【参院選2022】東京選挙区、小池ファースト「台風の目」になるか

世代交代絡み「大乱戦」の予兆
報道アナリスト/株式会社ソーシャルラボ代表取締役

参院選の東京選挙区は、良くも悪くも地縁の薄い首都らしく「空中戦」の要素が年々強まるばかりだ。組織力で見劣りしていても、テレビ的な知名度に加え、有権者が投票したくなる「ストーリー」性が備われば、新人でも当選ラインの50万票超えは可能だ。

ベテラン現職の引退も予想される中、各党が著名人を含めて誰を擁立するのかも注目で、前回に続く当選者を狙う維新と、衆院選比例で国民民主を超える票を集めたれいわ新選組に加え、そして小池都知事が後ろ盾となるファーストの会の参戦は必至、全国屈指の激戦区になりそうだ。

蓮舫、竹谷、山添は安泰だが…

蓮舫氏(参院サイト)

東京選挙区の定数は6。今回改選を迎える中で、4期目をめざす立憲民主党の蓮舫氏は過去3回連続でトップ当選。知名度からして再選は確実とみられるものの、前回選挙から6年間、彼女自身や党を巡る情勢は様変わりし、決して順風ではない。

記憶の薄れている読者も多いだろうが、6年前の選挙時、彼女が所属していたのは民進党。つまり、その後、立民と国民に分裂する前のことだ。また、蓮舫氏自身はその年の秋に民進党の代表になったものの、(筆者も関係しているが)いわゆる二重国籍問題が発覚。これを機に党内外で求心力を落とし、立民に移籍してからというもの、メディア露出こそ一定しているが、目立った政治的成果を残しているとは言い難い。

竹谷氏(参院サイト)

一方、同じ女性の現職である公明の竹谷とし子氏は堅調な選挙戦になりそうだ。この6年間、政府入りはしてないが、参院で総務委員長と法務委員長を歴任。食品ロス削減推進法成立などに尽力した。今回も70万票以上は手堅く集めて再選しそうで、次の6年間にどこかの副大臣に就任しそうだ。

山添氏(参院サイト)

共産の山添拓氏も順当に60万票以上を集めて再選の可能性は高い。ただ、趣味の「撮り鉄」(鉄道撮影)にハマる余り、鉄道の敷地内に無断で入ってしまったことで鉄道営業法違反で書類送検されるなど“おっちょこちょい”な一面も。それでも致命的な不祥事ではあるまい。

ベテラン2人引退ならさらに混沌

ここまで述べた3人、蓮舫氏は圧倒的な知名度、竹谷氏、山添氏は強力な固定票を擁するので予想がつきやすいのだが、残りの3人は流動的だ。しかも自民党の2人がおり、またそのうちの1人と立民の大ベテランの2人が高齢のため、出馬するかどうかも情勢が左右する。さらにそこに維新、国民、れいわ、そして小池新党が殴り込みをかけてくる「大乱戦」の予兆がある。

朝日氏(参院サイト)

まず自民の2人のうち、2期目をめざす朝日健太郎氏。元バレーボール日本代表として知られ、各地の選挙応援で199㌢の高身長はいつも目を引く。菅政権では国交政務官として初めて政府の役職も経験した。ただ、発信が物足りない。たとえば、東京オリンピックの時期に開催反対論に毅然と物申すなどアスリート議員としてもっと存在感を見せてもよかった。自民党内でも業界団体系の中川雅治氏と異なり、無党派層向けの候補者として擁立された経緯もあることから、盤石とは言い難い。

その中川氏はこのほど公認が見送られた。安倍政権で環境相もつとめ、70代半ばとあって引退の可能性も報じられている。すでに「ポスト中川」を巡っては、自民党内では地方議員からの鞍替えも含めて、党内から虎視眈々と狙う動きも噂に聞くが、党外から新人を擁立する場合は、旧大蔵・環境省出身の中川氏と同じく官僚系、もしくは業界団体を意識した地味でも手堅い候補者になるのだろうか。

立民の小川敏夫氏は前回選挙で50万票と、維新公認の田中康夫氏を3万票差で競り勝つ薄氷の勝利。得票率も10%に届かない状態で掴み取った4選だった。当選後、副議長にも就任し、野党の参院議員としては“位”を極めたこともあってここを潮時にしてもおかしくはない。

仮に小川氏が勇退となっても、立民は蓮舫氏に加えて2人目と鼻息を荒くできるかといえば、簡単ではない。塩村あやか氏と山岸一生氏の両新人を擁立した3年前の時点より党勢は落ち込んでいる。今年前半の政局で泉代表が党勢を再度浮上させる可能性はもちろんあるが、国民民主は首都の選挙区に候補者を出さないわけにはいかないし、ここで旧民主系同士が競合する。さらに第三極から伺う、維新、れいわ、小池系(ファーストの会)の殴り込みにも勝たねばならない。実際、3年前の参院選は、山岸氏は当初リードするも、最後は維新の音喜多駿氏に逆転されて涙をのんだ。

維新、小池…「第三極」勝利の条件

音喜多氏(参院サイト)

維新は衆院選で出た日の出の勢いを持続するためにも、東京と神奈川は東日本の重点地区に指定している。ただ、本拠地の大阪と違い、支持層を固め切れていないため、ある程度の知名度のある新人候補を擁立することが基本条件だろう。前回アプローチして失敗した、世の中の障害者像を革新したベストセラー作家の男性や、有名討論番組でおなじみの女性国際政治学者あたりを擁立できれば中位当選もありうるが、現実的にはバラエティ番組で女性たちと“あいのり”していた元国会議員の弁護士クラスの知名度に落ち着くのだろうか。

いずれにせよ、維新を支持するのは非自民の保守中道層、あるいはロスジェネ世代のリア充層が主体なので、ここに刺さる候補者をまず選びたいところだろう。しかし、これは小池系のファーストの会ともターゲット層がガチンコで重複する。

この期に及んで小池氏やファーストの会が著名人を含めてポテンシャルの高い新人を連れてくることができるのか、大いに見ものだが、テレビ的な知名度と知性、そして既存政党との差異化を最大化できる魅力や政策発信力を兼ね備えた人物なのかどうか。たとえ、知名度はあっても他の要素があまりに見劣りすると台風の目になるどころか、逆風に吹き飛ばされてしまうはずだ。

特にゴールデンウィーク明け、通常国会終盤から6月前半にかけ、さまざまな候補者の名前が出てくるだろうが、読者の皆さまには、その時ここまで述べた「指標」を一つの判断材料にしていただければと思う。

 
報道アナリスト/株式会社ソーシャルラボ代表取締役

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