コロナ禍は東京への人口集中を変えるか?#2 新しいオフィスのカタチ

「コロナ後のテレワーク」各企業の想定は?
2021年05月14日 06:00
  • 東京中心部の大企業を中心にテレワークは浸透・定着をはじめている
  • コロナ後の働き方では、テレワークと対面のハイブリッド型が想定される
  • 都心部以外に本社機能を設ける2本社制やワーケーションの動きが活発化

#1では、企業の本社機能が東京に集中し、結果として人口も東京に集中するという現在のわが国の形が、テレワークという新しい働き方の普及で大きく変わっていく可能性について見てきた。自民党内での議論の活発化はコロナ後においても、テレワークの普及に向けて積極的に政策を動員していこうという与党の方向性が示されたものと言える。

しかし一方で、働き方は企業や労働者の主体的な選択で決まるものであり、政府は強制できない。#2では、そういった企業や労働者のニーズをより敏感に感じ取る側の民間事業者の動きを概観することで、未来の新しい働き方の姿を探りたい。

JGalione/iStock

テレワーク定着は都市部の高収入者中心

まず最初に、テレワークの定着率を見てみよう。内閣府は昨年末(12月11日~12月17日)と昨年春(5月25日~6月5日)にインターネット調査を実施、地域別のテレワーク実施率を3月3日の自民党地方創生実行統合本部に分析を交えて報告している。

これによると、東京23区内の就業者では、2019年12月に17.8%だった実施率が、最初の緊急事態宣言が発令された直後の昨年5月の段階で48.4%にまで急伸、2回目の緊急事態宣言発令直前の昨年12月段階でも42.8%までしか落ちなかった(いずれも不定期のテレワーク実施も含む)。内閣府は「東京圏など大都市圏を中心として浸透・定着する傾向」にあると結論付けている。

ただ、テレワークの普及には相当に地域差があり、実施率の全国平均の数字の動きは10.3%→27.7%→21.5%、地方圏では8.1%→19.0%→14.0%となっている点は留意が必要だ。

加えて興味深いのは年収別のテレワーク実施率だ。300万円未満の人の場合12.7%に留まる一方で、年収が上がるほど実施率は高くなり1000万円以上で51.0%に達する。

これらのデータは、東京中心部に住む大企業の高収入サラリーマンを中心にテレワークが普及していることを示唆しているが、人流データもこの見方を補強している。

4月20日の自民党雇用問題調査会「ポストコロナ時代におけるテレワーク推進小委員会」(以下、自民テレワーク小委)に三菱地所が提出した資料によると、「大丸有エリア」(大手町、丸の内、有楽町)の流動人口は昨年の最初の緊急事態宣言で大きく下がり、その後揺れ戻しがありつつも、2月18日時点で通常の28%と相当程度抑えられている。

「コロナ後」テレワークはハイブリッドに

こういった変化に民間事業者側はビビットに反応している。最近、駅舎内で見ることが多い個室型のテレワークスペースである「STATION  BOOTH」や「STATION DESK」について、JR東日本は自民テレワーク小委に「2025年度には1200カ所の展開目標」と説明している。テレワークスペースを個人の住宅内で確保できるかというのが大きな課題となっているが、多くの駅でSTATION  BOOTHが利用できるようになれば、出勤の際に使っている最寄り駅までいき、電車には乗らず駅舎内でテレワークを行うというスタイルが一般化になるかもしれない。

また、三菱地所レジデンスでは1階部分に居住者が無料で利用可能なワーキングスペースを設けた新たな賃貸マンションサービス「The Park habio SOHO」を立ち上げた。ここでは、個室タイプのブースも整備される予定で、喫茶店などとは違い、機密資料も使いやすい環境が整えられることとなる。

昨年9月の「The Parkhabio SOHO 大手町」プレスリリースより

一方で、このまま多くのオフィスワーカーが自宅で仕事をすることがノーマルな社会になるかと言えばそうでもないようだ。

三菱地所は自民テレワーク小委への報告で、東京都のオフィスに勤務する1都3県(東京、神奈川、埼玉、千葉)の人々へのアンケート調査(サンプル数14522)を報告している。これによると、「業務の何%をオフィス/テレワークで行いたいか」との質問に「すべてオフィス」と答えた人は22.0%、「オフィス50~90%」と答えたのが46.7%、「テレワーク60~90%」と答えたのが24.1%、「すべてテレワーク」との答えが7.2%だった。

社内外でのディスカッションなどは対面で行い、資料作成や事務処理などはテレワークで行うなど、選択肢のある「ハイブリッド型」の働き方へのニーズが高まっているようだ。米国における経営幹部向けの調査でも同様のトレンドが確認できる。

今年1月12日に実施されたPwCの調査によると「企業の独特の文化を維持するために、一般の従業員がオフィスにいる必要があるならどれほどの頻度か」との問いに21%が週5日と答え、対面・リアル重視の考えもまだまだ根強い様子がうかがえた。一方で、最も多かった回答は週3日と答えた29%、週4日と週2日がそれぞれ18%、15%といった具合に分散的で、全体としてはハイブリッド型を志向している様子が伺えた。

recep-bg/iStock

2本社制やワーケーションも

コロナ後においては、自宅とオフィス(本社)など複数拠点を柔軟に組み合わせるハイブリッド型のリモートワークが広がることで、人と人との触れ合いを重視しながら、リモートワークの利点も取り込める全く新しい働き方が進む可能性もある。

具体的には、都内の本社とは別に第2本社を設けることや、リゾート地などで仕事とバケーションを組み合わせた働き方を実現するワーケーションの普及が想定される。いずれも社員同士が一つの場所に集い新しいアイデアを語り合うリアルなコミュニケーションの良さを維持しつつ、リモートワークにより本社と異なる場所にいても必要なやり取りを可能にする働き方だ。

最大のメリットは、これまで犠牲にしてきた満員電車の通勤地獄や高い住宅費といったコストを回避できる点にある。既に、住宅ローン大手のアルヒが第二本社を千葉県柏市に今年10月に開設することを公表。三菱地所は、長野県軽井沢や和歌山県の南紀白浜で運営しているワーケーション施設「WORK×ation Site」を今年5月に熱海で、7月には伊豆下田にも開業する方針を示している。

いささか楽観論が過ぎるかもしれないが、技術の進歩と新たな民間サービスの普及により、生産性と労働者が感じる職場の快適さの両立が実現する新しい働き方が近い将来実現していくかもしれない。

 

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