北京オリンピックへの対応に見る、岸田総理の危険なあいまいさ
ダイナミズムを欠き、外交的成果逃す- 岸田政権がようやくの外交ボイコット。態度を留保し続けた理由は?
- 北京オリンピックを外交的舞台として最大限に利用できたはず
- そうした中で、立憲民主党・白真勲参院議員が国会で面白い質問
岸田総理は24日、来年の北京オリンピックに関連して、政府関係者を派遣しない方針を表明した。一方で、「外交ボイコット」という表現は避け、参議院議員で東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会会長の橋本聖子氏らを派遣することで、実質的には「北京オリンピックの開催には賛同する」という意思を表そうとしたものと見られる。
つまり、中国のメンツは立てつつ、米国などの「外交ボイコット組」にも強調する姿勢を示すという、雑誌「AERA」が言うところの「足して2で割るような」対応を決定したということである。

ようやく発表「外交ボイコット」
この、北京オリンピックの問題に関しては、今月6日に米国が「外交ボイコット」を表明して以来、9日の衆議院本会議において、国民民主党の玉木代表が中国の人権状況を踏まえ、「日本も外交ボイコットを検討すべきだ」などと求めていたが、岸田総理は「適切な時期に外交上の観点、諸般の事情を総合的に勘案し、国益に照らして自ら判断したい」と述べて決断を先送りしていた。
これに対し、安倍元総理が「中国に対する政治的メッセージは日本がリーダーシップをとるべきだ。時を稼いでどういう利益があるのか」と批判していたが、14日になって、自民党の高市政調会長のほか、自民党の下村前政調会長など複数の(ウイグルやチベットなど中国の人権問題に関わる)議員連盟の幹部が合同で岸田総理に対して、「外交的ボイコット」を求める声明を提出した。
しかし、これに対しても岸田総理は明確な姿勢を表明しないまま時は経過し、23日になって業を煮やした自民党の外交部会と外交調査会が、政府関係者の見送りの早期表明を求める決議を林外務大臣に申し入れ、ようやく岸田総理が今回の発表に至ったという経過であった。
なぜ今まで態度を留保?
それにしても、これだけ結論を引き延ばした意図はなんだったのだろう。このようなあいまいな結論にすることは、岸田総理の腹の内では最初からほぼ決まっていたのではなかったのか。筆者が思うに、米・豪・英国などの「外交ボイコット」表明に続くタイミングで早々に「政府関係者を見送る」と表明すると、「外交ボイコット組」との強調色が強く前面に出てしまうので、間をおくことによって「わが国はこれらの国々とは一線を画している」という印象を中国に与えたかったではないだろうか。
自民党で元陸上自衛官の佐藤正久外交部会長は、(臨時国会の閉会に合わせて行われた)21日の記者会見でも岸田総理がこの問題に対する態度を明言しなかったことで「ガッカリ!ある意味、(外交ボイコットはしないと)態度を表明している韓国の方が立派。日本外交、大丈夫か?」と自信のツイッターに書き込んでいたが、全く同感である。
そもそも、政府は、中国が(人権問題でG7などから批判を受けているさ中で)国の威信をかけて遂行する北京オリンピックという国際(外交)的な大舞台を、わが国として戦略的に最大限利用しようと本気で考えたのであろうか。
例えば、安倍元総理の言うように米国に先駆けてでも「日本がリーダーシップをとって(ウイグル自治区などの人権問題は決して許容できないなどと)中国に対して断固とした態度で政治的メッセージを出す」か、あるいは、フランスのマクロン大統領のように、「オリンピックは政治化されるべきではなく、『有益な効果』がある行動のほうが対応として好ましい」として外交ボイコットを批判し、政府からしかるべき人物を派遣して大会に花を添える、というような中国に対する積極的な意思表示の姿勢だ。これが、今後の中国に対するわが国の外交の指針となるだろう。
ほかにも、わが国にはもっとダイナミックな戦略もあったと筆者は考えている。
北朝鮮の動向

15日、参院予算委員会で立憲民主党・白真勲議員が面白い質問をした。それは、北朝鮮の金正恩委員長が北京五輪に来る可能性を踏まえた上で、岸田総理に対し「いいチャンスだと思いませんか。中国の人権状況をアピールする立場からも、そういう(拉致問題解決のための)テーブルを用意してくるんじゃないかと思う」というものであった。この白議員がそこまで考えて質問したのかどうかは不明ながら、これは、政府に確固たる戦略と外交的な力量があれば「かなり大きな外交的成果が期待できる」という面で、とても興味深い指摘である。
この質問の際、岸田総理は「今のところ私自身が参加することは予定しておりません」と不参加を明言してしまったが、総理が「適切な時期に外交上の観点、諸般の事情を総合的に勘案し、国益に照らして自ら判断したい」と態度を保留して中国を揺さぶる気があるならば、ここで自らの不参加を表明する必要はなかったように思う。
というのも次のようなシナリオが十分考えられたからである。(続きはこちら)
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