自民党が『ラブひな』赤松健氏擁立の動きに、野党とメディアは“見誤る”?
東大・玉井教授「野党は『やられた』という感じでは」自民党が来年夏の参院選の比例選候補者として、人気漫画『ラブひな』『魔法先生ネギま!』などでで知られる漫画家の赤松健氏を擁立する方向で動いていることが16日夜に報じられ、ツイッターで「赤松先生」がトレンド入りするなど反響が広がった。
ところが、最初に報じた共同通信が「若年層の集票狙い」と書いたことを巡り、ネット民から異論が噴出する事態となった。なぜ報道に反発したのだろうか。
共同通信はこの日19時51分、複数の自民党関係者の話として赤松氏擁立の動きをいち早く報道。赤松氏自身も21時30分、ツイッターを更新し、「一部報道にあるように、自民党本部で面談をさせて頂きました。 私は表現の自由を守るために、来夏の参院選への立候補の意志を固めています」と事実関係を認め、「現在は選考過程の最中であり、党からの正式な発表がありましたら、改めて私の意思を皆様に伝えさせていただきたいと思います」とコメントした。
一部報道にあるように、自民党本部で面談をさせて頂きました。
私は表現の自由を守るために、来夏の参院選への立候補の意志を固めています。
現在は選考過程の最中であり、党からの正式な発表がありましたら、改めて私の意思を皆様に伝えさせていただきたいと思います。赤松健
— 赤松 健 (@KenAkamatsu) December 16, 2021
このツイートにフォロワーなどから「自由な表現の未来のために決意なさって下さった赤松先生に最大限の敬意を!! 微力ではありますが、応援しております!!」「表現界隈と政界との間のより強固な架け橋になって下さいませ」などのコメントが続々と書き込まれ、多くが好意的な内容だった。
一方で、共同通信が「若者世代に知名度の高い候補の擁立で集票拡大を狙う」と書いたことに疑問の声も。
若年層?おっさんでは
若年層ではないだろうと思う。 政治家の言う若年層が40〜50代なのかもしれんけど。
などの声が並んだ。異論が出た理由の一つが、『ラブひな』のリアルタイムで愛読した人たちがもう若くはないことだ。週刊少年マガジンに原作が掲載されたのは1998年から2001年、テレビアニメの初回放送も2000年のことで、いずれも20年以上が経過。当時、15歳の中学3年生だった読者でも、すでに30代半ばになる。
もう一つ、共同の記事に“ケチ”がついたのが、「こんなタレント議員みたいな扱いすんな」という声に見られるような不満だ。
東京新聞が今年1月、赤松氏にインタビューした「漫画文化の未来 先頭に立ち守る」という記事で、「現役の売れっ子作家でありながら、インターネット上にあふれる違法な海賊版への対策や、創作物への表現規制に反対する活動に注力してきた」と紹介したように、地道な活動を展開してきた。2013年、日本がTPPに参加する際には、著作権の侵害行為が非親告罪化され、原作者などの意思を問わずに法的措置が取られる懸念が一時持ち上がったが、赤松氏は二次創作を一定条件の下で認め、同人誌などが安心して創作できるように「同人マーク」を提案したこともある。
野党は「やられた」と思えるか?
知的財産を専門とする東京大学の玉井克哉教授は、赤松氏擁立の報道を受けてツイッターで「『客寄せパンダ』と揶揄する向きもあるようだが、まったく的外れだ。漫画家さんからの人望も厚い」と指摘していた(太字は編集部)。
また、玉井教授は同じツイートの前半で、このような独自の見方を示す。
赤松さんを自民党が擁立か。野党は「やられた」という感じではないか。というか、そう感じないようでは、野党の未来はない。 表現の自由のため果敢に闘ってきた人を、与党が擁立する世の中になったか。
赤松さんを自民党が擁立か。野党は「やられた」という感じではないか。というか、そう感じないようでは、野党の未来はない。
表現の自由のため果敢に闘ってきた人を、与党が擁立する世の中になったか。「客寄せパンダ」と揶揄する向きもあるようだが、まったく的外れだ。漫画家さんからの人望も厚い。
— 玉井克哉(Katsuya TAMAI) (@tamai1961) December 16, 2021
たしかに、与党・自民党と野党・社会党が国会で二大勢力だった「55年体制」の感覚で言えば、自民党が、表現の自由を規制するような権力者サイドにいて、規制に立ち向かうのは反権力の野党という立ち位置を想起しやすい。
しかし近年の自民党はそうした旧来的なイメージから脱却している。表現の自由を最重点政策に掲げ、野党時代からネット民で絶大な支持を得ていた山田太郎氏を2年前の参院選で公認。山田氏は組織を持たないはずなのに、ネットで全国津々浦々から票を集め、同党比例区の候補者で2番手となる53万票を獲得し、党内外に衝撃を与えた。この日もネット民の中には、赤松氏と山田氏のコラボを期待する声も散見された。
赤松氏が正式に公認候補として出馬した場合、どれくらいの票を集めることができるのか。自民党に対峙する野党は、支持層の新たな掘り起こしや話題性でこうした注目される“ニュータイプ”の候補者を擁立できるのだろうか。玉井氏の指摘はまさにそうした課題だろう。
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