世界的インフレ:日本人が世界のモノを買えなくなる日が来る?

インフレの波に日本が耐えるヒントはどこか
ジャーナリスト
  • 世界的なインフレはどこまで続く?日本への影響は?各種データから占う
  • 輸入品は既に驚異的値上がる一方、日本から海外への輸出が絶好調に
  • 世界が豊かになっている…潮流は「内需から外需へ」。ヒントは….。

世界各国で起こるインフレはどこまで続くのか。世界のインフレに、日本は影響を受けることはあるのだろうか。

アメリカでは10月以降、物価を示す消費者物価指数(CPI)が6%台と31年ぶりの高値となった。11月の米・生産者物価指数(PPI)に至っては、前年比9.6%と、統計市場最大の数字をはじき出した。これまで「インフレは一過性なものにすぎない」としていた米FOMC(連邦公開市場委員会)も、12月になってこれを撤回。量的緩和を終了し、22年には3回の利上げを予定している。

クリスマスシーズンをインフレが直撃(wildpixel /iStock)

米国だけでなく、イギリスの11月のCPIも昨年比5.1%を記録。3年4ヶ月ぶりに政策金利の引き上げに動いた。同様に、欧州中央銀行も金融緩和縮小へと動着、今以上のインフレを食い止めようと動き出している。このインフレは世界的潮流ともなっており、来年も続きそうだ。OECDは1日、「世界的な物価上昇は想定よりも長く続く」と予測した。

デフレ経済が続き「インフレとは無縁」とされてきた日本はどうだろうか。10月の消費者物価指数(CPI)は、去年比0.1%と微増しているにすぎない。世界で起こるインフレと比べると、驚くくらいの低値である。やはり日本だけはインフレとは無縁なのだろうか。

輸入品は既に驚異的値上がり

輸入品をみると、すでに値上がりは起きている。輸入品の価格は、昨年比で38%も激増しているのだ。こうした輸入品の値上げが影響したのだろうか、11月の企業物価が9%も上昇している。これは41年ぶりの高い数字だという。これは今後、日本の消費者向けの物価にも反映されることを示唆しているといえる。

「資源のない国日本」は、外国からの輸入品に頼ってきたわけで、海外のインフレも対岸の出来事だけに留めることはできないだろう。今までは、消費が低迷する日本において、これまで原材料価格の値上げが起きても、価格に反映をしないよう企業が努力してきたものだが、海外からの仕入れ価格がこれほど著しく高騰すれば、企業の痩せ我慢も自ずと限界となってくるだろう。

※画像はイメージです(Promo_Link /iStock)

実際、原材料を輸入品に頼っているものから値上がりが始まっている。牛丼チェーン店の「すき家」は、米国産牛肉の値上がりを受け、12月23日から牛丼の並盛を350円から400円に引き上げた。牛肉の仕入れ価格が昨年は1キロ600円台だったのが1100円台と、昨年から約2倍近くに値上がりしたからだ。

また小麦関連製品も来年年初から、値上がりラッシュが予定されている。政府が10月に輸入小麦の民間に売り渡し価格を半年前と比べ19%上げたからだ。山崎製パンは、来年1月1日から食パン等の出荷価格を平均で7.3%ひき上げる。日清フーズも1月4日から小麦粉製品を約3~6%値上げを始める。

こうした値上げは食料品だけではない。住宅設備メーカーのリクシルは、原材料価格の高騰など原因として、バス・トイレを2022年の4月以降の受注分から最大40%値上げすることを発表している。これらのように、今年まではなんとか価格にまでは反映してこなかったものの、来年は値上がりを実行する企業が増えてくることだろう。

通常のインフレならば、値上げとともに賃金も徐々に上がっていく好循環があるものだが、現状の日本では賃上げまでは至らないだろう。日本企業の利益が増えるわけではないからだ。

こうなると、国民の財布はますます厳しくなってくる。実際、給与はインフレどころかデフレ傾向なのだ。国税庁の「令和2年分民間給与実態統計調査結果」では、昨年の給与の平均は433万円。前年比ではマイナス0.8%となっている。給料は減っているのに、物価は値上がりするという最悪な状況が現実になろうとしている。

これまでの円安傾向に加え、海外でのインフレが加速していくと、海外の商品を日本人が買えなくなる時代がやってくることも想定されてくる。世界が急速に豊かになる一方で、輸入品を中心にモノの価格が高騰し、日本との格差がどんどん開き、日本人がものを買えなくなる日も近くにやってくるかもしれない。

海外輸出はこれから絶好調

narvikk /iStock

このように世界のインフレの影響で日本の輸入が厳しくなろうとしている一方で、日本から海外への輸出が今、絶好調になっている。日本貿易会「2022年度わが国貿易収支、経常収支の見通し」によると、2022年の輸出は、86兆円と過去最高となると試算されている。2020年の輸出では、たった69兆円に過ぎなかったのだから、いかに短期間に輸出が急上昇しているかがわかる。

車の輸出は、20年度には9.5兆円だったのが、22年は12兆円となると予測されている。食料品輸出も好調だ。2021年の農林水産物・食品の輸出実績が2021年11月についに1兆円を突破した。安全で高品質な日本食が、食にこだわる海外の富裕層らに受けているようだ。

2022年1月1日からは、地域的な包括的経済連携(RCEP)協定発行による関税の引き下げがスタートして、この状況に大きな追い風が吹いている。GDP、人口ともに世界の約3割を占める日本を含めたアジア15か国が日本に輸出する際に存在した関税が段階的に実質ほぼ撤廃される。これは、22億人のマーケットで無関税のマーケットが開かれたことを意味している。日本の輸出企業にとって非常に有利になるといわれている。

結局のところ、世界の物資価格高騰も、日本の輸出増大も、世界が豊かになっているから起こっていることである。今後は外需に目を向け、海外のニーズを掴んだ輸出企業が今後は高い利益を上げられる。そんな傾向はこれからより一層に明確になっていくだろう。

ここに、これから訪れるであろうインフレの波に日本が耐えるヒントがあるように思える。これまで、日本からの輸出といえば車や鉄鋼品ばかりだったが、これからはハードばかりでなくソフトなものも輸出したいところだ。内需ばかりに目を向けていると景気は冷え込むばかりだが、視野を広げて日本が国内産のいいものを世界に売り込み、彼らの豊かさを取り込められることができたら、日本も回り回って、世界の豊かさを享受できるようになるかもしれない。

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