いよいよ第6波?オミクロン株、どのくらい心配すればいい?

感染者が急増、重症化や致死率は?
医学博士、医療ジャーナリスト
  • 感染拡大が懸念されるオミクロン株、そもそもから解説
  • 南アではデルタからオミクロンに95%置換。重症化や致死率は?
  • ワクチン効果は?ブースター接種が有効?私たちができる予防策

かねてから流行が懸念されているオミクロン株だが、国内での発生が報告されている。一方で、新型コロナウイルスの国内の新規感染者数は増加を続け、ついに全国で2000人を突破した。

一方で、年末年始の帰省者旅行者の数は回復傾向と言われ、初詣は人数制限が解除され例年並みに戻った神社もあるようだ。オミクロン株への懸念を含め、現在の感染状況はどうなのか、医師である筆者が解説したい。

MF3d /iStock

現在の感染状況、重症者数は?

新型コロナウイルスの新規感染者数は増加を続け、全国で2000人を突破したが、全国で25000人を超えていた昨年8月下旬には遠く及んでいない。現在も微増というのにとどまっている状況だ。また、重症者数も、昨年10月に激減して以来、低い水準が続いている。また、気になるクラスターなどの集団感染だが、全体的に低い水準であり、レストランや会社などの人の集まるところでも、12月末の時点では、それほど顕著に増加しているわけではなかった(1)。ただ、沖縄の感染者数増加は目立っている状況だ。

オミクロン株とは

全国的には、新型コロナウイルスの比較的低い水準の感染者数、重症者数が続き、人の移動や経済も活況を呈してきているが、海外からのオミクロン株の輸入に伴って、海外渡航歴との明らかな関連が認められない市中感染も報告されるようになってきた。日本国内でも、感染者に占めるオミクロン株の件数は、空港検疫だけではなく、それ以外の感染でも上昇傾向にある(2)

では、オミクロン株とは一体どんな株だろうか。オミクロン株はB.1.1.529系統の変異株のことで、スパイクタンパク質に30箇所程度の変異があり、南アフリカで最初に流行した。WHOは現在、懸念される変異株 (VOC, Variant of Concern)として位置づけている。従来の株よりも伝播性が高い(感染が広がりやすい)と可能性が考えられている(3)

オミクロン株、海外では?

南アフリカでは、10月時点では、デルタ株が8割を超え、オミクロン株が0.26%に過ぎなかったのが、その後急速に増え、11月には一転して、ミクロン株がデルタ株を逆転して8割を超え、12月には95%がオミクロン株へと置換されている(4)

アメリカのCDCは、12月に、アメリカの新型コロナウイルスにおいて、オミクロン株の占める割合は58%程度と試算している(5)。また、国内で12月28日に開催された政府のアドバイザリーボードに提出された資料では、大阪において、1月11日時点でオミクロン株が9割以上を占めるのではないかという試算もある(伊藤らによる)(6)

昨年12月、NYマンハッタンに設置されたコロナの検査場(Masha Zolotukhina /iStock)

重症化や致死率は?

では、オミクロン株は、どの程度重症化する可能性があるのだろうか。南アフリカから報告された査読前研究(7)では、同時期(昨年10月1日〜11月30日)のオミクロン株と、そうではない株を比較したところ、オミクロン株の感染者は、同時期に感染した、それ以外の株の感染者と比較して、入院する確率は低いとのことだった。また、同研究は、入院した人のうちで、重症化のオッズに両者で差はなく、また、昨年4〜11月のデルタ株と比較すると、重症化のオッズは昨年10〜11月のオミクロン株で有意に低いと報告している。

イギリスの報告では、調査期間中の平均で、デルタ株と比べて、オミクロン株は入院のリスクが低下するとしている。減少の程度は、入院のリスクで20-25%と報告されている(8)

カナダの未査読報告でも、重症化の確率が低いことが示唆されている(9)

ワクチン効果は?ブースター接種が有効か 

12月10日に出されたイギリスの報告書(10)では、ファイザーワクチンの有効性は、2回接種後3〜4か月には、オミクロン株で40%程度にまで低下する(デルタ株では60%程度)ことが報告され、オミクロン株ではワクチン効果が早期に低下する可能性が示唆された。12月18日のインペリアル・カレッジ・ロンドンの報告書では(11)、中和抗体価の低下をともにして、モデリングによる試算を行ったところ、ブースター接種(3回目接種)をすると、オミクロン株の重症化予防効果(入院予防効果)は8割程度に保たれることが予測された(デルタ株は95%程度)。

この報告書では、新型コロナウイルスが流行している国ではブースター接種が重要であると結論づけたが、オミクロン株に特化したワクチンが必要になるのではないかとの見方を示した。

オミクロンに対するワクチンだが、ファイザー・バイオンテックとモデルナは、オミクロンに特化したワクチンの100日以内に製造すると表明しているようだ(12)

私たちにできることは

日本では、これまでのところ、新型コロナウイルス感染者数は、それほど多くはなく、重症者や死亡者も依然として低い水準で推移してきており、経済を回すために人が移動することは、それほど悪い選択肢ではなかったといえるだろう。ただ、諸外国のデータからは、オミクロン株は、感染拡大のスピードが速く、ワクチン効果の低下も示唆されている。国内でも感染者が急増しており、今後指数関数的に増える可能性も否定できない。手指消毒やマスクなどの感染対策は怠りなく続ける必要があるだろう。

【参考文献】
(1) https://covid19.mhlw.go.jp/
(2) https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_23136.html
(3) https://www.niid.go.jp/niid/en/2019-ncov-e.html
(4) https://www.nicd.ac.za/diseases-a-z-index/disease-index-covid-19/sars-cov-2-genomic-surveillance-update/
(5) https://covid.cdc.gov/covid-data-tracker/#variant-proportions
(6) https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000875166.pdf
(7) https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2021.12.21.21268116v1
(8) https://www.imperial.ac.uk/mrc-global-infectious-disease-analysis/covid-19/report-50-severity-omicron/
(9) https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2021.12.24.21268382v1
(10) https://assets.publishing.service.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/1042367/technical_briefing-31-10-december-2021.pdf

(11) https://www.imperial.ac.uk/mrc-global-infectious-disease-analysis/covid-19/report-48-global-omicron/
(12) https://www.thelancet.com/journals/lanres/article/PIIS2213-2600(21)00559-2/fulltext#coronavirus-linkback-header

 
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