「岸田政権どう見てますか?」SBI北尾社長に聞いたら、想定以上の答えが返ってきた
「公明より維新と提携を」、菅前首相との会食話もSBIホールディングスの北尾吉孝社長が22日、TOB(株式公開買い付け)による新生銀行の買収成功後、初めての記者会見を東京・六本木の同社で行った。
会見はSBIと新生銀のシナジーをどう作り出していくかに関心が集まった一方、冒頭から先手を打つように、TOB合戦に途中参戦した旧村上ファンド系の投資会社について自ら言及。さらには、質疑で筆者が尋ねた岸田政権の初動3か月にも話題が広がるなど、“北尾節”が止まらない展開となった。
村上氏にいきなり言及、公的資金返済の新構想
記者会見は当初14日に開催予定だったが、北尾氏の急用を理由に中止されていた。冒頭で「大変ご迷惑をおかけした」と陳謝した上で、「私が危篤状況とか逮捕されたとかいろんなニュースが流れていたようだが」とジョークも。会見を延期した一因に、今回の買収合戦に参戦したアクティビストが発表する内容を一通り見てからに仕切り直したようだった。
旧村上ファンド系の投資会社は今回、SBI側に保有株を全て売却したことが明らかになっている。北尾氏は、村上世彰氏が通産省時代に自身と会った際の昔話にも言及。村上氏が、株式の持ち合い制度のもとで経営者があぐらをかいていた当時の日本企業に問題意識があったと語っていたといい、「この国に対する思いはおありの方。村上さんは最終局面ではうちに大義があるとみて(TOBに応諾)してくれるだろうと思っていた」との見立てだった、と強調した。
そして、注目される新生銀の再建や公的資金の返済見通しについては、新生銀の自力成長とSBIとのシナジー発揮に加え、余剰資本を活用した海外でのM&A推進にチャレンジする構想を提示。
公的資金約3500億円の返済方法は、上場を維持した場合には、株価を現在の3倍となる7450円に引き上げて返済する必要があったが、昨今の低金利などの経済情勢からも厳しいとの見方が多かった。
これについて北尾氏は「(上場したまま)株価の大幅上昇を図ることは、これはもう困難」と述べた上で、新たに「(株価の)7450円と(公的資金の)3500億円をいつまでも結びつけて考え方はおかしい」として、非上場化による返済を検討していることを明らかにした。具体的には、新たな優先株を出すなどのアイデアの一端を披露したものの、現行制度でどこまで可能か、弁護士や学者らへのヒアリングや金融庁との折衝を重ねて具体化を急ぐ構えだ。
岸田政権には「グズグズしたらいかん」
会見の主題や、質疑応答の関心は当然のことながら新生銀の話題がメインとなったが、菅前首相ら有力政治家とも親交のある北尾氏とあって、質疑に入り、筆者は、新生銀のTOB開始と同時期に発足した岸田政権のここまでを尋ねてみた。
岸田政権の「新しい資本主義」は金融所得増税などの分配を意識した路線で、投資家らの不興を買っているが、「課税がどうという話が出たら、すぐそれまで引っ込める。何かをもうすぐ引っ込める人だね。いいんじゃないの。『過ちを改むるにはばかることなかれ』だから」と皮肉たっぷり。それも序の口で、コロナ対策の話になると一気にボルテージが上昇。
ワクチンの3回目接種について、2回目からの接種期間を、世界各国より遅れて「8か月」から短縮すると政権が打ち出したことには「オミクロンの実態を全くわからないで何か月というのも早すぎるし、あるいは先手を打って6か月とか。韓国は4か月でしょ。そして、ヨーロッパもアメリカもブースターを『早く打て』と言っている。日本も、昨日は(東京の新規感染が)38人、だんだん増えてきて来ている。グズグズしたらいかん」と苦言。
金融所得課税、菅前首相と疑問で一致
さらに菅前首相と最近会食した時のエピソードも披露。菅氏に「これからやりたいことは何か」と尋ねると、菅氏は、2000兆円にのぼる個人金融資産の50%超が預貯金になっている現状について「なんとかしないと」と述べ、官房長官在任中に、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)で90兆円の利益をあげたことや、NISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)の普及に力を入れたことを挙げながら、「徹底的にやるべきと思っている」と述べていたという。
その際、菅氏が、岸田政権が検討する金融所得課税の強化を「ピンと来ない」と述べ、北尾氏も「全くそう思う」と同意したことも明かした。北尾氏はその話の流れで「そもそも(岸田首相は)成長と分配の好循環というが、まずはどうやって成長に繋げるのか」と、分配重視の“新しい資本主義”のあり方を疑問視。
さらに岸田政権が10万円給付をめぐり、クーポンか現金かで迷走した件にも触れて、「公明党に振り回されている」との見方を示し、「いつまで公明党と(連立を)やっているのか。維新と提携した方がいい」とまで注文が止まらなかった。
会見での政治の話題はあくまで北尾氏個人の見解を披露したものだが、「日本はこの何年、成長したのか。成長できないのが問題」と北尾氏。世界の経済史でも空前の長期停滞が続く日本経済に、有効な打開策を打ちきれない政治の機能不全に我慢がならない様子だった。
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