参照)。手越さんと同じくらいにBTSはファンを大切にする、言葉だけではなく、深いレベルで「ファンへの深い愛」を示す行為をBTSはしているのだ。 

デジタル・コンテンツで圧勝

過去の中傷にも断固とした姿勢を示してここまで来たBTS。コロナでの不安や心情を歌にしたりと世界に向けたコンテンツを発信し続けている。さらに、所属事務所のBig Hit Entertainmentが名称変更したHYBEはWEVERSEというコンテンツを支えるプラットフォーム企業に脱皮しようとしている。重い腰をあげてようやくネットに注力しはじめたジャニーズ事務所との差はあまりに大きい。

クオリティがジャニーズタレントより上である。そして、コンテンツとそのベースにある戦略、そして、デジタルの活用。平均賃金や1人あたりGDPで韓国以下になってしまった日本経済。その処方箋の1つは「韓国から学べ」というところだろう。

そうなのだ、韓国から学ばないといけない。売れることを目的にする戦略、前例踏襲の無難なコンテンツ、ファンを金づるとしか思っていない姿勢、デジタルとはいえ一方通行のコミュニケーション….そんな態度ではBTSの時代性には勝てないのだ。

次回は、芸能ではなくスポーツを語りながら日本経済の再生において「ウィンブルドン現象=外資を受け入れる」ことの可能性について当研究所共同代表の小寺昇二(主席研究員)が書く予定だ。

 
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