2022年 元日朝刊、結局どうだった?

安定の読売、毎日は2年連続...

新聞社が1年間でもっとも気合を入れて制作するとも言われる元日の朝刊。過去には国家機密クラスのド級スクープもあって世間を驚かせたが(きのうの記事参照)、2022年元日の新聞各紙一面はどうだったのか。以下、部数順に見ていこう。

Zerbor /iStock

まずは読売新聞。正月特集は3日付から本格化させ、元日は伝統的にスクープを重視してきたが、今年は「【独自】米高速炉計画に日本参加へ…「もんじゅ」の技術共有、国内建設にも活用」との表題で、「米原子力新興企業と米エネルギー省による次世代の高速炉の開発計画に、日本が参加することがわかった」と原発エネルギーの最新動向を持ってきた。高速炉はいわゆる核燃料サイクルの重要な一環の一つだが、日本は「もんじゅ」廃炉が決まるなど行き詰まりかけていたが、米マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏のテラパワー社と米エネルギー省が計画する新型高速炉に日本側がこれまでの知見を提供する。

一般ウケはいまひとつかもしれないが、正月早々、エネルギー関係者には景気良いビッグニュース。自民党の細野豪志衆院議員は早速ツイッターで反応。「原発事故を政権真ん中で経験し、原発とエネルギー政策難しさを痛感した。温暖化を考えて再エネ一本足打法は限界で、選択肢は多い方がいい。私は高速炉同盟賛成」と評価していた。

朝日新聞は、準トップの位置で日本海側に大雪をもたらした強い寒気を伝えるストレートニュース。トップは新連載「未来デザイン ともに歩もう」の1回目、「未来予想図、ともに歩もう」と題し、音楽ユニット「DREAMS COME TRUE」の2人を取り上げ、コロナ禍で音楽業界が苦境に立たされた中で、試行錯誤するストーリーを描いた。

毎日新聞は昨年に続きスクープで勝負。連載「オシント新時代 荒れる情報の海」の一環で、「ロシア政府系メディア、ヤフコメ改ざん転載か」(紙面の見出しは『露、ヤフコメ改ざん転載』)を持ってきた。「ロシアの政府系メディアが、日本国内最大級のポータルサイト・ヤフージャパンのニュース配信サービス『ヤフーニュース』の読者コメント欄をロシア語に翻訳して転載する際、元の投稿の文章を改ざん・加筆した疑いがあることが分かった」と指摘。その実例として、昨年9月、ニューズウィーク日本版がヤフーニュースに配信した記事に反応したコメント内容について、ロシア政府系のネットメディア「イノスミ」が原文にないアメリカ不信を強調する内容に改ざんされていたことを挙げた。

「イノスミ」は毎日の取材に対し、改ざんの意図を否定したが、記事の識者コメントには、ロシアの専門家として知られる小泉悠氏が登場。「ロシアによる日本への情報戦は、ほとんど研究されていない」と警鐘を鳴らしている。

日本経済新聞は恒例の正月大型企画をトップに配置。今年の連載は「成長の未来図」と銘打ち、「資本主義、創り直す(※)と横見出しを大々的に展開する。「資本主義が3度目の危機にぶつかっている。成長の鈍化が格差を広げ、人々の不満の高まりが民主主義の土台まで揺さぶり始めた。戦前の大恐慌期、戦後の冷戦期と度重なる危機を乗り越えてきた資本主義は再び輝きを取り戻せるのか。成長の未来図を描き直す時期に来ている」とのリード。どこかの国の首相が掲げる「新しい資本主義」を意識したような文脈だ。

なお日経は一面準トップに特ダネ「海賊版、民間連携で抑止(※)を配置。日米中など10カ国超の著作権保護団体が今年4月、共同の国際組織を立ち上げてグローバルに展開する海賊版の撲滅に向け、各国の捜査当局に働きかけると報じた。

産経新聞は正月企画「2030年への処方箋」。「『電子暗号』覇者がAI社会制す(※)と見出しで、AIの先端技術の可能性を論じるとともに、主要国が覇権を争うデータ社会を日本がどう生き残るかとの課題を提起した。一見すると日経のようなテクノロジー国益文脈にも読めるが、そこは“保守の矜持”を忘れない。今年の連載の狙いとして、「8年後の2030年までに世界や社会の様相が一変すると指摘される中、日本は独立国として真の意味での「主権」を取り戻し、国難を乗り切らねばならない」と、産経らしさをにじませていた。

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