参院選が分岐点、「政治に風穴が開く年」か「増税の地獄に進む年」か

【展望2022】減税と規制改革、国民が求める「民の側」の政治
国際政治アナリスト、早稲田大学公共政策研究所招聘研究員

昨年後半、自民党に岸田文雄 増税政権という日本にとって最悪の選択肢が誕生した。年末に行われた与党税調では増税の弾込めが進められ、各種メディア取材では岸田首相の盟友である宮沢税調会長が消費税再増税も含めた大増税の狼煙を挙げている。そして、野党からのガソリン税・消費税減税法案も悉く無視し、いつも通りの「補助金バラマキ&大増税」という自民党のお家芸が繰り広げられようとしている。

国会閉幕を受けて記者会見する岸田首相(21年12月21日、官邸サイト)

増税勢力の増長を止められるか

7月に予定されている参議院議員選挙の結果次第では、次の衆議院議員選挙・参議院議員選挙までの3年間、岸田首相は次々と増税を実現する政治的な時間が与えられる。岸田首相の「新しい資本主義」というデタラメ標語(政権発足後に審議会を立ち上げて内容検討など論外)はともかく、参議院議員選挙後の税制改正要望や年末の与党税調に向けて、各省庁がこのスカスカのスローガンに便乗し増税と利権漁りを企んでいることは想像に難くない。

安倍政権・菅政権時代は、野党第一党である立憲民主党が増税に賛成する経済音痴だった。同党は旧総評系を支持基盤に抱えたお役所利権の政党であり、国内政策では自民党とほぼ変わりない増税補完勢力であったと評しても過言であるまい。案の定、立憲民主党は昨年末の臨時国会でも自らが主張した消費税や所得税の減税法案の原型すら示さず、「ナンチャッテ減税勢力」ぶりを他の野党共闘勢力ともにエンジョイし続けている。

国民はこの国民を舐め切った増税補完勢力に次回の選挙で完全に引導を渡すべきだ(同会期中に減税に向けて立憲民主党に何ら働きかけなかった野党共闘勢力も同罪だ)。

日本の憲政史上、第一回帝国議会の議題は、減税(民力休養)と行政改革(政費節減)であった。民の側に立った代議士は増税に反対した。増税は民の側が何も言わなくても官の側が勝手に主張するものであったからだ。

「帝國議會衆議院之圖」(1890)=国立国会図書館デジタルコレクション

一方、現代では与党は各中央省庁の官僚と一体化し、野党第一党は公務員系労組が支えている。彼らが増税派であることは必然的なことだと言えるだろう。彼らは増税阻止や減税に賛同すると口や素振りでは示すが、それを実行することはない。

今、日本の国会に必要な勢力とは「減税」と「行政改革」を訴える「民の側に立った本来の代議士」である。

参院選で「風穴」を開けるか

規制改革を標榜した叩き上げの菅政権は世襲政治家の事実上のクーデターで倒れたが、その代わり、昨年末の衆議院議員選挙では日本維新の会や国民民主党が勢力拡大することになった。特に日本維新の会はフロー減税と規制改革を掲げて保有議席を約4倍に増やすことに成功している。

直近の世論調査では、参議院議員選挙の投票先として、日本維新の会は立憲民主党を上回る数字を得ているケースもあり、国民が「民の側」に立つ政治勢力を求めていることは明白だ。このまま同党が躍進して与党増税勢力や野党の増税補完勢力を打ち倒すことに大いに期待する。

仮に岸田政権が参議院議員選挙で過半数割れした場合、政府与党の中で蠢く増税勢力の攻勢は一時的に和らぐ可能性がある。参議院が捻じれる場合、政治家の頭の中で常に「選挙」が意識されるようになるからだ。選挙前に堂々と増税を実行できる政治家はいない。まさに増税勢力による既存政治に「風穴が開く」状況と言えるだろう。

一方、過去に類似の状況があったことを忘れてはならない。みんなの党は参議院議員選挙躍進後、主導権争いの内紛や党首のスキャンダル(最終的には不起訴処分)で政党自体が吹き飛ばされた。今の政治構造に風穴を開けようとした場合、既存勢力が同じような冤罪を作り上げ、同様のことが繰り返されることを念頭に置いたほうが良い。では、どうすれば良いのだろうか。

ファンクラブでなく、民の意志の“塊”を

みんなの党の崩壊の原因は「フワッとした無党派層」に支えられていたことにあった。

今、必要な政党は一人のカリスマ的な党首のファンクラブではなく、「強固な民の意志」に支えられた政党である。

既得権側が1人の政治家の首を取ったところで終わらない、国民のマグマのような意志を作り上げていくことが大事だ。(その点でも日本維新の会が昨年末の党人事で国民の意志の受け皿となる組織政党に移行し始めたことを評価したい。維新の他に減税に前向きな政党としては、国民民主党やN党などの国政政党も存在しているが、やはり党首や労組などの一部のキーパーソンのカリスマや意思決定に依拠している点が難点だ。)

参議院議員選挙で岸田政権(及び野党の増税補完勢力)が勝利することがあれば、その後、日本経済は増税地獄となり我々の生活は益々苦しくなる。そして、コロナ禍から立ち直ることは不可能となるだろう。

今こそ「民の側に立った政治勢力」に国会を取り戻し、増税かor減税かという政策の評価尺度で常に判断することが重要だ。そのためには民意の燃料が必要となっている。与野党の増税政治のやらせ時代が終わり、政治に風穴が開く機会が到来している。

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