ガーナ人男性の生活保護訴訟、担当弁護士が語る裁判の狙いとは

ネット上の批判「予想していた」
ライター/SAKISIRU編集部

外国人であることを理由とした生活保護申請の却下は生活保護法違反だとして、千葉市在住のガーナ人男性が今月14日、行政に処分見直しを求める訴訟を千葉地裁に起こした。

このニュースを受け、ネット上では「こんなのを認めたら、日本は働かない外国人だらけになる」「日本をなめるな」「いったん帰国して、健康になってから日本に留学するべき」といった主に批判の声が多数寄せられている。

※画像はイメージです(Pheelings Media /iStock)

生活保護法の第一条に「国が生活に困窮するすべての国民に対し」と記載されている。条文を読む限りでは、無理筋だと思える裁判だが、弁護士はどのような狙いで訴訟に打って出たのか。そして、勝算はどのくらいあるのだろうか。この裁判の弁護を担当する及川智志弁護士に聞いた。

及川弁護士は、裁判の狙いについて次のように語る。

「もちろん、裁判ですから勝つことが目的です。ただ、簡単ではないことは初めから分かっていますし、勝てたとしても相当長い時間がかかるでしょう。ただ、やらざるを得ないんですね。生活保護を受けられないと、このガーナ人男性は生きていくことができない。もう一つは、今回の裁判はこの原告だけの問題ではないということです。全国的に、コロナ禍で仕事を失い、だけど母国に帰れない外国人が急増しています。そうした人たちが生活保護を受けられるかというと、現行の法律では難しい。この裁判は、日本に外国人が増える中、生活保護法は現状のままで良いのですかという問題提起のためのものでもあります」

ネット上では、「ガーナ大使館に頼れないのか」といった意見も多数寄せされている。もちろん、このガーナ人男性やその支援者たちもガーナ大使館には相談に行った。しかし、具体的な支援には結びつかなかったのだそう。

「もともと大使館というのは、生活保障をするようなところではないのでやむを得ない側面はあります。ガーナ大使館からも支援を受けられない、生活保護も受けられないということで、支援者の方が困ってしまって、私のところに相談に来られました」(及川弁護士)

画像はイメージです(y-studio /iStock)

裁判について、ネット上で批判の声が多数寄せられるであろうことは「予想していた」と及川弁護士は述べる。

反発の声が寄せられることは予想していました。そう思う人が多いのも仕方がないところもあります。ただ、ネット上での意見だけがすべてだと思いません。この裁判は、日本が外国人の“人として生きる権利”を認める国なのかそうではないのかを問う裁判でもあります。一人でも多くの方にこの裁判の存在を知っていただき、少しでも支援者が増えてくれたらと思っています

確かに、日本が外国人の“人として生きる権利”を認めない国と外国に見られてしまえば、ただでさえ低下しつつある国際社会での日本の地位は一層低くなってしまうだろう。政府は外国から優秀な人材に来てもらおうとさまざまな施策を講じているが、外国人から選ばれない国になってしまっても仕方がない。とはいえ、生活保護の範疇を全外国人に拡大してしまえば、日本の財政は一体どうなってしまうのかという不安は付きまとう。

どちらにせよ、この裁判は長引くと思っています。一審でこちらの訴えが認められれば良いのですが、そう簡単ではないでしょうし、そうなった場合は当然、相手側は控訴してきます。最終的には最高裁まで争うことになるでしょう」(及川弁護士)

来年1月には第1回口頭弁論が行われる予定だという。

 
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